弱点は君!

降谷君の、茶3話後の留守番電話「僕です」ネタと、茶AR②③巻ネタです。
風←降


 

--僕です。今日は、後輩の「ひとりごと」を聞いてしまいました。この前、説教した彼なんですけど……僕のことを「後輩の面倒見がいい」って……。愛が伝わったのかな? 本音だといいのですが……どう思います? また電話します。

風見には、期待している。
期待をしているし、実際、期待に応えてくれているとも思う。もちろん、失敗はそれなりにあるが、それであっても、彼はそれを反省し、次につなげることのできる男だ。
彼が、凡庸な人間であれば、僕だって、説教なんてしない。
僕は、無理難題を誰かに押しつけることはしない。説教をすることによって委縮するような相手には言葉を選ぶ。
しかし、風見裕也は、大丈夫な男だ。だから、僕は彼に期待するし、愛をもって説教をする。
とはいっても、僕だって、人間だから。説教をした後は、それなりに、感情が波立つ。
僕の期待が、風見に、どう伝わっているのか。それは、風見自身にしかわからないことだった。

だから、あの「ひとりごと」がうれしかった。風見が、僕のことを「面倒見がいい」と言った。
「面倒見がいい」だけじゃない。ほかにも、たくさん褒めてくれた。仕事が完璧とか、料理ができるとか、運転がうまいとか、お酒が強いとか……ハンサム……とか。

うれしさのあまり、気配を消しそびれたのか。あるいは、風見の察知力が、僕の予想以上だったのか。「ひとりごと」を聞いていたということが……ばれてしまったらしい。

『君、ひとりごとの声がずいぶん大きいんだな? 気をつけた方がいいぞ』

とか、そんな風に声をかけて、それから、普通に雑談を始めればいいのに。僕は、その場を逃げるように去った。
盗み聞きがばれたことなんて、どうということないはずなのに。風見に、どう思われただろうかと考え、不安になる。

その晩、ハロと河川敷の土手を歩きながら、風見が少年を助けようと川に飛び込んだときのことを思い出した。

あの日、僕は、ネクタイを外し、川に飛び込む風見の後ろ姿を見た。僕は周囲の状況を確認しながら走った。上流から、トタン板が流れてくるのが見えた時。自分の動揺を抑え込むのに少々の努力が必要だった。
それでも、どうにか僕は間に合った。
なのに、あの時に置き去りにした恐怖の感情が今更ながらにこみあげてくる。少年は助かったのだし。風見は生きている。怖がる必要なんてないのに。
歩くペースが少し落ちる。少し先を歩いたハロが、こちらをふり向いた。

その瞬間。ポケットでスマホが震えた。
振動のパターンだけで、誰からの着信かわかる。来た道を戻ろうと進路を反転する。
深呼吸をひとつ。それから、電話を取った。
「どうした?」

道を二〇〇m引き返したところで、僕は更にもう一度、進路を反転させた。
「君……仕事の話かと思えば、食事の誘いか? まずは仕事優先でと言ったはずだが?」
説教をしている。そのつもりだ。しかし、口元がゆるんでいるのかもしれない。ハロの表情が、妙に楽しそうだ。
……そういえば、風見は、僕の弱点を気にしていた。
「……ところで、僕の弱点だけれど、もしかしたら君かもしれない」
ふと、ついて出た言葉に、自分でもびっくりした。しかし、風見はもっと驚いたらしい。電話越しに、悲鳴にも似た声が聞こえ、僕は、顔をしかめる。
道を行ったり戻ったり。表情がころころ変わったり。今日の僕はハロから見ても様子がおかしいのだろう。歩く僕の脚にハロがまとわりついてきた。
「まあ、次の土曜日なら、空いている。……じゃあ、また、連絡する」
電話を切る。
弱点は君……だなんて、われながら、とんでもない言葉を言ってしまった気がする。
しかし、おそらくこれは事実だ。風見が僕のことををどう思っているか、どうしたって気にしてしまうし。愛が伝わってればいいと願ってしまう。
電話をポケットにしまい。ハロに、かけっこを持ちかけた。

そして、ハロと河川敷の土手を走りながら、僕は青春という二文字を思い浮かべてた。

――降谷さんの弱点は自分……? ということは、もしかして、俺は、知らず知らず、降谷さんの脚を引っ張っていたといことか? おいしい店……あの店でいいと思ったが……もっといい店を探さないとだな……。降谷さんに、一目置いてもらえるような……通好みのおいしい店を……

 

 

【あとがきなど】

2巻のAR……
部下の面倒見がいいではなく「後輩の面倒見」ってところがさー……。
完全に、あの留守番電話のアンサーなんですよ。
降谷さんの愛、ちゃんと伝わってるわけですよ……。

(僕の愛……風見に伝わってたみたいだ……えっ……そのうえ……すごく、僕のことほめてくれてる……なんだろう……胸がいっぱいで、僕……あ、風見がこっちに気がついてしまった……逃げなければ)

って、なってる降谷零と。

「怖い人だ……」

って、なってる風見裕也……。
降谷零……かわいすぎだし……
この片想い……長引きそうで、テンション上がる……
片想いに身を焦がす降谷零が大好き

 

 

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