美しきビッチ

【確認事項】

モブ降?
男夢主?
俺降?

K学時代のお話です。
俺君(ネームレス主人公)が、降谷零に誘われてラブホテルに行く話。
降谷零が、ビッチで……
同じ班の中の、人間とも関係を持っています(全員ではない。誰と関係を持っているのかは、読む方のお好みでどうぞ)
俺君は、降谷のことが結構好きでした。

主人公:
23歳。降谷君と同じ教場で、警察官になるべく、がんばっている。
身長185+。
男根→かなりデカい。
趣味→読書(ミステリー小説)
性格→ほんの少し、陰湿なところもあるが、基本的には悪いやつではない。

 


 

降谷と諸伏は、いかんせん顔がかわいらしかった。
そのせいだと思う。二人が、周りの男たちに媚びを売っているという噂があったのは。

ことさら、降谷に関しては、なんでもできてしまう上に、勝気で堅物すぎる性格のせいか、やっかみを買うことが多かった。
だからだろう。降谷には「男であれば誰とでも寝る」という、とんでもない噂があった。
そんな噂を信じたわけではなかったが、そうだったら、おもしろいなと思う俺がいた。
くそがつくほどまじめな男が。童顔で、整った顔をした男が。そういう一面を持っていたら……。俺の中の陰湿な自分が、そういうストーリーを求めていた。

教場の数少ない女子たちは、みんな、あいつらに夢中だった。
萩原はとにかくもてたし、松田のことをかわいいと言ってもてはやす女子も多かった。伊達は、優しく頼りがいのあるところが人気で、理想の結婚相手として多くの女子の支持を集めていた。諸伏のあまやかな雰囲気は隠れファンを多く生んだ。
降谷に関しては、あの性格ゆえ、表立って騒ぐ人間はいなかったが、女子の視線を集めていたことは確かだ。
俺は、狭量な男だ。
今ならわかる。俺は降谷に嫉妬していた。そして、認めたくはないが、確かに俺は降谷零に恋をしていたのだと思う。

7年前のその日、俺は、降谷に誘われて街に出た。
前日の実技で、偶然ペアになり、片付けの際に、明日、一緒に出掛けないかと誘われた。最初は何を言われているのかわからなかった。
だけど、降谷が「君、確か、工藤優作が好きって言ってたろ? 明日新刊が出るし、本屋に……」と言うのを聞いて。ああ、本当に俺を誘っているんだなあと、理解した。

バスで近くの繁華街まで出かけた。
降谷は、ミステリー小説をそれなりに読むらしかった。
本棚を眺めながら、お互いにおすすめの小説を紹介し合って、それから工藤優作の新刊を一冊ずつ買った。
本屋を出て、俺は、コーヒー屋にでも……と考えた。しかし、俺が声をかける前に、降谷の方から

「少し休んでいかないか?」

と、持ちかけてきた。「そうだな」と同意すれば、降谷は「穴場でいいところがあるんだ。少しだけ歩くんだが」と言って微笑んだ。
その日。東京は快晴。
武蔵野の街を、15分ほど歩いた先。
幹線道路沿いに、そこはあった。

 

 

 白状する。俺は、それほどモテるタイプではかなったから。
「少し休んでいかないか?」の「休む」がラブホテルの休憩をさすなんて考えもしなかった。

「降谷……ここって」
「ああ、いわゆるラブホテルだが。君が入りたくないというのなら、先に帰っていいぞ」
「……降谷は帰らないのか?」
「まあ……心当たりは何人かいる」

エントランスのパネルの前で、男が二人。長居をすることは憚られる。
心当たりが何人かいる、という言葉の意味を咀嚼する。すなわち、俺が帰ったとしても、彼はここに、別の男を呼び出して、行為に至るつもりなのだろう。

「……これ、どのボタンを押せばいいんだ?」

俺がたずねると、降谷は「そうだな……207か、305かな。305は風呂が広い」と言った。
常連なんだなと思う。しかし、俺はどうしたらいいかわからない。
降谷が続ける

「割り勘だから、安い部屋がいいなら、207一択だが。君はどうしたい?」
「じゃあ、305で」

部屋に入れば、降谷が慣れた手つきで、風呂の準備をし、ついでに歯磨きを始めた。

「俺も、歯を磨いた方がいい?」

とたずねれば

「磨いてくれるなら、その方が助かる」

と降谷が答える。
助かるって何が? と思いながら、自分の口腔衛生に不安を抱く。

「あ、別に君がどうこうということではなく、誰とするときにも基本的には、磨いてもらえたら助かるな……と思っている」

その言葉に、降谷は潔癖なのかな……とか、そんなことを考える。
しかし、それを三秒で打ち消す。
潔癖な人間が、付き合ってもない人間と、こんな場所に来るはずがない。
いつも以上に丁寧に歯を磨きながら、冷静さを取り戻そうと努める。しかし、それは難しそうだった。

一足先に、歯を磨き終えた降谷は、ジャケット。それから、靴下とズボンを脱いでいた。
そして、後ろから、俺の腰に抱き着いてくる。

「君、緊張してるだろう?」

カサリ、と。
ガラスコップのビニールを外し、水で口をすすぐ。
正直に答える。

「緊張というか、状況がちょっとつかめない」
「ふーん……でもさ。君。あの掲示板に書き込みしてたろ」
「……掲示板?」
「僕も、あの存在を教えてもらったときには、びっくりしたよ。確かに中学生の頃や高校の頃に、学校裏サイトが問題になって学年集会が開かれたこともあったけれど。警察学校にも、そういうのあるなんて思いもよらなかった」
「……そんな掲示板があるのか?」
「レス番号367。”もし本当なら、俺もお相手してもらいたい” って書き込み。あれ、君だろ?」
「さあ? なんのことだろう」

レス番号までは覚えていないが、確かに、俺はそう書いた。
降谷に関する例の噂のあと、冗談半分に、そのようなことを書き込んだのだ。

「ふーん。別に、君が、違うと言うのであれば、それはそれでかまわんけど」

降谷は、俺から離れると、すたすたと脱衣所を出ていった。俺もその後を追う。

ソファにしゃがみこみながら、降谷は、携帯をいじっていた。

「降谷……」
「風呂、大きいから、お湯たまるまで、時間かかる」
「え……ああ。そうか」
「コーヒー飲むか?」
「え?」

降谷は立ち上がると、簡易冷蔵庫の中から、水のペットボトルを二本取り出した。

「水、そのまま飲むのでもいいけど。どうする?」
「そのままでいい」

俺は、降谷からペットボトルを一本受け取った。
落ち着かない気持ちで、ソファに座る。

「キス、するか?」

降谷がソファに腰を下ろしながら、こちらをじっと見つめてきた。

「え、いや……」

答えをすぐに返せない。降谷は、ペットボトルのキャップを開いて、水をごくごくと飲み始めた。
その唇に目を奪われそうになる。俺は、降谷にならい、ペットボトルの封を切り、水を口に含んだ。

「……堅物なんだな。意外と」

降谷は、ペットボトルをテーブルの上に置くと、ソファの上で体育座りをして、こちらの顔をのぞき込んだ。
ペットボトルのキャップを閉めながら、その顔を見つめる。
水を飲んだことによって、うるおいを持った唇はてかてかと光っており、なんだか、妙に官能的だった。

「君が、どうしても無理と言うなら……目隠ししてやろうか?」
「え……?」
「たしか、そこの自動販売機にアイマスクがあったはずだ。視覚を遮ってしまえば、男でも大丈夫ってやつは結構いたぞ。まあ、途中から、目隠しを外しても大丈夫になるらしいけど」

降谷は、本当に、慣れてるんだなと、思い知らされる。
なぜか、ショックを受ける自分がいた。俺には、関係のないことなのに。

「降谷……真面目なお前が、こんなことするなんて……。警察官になろうという男がこんなことをしていいのか?」
「すまんな。あいにく、そのたぐいの説教は聞き飽きている。別に、売春をしようとしているわけではないし、僕は君に対して強制的にわいせつ行為をするつもりもない。そして、君も僕も、決まった相手はいないわけだから、僕は何の法律も犯していない」
「……そりゃあ、そう、だけど」
「……君だって、たまってるんだろ? この前、ロッカールームで、安心して抜ける場所がないって、仲間たちと騒いでたじゃないか」

まさか、聞かれていたなんて……。

「そ、それは……お前も、男ならわかるだろう?」
「ああ。よくわかるよ。だから、こうやって君を誘ったわけだが?」
「……誰でもいいのかよ?」

説教じみた言葉しか浮かんでこない。
降谷のペースに乗ってしまえばいいと思う自分と、優等生の降谷がこんなことをしていいはずがないと考える自分がコンフリクトを起こす。

「誰でもいいわけではないよ。君は、僕に関心がありそうだったし。身長が高くて、さっぱりした髪型をしているところが僕好みだ。それに、君の、とても大きいだろ?」
「え……なんで知ってんだよ?」
「風呂の時にちらっと見たし、他のみんなも噂してたからな」
「ていうか……降谷、俺のことを、そういう目で見てたのか?」
「……見てたよ? 見て悪いか?」
「……ていうか、降谷って、男が好きなのか?」
「いや。初恋の相手は女性だ。その人と、どうにかなりたいわけではないが……初恋の人を胸に抱いたまま、他の女性とそのような行為をするのは失礼にあたるだろ? したがって女性とそういうことをしないで、うまく性的欲求を満たす方法を考えた結果、ここにたどり着いた」

いや、オナニーとか……ほかにも、なにか方法があるだろ? それこそ、降谷だったら、セフレでもいいと考える女が、たくさんいるはずだ。

「それ、俺に対して失礼とは思わないの?」

降谷が目を見開いた。

「今まで……そういうことを言ってくるやつはいなかったな。”降谷ちゃん、こういうのは難しいこと考えずに楽しんじゃえばいいんだよ” とか……そういったことを言ってくる人間はいたが……失礼だろなんて言ってくる男はいなかったよ」

知人の顔が思い浮かんだような気がしなくもないが、気にしないことにする。

「降谷……俺はさあ、そういうのよくないと思うんだよ」
「なぜ? 君だって、たまっているのだし、お互いにとっていい話だと思うが。たとえば、君が、風俗店に行って、欲望を散らせるより、ここで済ませてしまった方が、よほど、安上がりだと思うが?」
「いや……なんていうか、自分を大事にしろ、というか……」

わかっている。自分が、嬢に対する説教おじさんみたいになっていることくらい。
だけど、目の前の、きれいな顔をした男が……。
よくよく見ると、あどけない顔をしたこの男が、不特定多数の人間と性交渉を持っているという事実に、俺はどうしたって、納得ができないのだ。

「なんだ? 君は、僕を大事に扱ってくれると思ったが? 大学に入った頃から、こういったことをしている。自分に危害を与える人間かそうでないかくらいは、かぎ分けできているつもりだが?」

俺の言葉が気に障ったんだろうか、ツンとした口調で降谷が言う。
ぷんっと、機嫌を損ねた顔が、妙に子どもっぽくてかわいらしい。

「そりゃあ……もし、そうなったとして、降谷に対して……乱暴なことをするつもりはないけれど」
「ならいいだろう?」
「でも……なんというか……」
「君、なあ。僕、これでも、結構勇気を振り絞って、君をここに誘ったんだぞ?」

降谷が、きりりと眉を吊り上げて俺のことを、にらんでくる。

「君は、僕に恥をかかせる気なのか?」

恥って言われても……。
そう思いながら、降谷から目をそらそうとすれば、さわさわっと、股間のあたりを触られる。

「だいたい、ここをこんなにさせながら、説教じみたことを言われても、まったくもって効果がない」
「ちょ……降谷、どこ触ってんだよ」
「……君のチンコだよ。だめか?」

悲しそうな声に、切なそうな表情。
それを見て、正直、クるものがあった。
もうどうにでもなれと思って、降谷の体を抱き寄せる。

「知らないからな、どうなっても!」

すると、先ほどまでの、しおらしい姿はどこへ消えてしまったのやら。

「ふふ……自信たっぷりだな。いいよ、期待してる」

眉をきりっと吊り上げ、ついでに口角も吊り上げる、勝ち誇ったかのような表情に、俺はとてつもなく、イライラした。
怒りをぶつけるように、かみつくようなキスを仕掛ける。

「あ……んっ」

経験があまりないとはいえ、こういった行為に対して、苦手意識があるわけでもない。
舌を使って、口の中を激しく掻きまわせば、降谷がそこに舌を絡ませてくる。
その勢いのまま、降谷をソファに押し倒す。一度キスを中断し、ズボンの金具に手を伸ばす。
口の周りを、どちらのものとも言えない唾液でべちゃべちゃにしたまま、降谷は、ふーふーと肩で息をしていた。

ズボンを脱ぎ去り、ジャケットを放る。そして、降谷の体に覆いかぶさろうとした瞬間。

「お……そろそろ、風呂の湯、ちょうどいいはず」

ひらりと体をかわされてしまった。
すたすたと、風呂場に向かって歩く降谷が、こちらをふり向いて言った。

「どうした? 君は、風呂に入らないまま、セックスしたいのか? まあ、それなら、それでもいいけれど」

からかわれている。
自分から誘ってきた淫乱のくせに、こんな風に、待てをするとは、どういう了見だ?
しかし、余裕がないことを悟られたくなくて、おとなしく、風呂に向かった。

 

「なんだ、君、もうそんなにしているのか?」

洗い場で、シャンプーをしている俺に、降谷が言った。

「お前だって……」
「うん。さっきのキス、なかなか良かったからな」

そう言いながら、降谷が、シャワーで自身の頭を流す。
あざといと思う。しかし、嫌いじゃない。

「……慣れてるわりには、あれくらいのキスで反応してしまうんだな?」
「んー……慣れてるから、こそ。だよ。最近じゃ着替えの時の刺激で、乳首が勃ってしまうんだ。始末が悪いだろ?」

降谷は、がしがしがしとがさつな仕草で、身体を洗い終えた。そして、泡だらけになった身体を、俺の背中に押しつけた。

「……早くシャンプー終わりにしろ……。洗いっこしたい」

背中に、降谷の体の凹凸を感じ、興奮が高まる。確かに、反応しやすい体なのだろう。固くコリコリしたもの(おそらく、乳首)を擦り付けられる。

「ちょっと待ってろ。くっつかれてたら、髪流せない……」
「そこに座れ、僕が流してやる」

言われるがままに、スケベ椅子に腰をかける。
降谷が、シャワーの温度を確認してから湯を俺の頭にかぶせた。
目をつむりながら、シャワーの水流を受け入れていると、やがて、水音が消え、胸のあたりに、すりすりと何かを擦り付けられた。
目を開ければ、降谷が、スポンジで俺の胸板を洗っているところだった。

「君……案外、きたえてるんだな」
「まあ……」
「身長、いくつだっけ?」
「185。調子いいと186くらい」

スポンジで、身体を、泡だらけにされながら、ほんの少しの物足りなさを感じる。
降谷は、俺の、股間に触れないし。なにより……

「スポンジじゃなくて、身体で洗ってほしいか?」
「え?」
「目は口程に物を言う」
「いや……別に俺は」
「僕としては、大歓迎だけれど、僕の体、結構ごついからな……君がなえてしまわないか心配で」
「……いや、まあ、なえはしないと思う」
「ホォー……? ……たまっている?」
「まあ、それなりにな」

降谷は、膝立ちにななると、俺の脚に、自分の胸を押しあてながら、手のひらを俺の脇腹に添えた。

「君、腹筋もしっかりしてるんだなあ……これは、楽しみだ」
「降谷……脇腹は、ちょっと。くすぐったい」
「じゃあ、こっちかな?」

すらっとした指が、淫靡にうごめきながら、俺のへその周りの泡を撫でた。

「あ……っ」
「……声、出ちゃうんだ? かわいいな」
「いや……別に……」
「膝の上乗ってもいいか?」
「え……ああ」

完全に降谷のペースになってきている。
俺の膝の上にまたがった降谷は、尻を使って、俺の太ももを洗い。胸を俺の上半身に擦り付けてきた。
降谷の男性器が、時折、俺の下半身にぶつかる。男のものなんて……通常時だったら、嫌悪感しか感じない。それが、今はたまらなく、かわいらしいものに思えた。

「んっ……は……ど……? きもちい、か?」
「あ……まあ。でも、少し、もどかしいというか……」
「ふふ……我慢が足りないな? もう出したいのか?」
「いや、そういうわけではないけど……まあ、あっちも触ってほしいというか……」
「まだだめだ」

降谷が、ニコッと笑う。
なんで、お前にコントロールされなきゃならねんだよ?
という怒りと共に、しかし、冷静ぶりたい俺もいて、肚の中はどろどろだ。

「なあ、降谷、湯船」
「え?」
「せっかく、降谷が入れてくれたし。湯につかろう」
「ああ。じゃあ、泡流すよ」

降谷が立ちあがり、俺の体をシャワーで流していく。
あらかたの泡が流れたところで、俺は、スケベ椅子から立ち上がった。

「交代。今度は、俺が、シャワーかけてやる」
「ああ、じゃあ、頼むよ」

俺は、降谷からシャワーヘッドを受け取ると、蛇口を思い切りひねり、シャワーの水圧を最大まで持っていった。

「ほら……」
「え……?」
「泡、流さないと……?」

 

「あ……っばか……お湯、こんな、つよくなくた……って……あっ、変なところに……あて、るな」

降谷の生意気に勃ちあがった、デカ乳首にシャワーヘッドをじかに当てる。

「降谷、なにじたばたしてんだよ? 俺にも、また、泡ついちゃったじゃないか」

シャワーをずらす。

「あ……っだって……ひゃあ……んっんんっ……そこは……自分でやる、自分でやるからあ……っ」
「なんだよ? 胸が嫌みたいだからって、当てる場所変えてあげたのに?」
「だからって……!!!」
「なに? 降谷は、チンコにシャワー当てられると、感じちゃうの? もしかして、寮の共同浴場でもみんながいるのに、シャワー使いながら、感じてた?」

亀頭に、あたる湯の角度を少しずつ変えてやれば、降谷が、膝をがくがくとさせ、床にへたりこんだ。
白いものが筋になって流れている。

「おい……俺には、まだって言っておきながら、もう出したのか?」
「あ……だって……君がシャワーで……」

俺はシャワーを止めると、降谷の体を無理やり立たせて、浴槽に誘導した。
そして、降谷を後ろから抱きかかえるようにして、湯船につかる。
達したばかりの降谷は、感覚が鋭くなっているのだろう。俺が尻に、ペニスをこすりつけてやれば

「あ……っ」

と、いつもより高い声を出した。

「風呂、気持ちいいな」
「ああ……」

手探りで、降谷の、乳首を探し当てる。それを指先でやわやわと揉んでやれば、降谷の体が、びくりと震えた。

「ん……君……そこは、だ……めっ……」
「だめなのか?」

俺は足を伸ばした。そして、下腿を降谷の太ももに、絡め、そこを開脚させる。

「あ……っ」

乳首への愛撫に片手を残しながら、ペニスに手を伸ばす。

「降谷のここ、もう、こんなになってるのに……だめなのか?」
「あ……だって……僕……いったばっかだからあ……」

体をよじらせようとするが、力が入らないのだろう。降谷は、俺の拘束をほどくことができない。

「どうなっても知らないって、俺はちゃんと言ったぞ?」
「だって……君が……こんなことするなんて……」
「いつもお前を、抱いてるやつらが、どういう感じなのか知らないけどさ……俺のこと甘く見過ぎ。ビッチのくせに、男を甘く見るとどうなるか、知らないのかよ」

警察官になりたい男のセリフじゃない……。自分でもそう思うのだが、残念ながら、俺は、馬鹿にされたことへの落とし前はちゃんとつけていきたい。

「ひゃ……っ……やだ、こわい……」
「おとなしくてりゃあ、ちゃんと、ほぐしてやる。ほら、ここにつかまってケツ上げろ」

拘束を解き、風呂のふちを手でつかませながら、尻を湯より上にあげるよう指示を出す。

「やだ、恥ずかしい……君、こんなことしなくったって」
「恥ずかしい? 今更だろ? セックスって恥ずかしいもんなんだよ」

俺が、譲る気がないことを悟ってか、降谷は、立ち上がると、風呂のふちに手をついて、尻を俺の眼前につき出した。

「これ、指を入れればいいのか?」
「うん」

汚いかもしれないということは、あんまり考えなかった。仮に、そういった事態になったとしても、降谷に仕返しする口実が、一つ増えたとしか思わない。

仕返し……?

そうだ。仕返しだ。俺は、今日、降谷と一緒に本屋に行って、それで、コーヒーか何かを飲んで、ミステリーについて語り合う、そういう穏やかな休日を過ごすはずだったんだ。
それなのに、優等生の降谷が、こんな風に、俺をラブホテルに誘い、そして、いろいろな男との行為を暗に匂わせてきた。

「あ……っん」
「え……ゆるゆるじゃん……? てか、形も、なんか、普通とは違うっていうか?」
「あ……ちが……ほぐしてきたから……っ」
「は……? 寮出る前に、セックスの準備してきたのかよ……? 共同生活の場で?」
「だって……だって……君が、僕を……えっちな目で見てたから……」

確かに、俺だって、降谷のあの噂が本当だったら面白いと思った。だけど、それは、きれいな降谷零にそういう一面があったら……という前提の上に成り立つ感情だった。
なのに、降谷は、本当に、ただのビッチで……。
しかも、俺がおとなしいのをいいことに、自分から誘ったくせに、自分のペースでことを進めようとした。

――警察官になるような人間が、こんなことをしていいのかという、問い。

もちろん、それは、自分にもかかってくる問だ。しかし、俺は自分のことを棚上げし、降谷だけを責めることで、現実から目をそらそうとした。
裏サイトで、ゲスな噂を見て、こっそりと書き込みをする、自分の陰惨さ。
おおよそ、俺は、正義にふさわしくない男だ。だけど、降谷は。降谷こそは、正義を体現したような存在だと思っていたのに。

白か黒かでいえば、それは、明らかな黒で。説教という形で向けた説得の言葉も受けいれてはもらえなかった。

「俺は、降谷に、あこがれてたよ……? なのに……お前は」

俺を裏切った。

「え……あ……っやだ……なに?」

俺は、立ち上がるなり、降谷の尻に、自身の先端を押し当てた。

「降谷、気づいてる? さっきから、ここ、パクパク動いてた」
「え……やだ……うそ……ここで……ベッドで……お願いベッドで……」

降谷が、ぽろぽろと泣きながら、俺に懇願した。
もしかしたら、風呂場で、怖い思いをしたことがあったのかもしれない。

「……わかった。ベッドで」
「うん……っ……」

降谷は立ち上がると、手の甲で涙をぬぐった。

「君は優しいな……」
「それは皮肉?」
「……君は今のを皮肉と取るんだな」

寂しげな声。
俺は無言で、脱衣所に移動し、バスタオルで、身体を拭いた。

 

「……なんだ、ゴム、するのか?」

薄暗いベッドルームの上で、ベッドサイドのライトの明かりを頼りにしながら、コンドームを被せようとすれば、降谷がそんなことを言ってくる。

「……無い方がいいのか?」
「いや。だって、君、さっきは、生で挿れようとしてたろ」
「だって、さっきは……! ……って」

手元が狂って、毛をいくらか巻き込んだ。

「慣れてないなら、僕がつけてやったのに」

風呂場での様子とはうってかわって、降谷が、余裕しゃくしゃくの笑みを浮かべた。
訳が分からないと思う。
泣いてみたり、不敵に笑ってみたり、俺をからかってみたり、切なそうな顔をしてみたり。
正義そのものが服を着て歩いているような、そんな男が、どうして、俺なんかと。そして、たくさんの男たちと、こんなことを重ねてきたのだろうか。

「……降谷はさ。なんでこんなことをするんだ?」
「おっ? また説教か?」
「……お前……本当にいい性格してるな」
「そうか? おほめにあずかり光栄だよ」

やっぱり、さっきの「優しい」も皮肉だったのかもしれない。

「だってさ……相手が何人もいるんだろ? だったら、別に俺なんかじゃなくても……」

俺は、コンドームから、毛を救出しながら、話を続けた。
ベッドでうつぶせになった降谷は、膝からパタパタさせながら、枕をぎゅっと抱いた。

「理屈なんてないさ。君がいいと思ったんだよ」
「……でかいから?」
「まあ、正直……八割方はその理由」

俺は、ベッドに上がると、降谷を仰向けにし、しゅるりと、寝巻の紐を解いた。

「前から、でいいのか?」
「……後ろからがいいのか?」
「いや……だって、僕の顔……見えてしまうけど」
「その顔が、ぐちゃぐちゃに歪むのを見ないと、腹の虫がおさまらなそうで」
「……お前……気弱な男だと思ったけど。結構いい性格してるんだな」
「いや、降谷には負けるよ」

俺は、肩に羽織っただけの寝巻を床に投げ捨て、降谷の脚の間に、居場所を定めた。

「ちょっと失礼」

降谷が、自身の腰の下に枕を挟み込み、膝を曲げながら、開脚した。

「ほら……これで、挿れやすくなっただろう?」

降谷の眉が、キリッと吊り上がる。
俺は、降谷の膝裏を掴むと、さらに開脚の角度を押しひろげ、自身のものをあてがった。

「あ……っあ……」
「まだ、三センチしか入ってないけど?」
「んっ……じらす、な!!」

降谷のチンコは、いつの間にか、立ち上がり、先からは透明の液体が漏れ出している。そして、その液体は、表面張力によって、球粒のような形を保っていた。

「でも、降谷、挿れたらすぐに、イっちゃいそうだし……」
「んっ……君だって……」
「俺、確かに、たまってるけど……でも、なんでたまってるかっていうと……俺、イきづらい体質でさ。家だと、一時間こすり続けて、ようやくって感じで」
「え……?」
「まあ、降谷次第かな? ココ、ゆるゆるかと思ったら、奥の方は案外狭そうだし」
「あ……っ」

ずずずーっと、チンコをさしこんでいく。
降谷は、目をぱちくりさせながら、俺の肩にしがみついた。

「は……っあ……やだ……なんで……ふと、い」
「うん。降谷、俺の、おっきいちんこ欲しかったんだろ? てか、これ、全部はいんのかな?」
「アッ……やだ……っ……ぼく……あんっ♡」
「え……? なに? 今の反応?」

降谷が、とろんとした目をしながらも、唇をぎゅっと噛んで必死に何かをこらえている。
ペニスの先からは、とろとろとしたものが、絶えず湧き出し、垂れ流しのようになっていた。

「ん……っ」
「え……? これ、もしかして、降谷のいいとこ?」
「あ……んっ……や……」
「すっげ、ここ、こすると……締まるじゃん」

先端の出っ張りを使って、ごりごりと刺激してやれば、降谷の体が跳ね、ぴゅるっと、性器から白っぽい液体が飛び出た。

「あ……ぅ……んんっうう……」

中がキューッと締まる。それがたまらなく気持ちいい。
キューってなるのがもっと欲しくて、ごつごつと、降谷のいいところを刺激しようと試みれば、達したあとの脱力によって、降谷の腹が緩んだ。そして、俺を奥深くまで誘い込む。

「あ……っ……すっげ、奥まで……はいっ、た」
「あ……あああああ……!!!!!」

降谷が、とても大きな声をあげた。
目じりから涙がぽろんと零れ落ちる。

「どうした……?」
「あ……っあ……あん……んっ……んん」

意識してのことなのか、無意識によるものなのかわからない。降谷がゆらゆらと腰を揺らし始めた。

「ん? もっと、奥、欲しいってこと?」

そう言って、ピストンをしながら、ペニスを押しこんでいけば、先っぽが何かに包まれる。
0.03mmの膜越しに感じる、そこは、キュウキュウと俺の亀頭に吸い付き放そうとしなかった。

「あ……あっ♡ ……んんぅ……きもち、い……」
「そうか? じゃあ、もっとしてやるよ」

がつがつと、先っぽをそこに押しつければ、降谷が、目をとろんとさせながら、俺の名前を呼んだ。

「降谷……」

なんだか、たまらない気持ちになって、キスをしてやる。
降谷が、必死で俺の頭を撫でながら、舌を欲しがった。
先ほどから、存在を主張し続けていた、ビン勃ちの乳首を爪でひっかいてやる。

「ふっ……んん……っ」

酸素が足りなくなってきているのだろう、降谷が、苦しそうに喘ぐ。
口へのキスを中断し、耳を、ジュウジュウ吸ってやる。

「あ……っ耳、だめ……頭、へんになっちゃ……うよぉ……」
「お前はちょっと、馬鹿になった方がいいんだよ」

耳元でささやく。
初恋の女を忘れられずに、恋ができないから、あとくされなさそうな男を見つけて、セックスを仕掛ける。
それはきっと、この男が、あまりにも賢く真面目過ぎるがゆえに、たどり着いてしまった行為。

――頭のいい人間は、自分が、失敗するはずがないと思うあまりに、時に、とんでもなく稚拙な詐欺にひっかかり、しかも、被害を認められないということがある

なにかの授業で、そんなことを習った。
降谷もそうなのかもしれない。だから、もっと、馬鹿になって……普通に彼女を作るとか。そういうことをすればいいと思う。

「あ……っあ……胸、らめ……」

乳首をつねり上げれば、ナカがギュウっとしまった。
降谷のペニスは、先ほどの絶頂の後から、萎えたままだが、何らかの液体を垂れ流しているのだろう。俺の下腹は、ぐちゃぐちゃに濡れている。

「ダメじゃないだろ?」

そう言って、乳首をつねったまま、でたらめに腰を動かせば、降谷の体から、尋常でないほどの汗が、にじみ出る。

「あ……あん……あ……♡ 僕……こんなの……はじめ、て」

それが、男を喜ばせるための常套句だと知っている。
だけど、悪い気はしなかった。

「降谷……ッ……降谷!!!」

乳首をギューッとひっぱりあげたあと、それを、解放し、降谷の腰を抱きかかえる。
そして、俺は、全力で、そこに、ペニスを打ち付けた。
パンパンパンっと、俺の袋が、降谷の尻を叩く。

「あ……っあ……♡ ああ……♡♡」
「そろそろ、で……るっ……」
「あ……っ……あ……僕の中で?」
「うん、零の中で……」
「あ……っあん……名前呼びだ……♡」
「それとも、ゼロの方がよかったか……?」

ゼロと言った瞬間、降谷のナカの圧がぎゅっと高まった。

「やだ……ゼロは……っだめ」
「どうして? お前のあだ名だろ……?」
「だって……」
「もしかして、降谷……班のやつらとは……?」
「ぜんいんっとは、してな……いっ」

気持ちよさのあまりに、取り繕うことを忘れてしまったのか、降谷は、班のメンバーのうちの誰かと、関係を持っていることを、ゲロった。

「ふーん」
「あいつらには……っ内緒……にして……僕が……あっ……えっち大好きなこと、内緒にして……!!」

内緒もなにも、数名とやっている時点で、ばれているのでは……? と思わなくもない。

「え……なん、で?」

俺は、ずるんと、ペニスを一度引き抜き、それから、それを降谷に見せつけながら言った。

「内緒にしてほしいなら、生でいいよな?」
「え……っ」

俺は、ゴムを外すと、それを、降谷の顔の方にめがけて投げた。
抗議の声が上がらなかったので、再び挿入を決める。

「やっ……あ……ああっ♡」
「あ……すっげ。てか、降谷も、ナマの方が気持ちよさそうだな」
「あ……っあ……♡ んっ……出し、て……」
「ん……? なにを、どこに?」
「あ……君のせいえき……を、僕の奥に……ッ♡ ちょうだい♡」
「しょうがないな」
「あ……んんっ♡ んーんー♡」

降谷が、俺の名字ではなく、下の名前で呼んだ。
喘ぎ声まじりの舌足らずの声が、かわいらしい。

「あ……そろ……そろ……おれ……っ」
「あ……♡ 来て……っ♡♡♡ 僕のおなかの中、君のザーメンでぐちゃぐちゃにっ……して……え」
「でる……!!!」

四日ぶりの射精。それも、人生初のアナルセックスで生中だし。

「あ……まだでるっ」
「あ……あ……すごい……いっぱい♡ え……♡ うそ……まだ?」
「ごめ……降谷、おれ……とまんな……」
「……んっ……すご……い……♡」

腰をぐいぐいとふり、最奥で全てを出し切ってから、性器を抜いた。
じゅっぶんっという音がし、中から、俺が出した精液と、何らかの液体が、混ざり合ってとろとろと流れ出た。ポカンと空いた穴は、ひくひくとし、なおも雄を誘っているようだった。
俺が、ふーっと息を吐いていると、降谷が、がばっと、体を起こした。

「君……」
「え……?」
「いいな……。予想してたのとはちょっと違ったけど……すっごくよかったよ」
「え……?」
「今日、まだ時間あるか?」
「あ、まあ、一応、外出届は余裕を持って出してあるけど」
「よし。ならいけるな。とりあえず、腹減ったし……腹ごしらえしたら、もう一回いいか?」
「え……? もう一回って?」
「……? 君、そんないいもの持ってて……一回ですっからかんなのか?」
「まって、降谷……俺、ちょっと心の整理が……」
「じゃあ、僕一人で食べるから、君は適当に心の整理をしててくれ」

降谷は、あぐらをかき、ベッドサイドの内線電話を使って、フロントに電話をかけた。

「ハンバーグ定食一つ。あと、サラダ」

やっぱり、常連なんだろう。メニューを見ずに、すらすらと注文をしていく。

「あ、ちょっと待ってください」
「……」
「君、確か、カレー好きだったよな? ここのチキンカレー、近所のインドカレー屋が作ってるやつで……なかなか絶品なんだ。食べるか?」
「……ああ。じゃあ頼む」
「ナンはチーズナンが、おすすめだが……プレーンもいい。いっそ両方頼むか?」
「うん。それで」
「……あ、すみません。えっと、本格チキンカレーと、ナンをプレーンとチーズを一枚ずつ」

フードの注文をする、楽しそうな降谷の横顔を見ながら……こいつは、並の男では手に負えないって、そんなことを考えてた。

end

 

 

【あとがきなど】

俺降……!!!!
はじめてかいた……!!!!!!!
男夢主攻め、楽しいよね!!!!!!!

なぜ、これを書いたかと言えば……。
私は、風降を書くとき、攻めに感情移入しながら書いているので……
ならいっそ、俺×降も書けてしまうのでは? と、考えたからです。
結果として……降谷零が、俺のことを、さほど好きではない前提で進んでいくので、むなしさが深まりました。
俺は、風見にはなれない……くやしい……。
風見裕也に対する嫉妬まじりの憧れ感情が、より、深く根深いものとなりました……

俺は、風見裕也に勝てない……。つら……。

私が風降で書く、降谷零は。

①「風見の声を聴いただけで、えっちなきぶんになっちゃうよ♡」
②「僕は……AVの貸し借りすら、まともにできないのか……(泣き出す)」

というように

①風見にめろめろで、対風見に対しては、とんだ淫乱。
②とんでもない無垢……

の、二択になりがちなんですが……。

俺降だと、降谷君の色んな表情をかけて、すごく楽しいなって思いました……♡
気が向いたら、卒後の再会セックス編も書きたいです♡ (願望……)

1