未熟

風降リモート調教  3~4回のつもりが……まだ終わりません
※つきあってない
※ギャグ

二度目のリモート調教。
焦らしプレイをされた降谷さんは……

ごあいさつ
課題
我慢
未熟
休息
失格
錯誤
首輪(終)


 

アイマスクに、通話機能付きのワイヤレスイヤホン。
僕は、ビジネスホテルのベッドの上で、時間が過ぎるのを待つ。

 

昨晩、僕は、風見……いや、ご主人様に、射精許可を求める電話をした。それほどに切羽詰まっていた。
だけど、ご主人様の声を聴き、なだめられるうちに、どうにか課題をクリアしてみたいと思うようになった。
明日の晩までなら、どうにか……。そう思いながら、課題の続行を決意した僕だが

『じゃあ、また明日。たっぷり、しつけてあげますから……そうだな。今夜も、もう一回、途中までオナニーしてから寝るように』

その言葉に、さっそく絶望的な気持ちになり。
その晩も、射精欲求に悩まされ、ぐっすり眠ることができなかった。

 

 

恥ずかしながら、今日の僕は、「今晩、射精できる」ということを心の支えに、一日を過ごした。

「おいしいそばが食べたい」とか。「サウナでリフレッシュしたい」とか。そういうことを、ささやかな楽しみにして、一日を乗り切ったということは、幾度もあった。だが「射精したい」などと、そんな卑猥なことを支えに一日を過ごしたのは初めてだ。

昼間。
毛利先生から「お前、なんか、今日色っぽいな? ようやく、いい相手ができたのか?」と、聞かれた時には、心底、びっくりした。
射精したいという気持ちが顔に出ていたのかと思って、不安になった。けれど、さすがに「僕、射精したそうな顔をしてましたか?」と聞くわけにもいかず。

「内緒です♡」

と、笑ってごまかした。

 

指定の時間、午後九時にチェックインを済ませ、メッセージで指示されたように、シャワーを済ませる。
そして、僕は全裸のままアイマスクとワイヤレスイヤホンをつけ、ベッドの上に寝転んだ。
仰向けになり、降参のサインのように、両手を耳の横に置く。それから、膝を九十度に曲げ、股を開げた。風見が、送ってきたメールに添えられていた参考画像通りのポーズ。
誰も見ていないのだし。アイマスクをするから、それほど恥ずかしくないだろうと思っていたが、やってみると、無性に恥ずかしい。

――恥ずかしいと、意識してしまったら、もうだめだった。

僕は、ペニスが大きくなるのを感じた。
アイマスクをしているせいで、いつも以上に、皮膚感覚がどぎすまされている。
空調の音。スウィングしながら、送り出されるエアコンの風が、僕の肌を撫で、それがとても気持ちよく感じられた。
射精を我慢しているからなのか。全裸で恥ずかしいポーズをしているせいなのか。あるいは、電話がいつくるのかとドキドキしているためか。
いつもより感度がよくなっている。

アイマスクをする前に「準備ができました」とメッセージを送ったのが五分前。電話は、一体いつ来るんだろう。早く、イきたい。昨日だって、本当にギリギリのところまで来ていた。

まだか。電話は。はやく、触りたい……ペニスを。

けれど、電話は鳴らない。
この恥ずかしい姿勢で待機を始めてから、まだ、五分しか経っていない。それなのに、僕はとても不安になった。時間が進むのがとても遅く感じられる。
暗闇の中でも、時間の経過を捉えられるよう、訓練を積んでいる。
しかし、その時間感覚が、おかしくなってしまったのではないかと思うほどに、たったの五分を数十分くらいの長さに感じた。

早く、かかってきてほしい。でも、まだ、七分しか経っていない。

はやく、はやく……はやく!

僕は、不安になった。
堅物で律義な男だ。僕が風見との待ち合わせで、待たされたことなんて、一度もない。
なにかあったんじゃないかとか、そんなことを考えてしまう。
風見が、いなくなったら……。と、そんなことを思う。
大袈裟だ。妄想もいいところだし、そんなこと、ありえないと思いたい。
だけど、そういうことも、ありえる。僕たちは、そういう仕事をしている。

――アイマスクを外して。今すぐ、こちらから、風見に電話をかけて、無事を確かめたい……

風見の安否を知りたい気持ちと、言いつけを守らなければならないという、戒めが、ぶつかり合う。
どこかで、冷静な自分が言う。

(これは、放置プレイというやつで、風見はご主人様として僕を焦らしているだけだ)

だけど、臆病な自分が言う。

(しかし、本当にそうとは言い切れない。人の終わりは、案外あっけない)

頭がぐわんぐわんする。
だが。僕は今、風見のM奴隷であり。どんなに心細くとも、電話を待つしかないのだ。

 

僕の時間感覚が、正確であれば、二十三分経った時だ。
電話が鳴った。僕は、ワイヤレスイヤホンのボタンを操作し、電話に出た。

「もしもし、降谷さんですか?」
「……」
「あれ……? 降谷さん? おーい……」
「……かざみっ……かざみ……よかった……かざみ……」

僕は、必死に、風見を呼んだ。

「え……? 降谷さん、その声、もしかして」
「うん……だって……っ、君」
「我慢できなくて、オナニー始めちゃった?」

その質問に

「そんなわけないだろ!」

M奴隷らしからぬ返答をしてしまった。

「え……あ、すみません……」

ご主人様らしからぬ、風見の謝罪に、我に返る。

「すまん……その、君の身に、何かあったらと思ったら……恥ずかしながら」
「え……?」
「涙が……出てしまって」
「あ……すみません。ごめんなさい。一応、弁解しておくと、今日のこれは放置プレイの一環で……」
「うん……僕の性感を高めるため、だよな?」

僕は、アイマスクの上から瞼をぎゅっと押した。ざらざらの生地が涙をジワリと吸い上げる。

「え、ああ、はい。さすがは、降谷さんですね。すみません……なんか、逆効果だったみたいで」
「いや……一応、最初の数分は効果があった」
「……そうですか」
「うん……」
「しかし……どうしましょう?」
「ん……?」
「いや、今日の調教。もしも、気分がのらないとかであれば……」

風見は、やさしい。

「いや……もう、大丈夫だ」
「ああ、じゃあ……ゆっくり、始めますか?」
「うん、始めよう」

こんなに、やさしいご主人様に甘やかされて、果たして、別のご主人様のところでうまくやれるだろうか?

「あの……ご主人様」
「はい」
「僕が未熟なばかりに、手間取らせてごめんなさい」
「いえ……むしろ、主人としての俺の落ち度です」

風見はまだ、ご主人様モードに切り替えられていないらしい。
そんなに、びっくりしたんだろうか? 僕が、泣いたということに。
こうなったら、僕が、調教のムードを作って、風見を乗せてやるしかない。

「あの……僕は、今、ご主人様の言いつけの通り、目隠しをして、ベッドの上で……はだか……で、あの写真と同じポーズを取っています」

状況を、伝える。

「えっと……脚を開いて……性器を晒しながら……ベッドの上に寝転んでいます」
「……あの写真の通りですね。ペニスは?」
「んー……今は、しぼんでる……かな?」
「右手で触って確かめてください」

風見の言葉遣いが、少しずつ、ご主人様っぽくなってくる。
条件反射のように、体が再び、ざわめき始めた。

「……はい」
「どう?」
「少し……硬くなってきました」
「あれ? さっきは、しぼんでるって……?」
「……なんだか、反応してしまって……」
「何に?」
「……たぶん、調教されてるってことに……んっ、です」

状況を確かめるためだからと、自分に言い聞かせながら、ペニスをさわさわする。

「んっ……はあ……」

僕は、声を我慢できない。

「……ペニス、確かめろって言ったけど、オナっていいって言いましたっけ?」
「あ……ごめんなさい。ご主人様……僕、ちょっと触っただけで……感じてしまって……今も、確かめようと思って、触っただけです」
「へー……? で、触ってみて、どうだったんです?」
「えっと……我慢汁……出て……勃起してます」
「……我慢汁じゃないでしょ?」

そう聞かれて、少し混乱する。僕は、なにか間違えてしまったらしい。

「え? カウパーですか? 先走り?」
「はー……。まったく、それでよくM奴隷を名乗れますね? いいですか……えっちな、おちんぽ汁って言ってください」

僕は、思わず聞き返した。

「えっ? えっちな、おちんぽ汁ですか?」
「……ええ」

だって、なんだか幼稚な響きであるし。これが、本当にM奴隷らしい言葉であるのか、疑問を持ったからだ。

「えっちな、おちんぽ汁って言えばいいんですか?」
「……はい」

僕の聞き間違いではないらしい。調教時の言葉づかいについて、それなりに勉強した風見が言うのなら、これもM奴隷らしい言葉なのだろう。

「ペニスの先から、えっちな、おちんぽ汁が、いっぱい出ています!」
「……あの、ですね……」
「あれ? えっちな、おちんぽ汁って、ちゃんと言いましたが?」
「うーん……」

風見が何か言いたそうにしている。卑猥な感じが足りなかったのかもしれない。先ほどのセリフにアレンジを加えて言ってみる。

「えーっと……淫乱な僕は、すごく感じやすいので、えっちな、おちんぽ汁が、いっぱい出て、ペニスの根元まで濡れています」
「あの……まあ、いいか……かわいいし」

風見が、ぼそっと言った言葉に、僕は驚く。

「かわいい?」
「あ、いや、こっちの話です。えっと……じゃあ、その、おち……いや、我慢汁を、手に取って、ペニスを扱いてください」

話をそらされた。
でも、命令には従わなければならない。

「……はい」
「激しく扱いてください。マイクが、オナニーの音を拾うくらいに、ねちゃねちゃやらしい音を立てて」
「はい……っんんぅ……ああっ」

ようやく、オナニーを許可され、僕は、ペニスを激しく扱いた。どうやったら、音がするかなと思ったけど、工夫は必要なかった。だって、おちんぽ汁が、とめどなくあふれてくるし、精液もぴゅるぴゅる出ている。

「降谷さん、すごい……めちゃくちゃ、えっちな音してる」
「あっあ……ふっあああ」
「うん。いっぱいしごいてください。我慢した分、全部出しちゃっていいですよ」
「うんっ……我慢したの、出す……っあ……あんん……はぁ……んんっあ」
「すごい……気持ちよさそう……。いっぱい我慢したんですね。えらいですよ……イきたくなったら申し出てくださいね。射精の許可をあげますから」

その言葉に、僕はハッとする。

「ごめんなさいっ……あ……んん」
「ん……どうしました? 実は、我慢できなくて、昨日の夜、最後までしちゃった?」
「いや、僕……いま、一回出ちゃって……あっあんんんあ」

ご主人様に、許可をもらう前に達してしまった。

「え……? じゃあ、今? 出した直後ですよね? なんで、あんあん喘いでるんですか?」
「あ……だって……あんっ……気持ちいいの、止まらなくて……射精したのに……ぼく……したいの、とまんなくてっ……」

また、粗相をしてしまった。ものすごく申し訳ない気持ちになる。
僕にはきっとM奴隷の才能がないのだと思う。
だけど、ペニスを扱くのを止められない。

「あ……えーと。じゃあ、とりあえず、二回目出しましょうか? ね?」

こんな不出来な僕に。風見はやさしい。すんなりと、二回目をゆるしてくれるのだから。

「うんっ……あっあ……ごしゅじん、さま……」
「はい」

せめて二回目は、ちゃんと、許可をもらってからにしようと思って、言葉をひねり出す。

「にかいめ、っ……イッちゃう……ぼく、いっちゃいそ……」
「いいよ? 出して」

出していいって。許可をもらえた。うれしい。なんだか、すごく幸せな気持ちになる。

「あっあ……はあっああ……でるっ……! あ…はー……あ……あ、出た……ご主人様、出ました……んっあ……あっ……ああ、どうして……気持ちいの、止まんないよぉ……っ……」
「うん、いいですよ、もう一回」
「はあっ……ああ……きもちいい……っ……」
「どこが気持ちいいの?」
「……おちんちん……ずっと、きもちよくて……あっあんんんんまた、イッちゃう……」

きもちいい。

「うん、いいですよ。出してごらん」

許可をもらって達するのが。
すごく幸せで、ものすごく、気持ちがいい。M奴隷になりたい人の気持ちなんて、これっぽちもわからなかったけれど、今は、少しだけわかる気がする。

3回目。

「はい……ッあ……っああああ……っ」

頭が、真っ白になった。

 

続く

 

【あとがきなど】

あれ、連載3~4回のつもりが……
見切り発車で始めた調教なので。
いつも、調教しながら、話の落としどころを考えています。

M奴隷への道は、長く険しいもので……
この降谷零……どうしても、お粗相しちゃいます。

さて、気持ちよさのあまり、頭まっしろになってしまった降谷零ですが……
次回は、何が待ち受けているのでしょうか……?
許可を得ずに、一度目の射精をしてしまったお仕置きはあるのでしょうか?

また、調教しながら考えます……。

 

 

 

3