キスから始めて

初出:Pixiv 2021/5/23

風降。キスの日。

〇目的達成のためなら好きでもない男と関係を持つ降谷零。
〇つき合う前から体の関係だけはあった二人

【確認事項】
〇目的達成のためなら好きでもない男と関係を持つ降谷零。
〇つき合う前から体の関係だけはあった二人
〇♡喘ぎらしきものがある
〇降谷さんが、とてもポップに軽やかにメスイキ決める
〇ギャグです!


 

降谷さんとキスをした。
そして、その日から、降谷さんの俺に対する態度は、変わってしまった。熱い視線。それが、自分の唇に向かっているものだと理解した時、俺は、うれしかった。

致し方のない出来事だった。
近くを通りかかったマルタイから、降谷さんの顔を隠すため。俺はとっさにキスをかました。
東京も。それも、都心の繁華街。男同士のキスくらい。誰も気にしない。

降谷零という男は、目的のためなら手段を選ばないところがある。
自身の優れた容姿が、仕事に使えると判断すれば、迷わずそれを差し出す。
バーボンになった時。その傾向はより顕著になる。
俺はそういった仕事の後始末を手伝ったことがあるし。行為の最中に、カチコんだことだってある。
なんなら、身体の関係すら存在した。

「クライアントは、ここが硬くなったままの男を抱くのが好きでな」

そんな理由で、怪しい薬を飲み。収拾がつかなくなった降谷さんの体を、慰めたこともある。
それが、今更。
キスをしたくらいで態度が変わってしまったのだ。降谷さんは「そう」なんだろうと判断した。
以前から、身体の関係はあった。俺の体は降谷さんに対して、男としての機能を全うしたし。降谷さんのことを一人の人間として尊敬している。
だから、降谷さんとそういう関係になることに対し、一つの不安もなかった。

 

――仕事でするとき、キスをしない主義なんだ

初めての性処理。キスをしようとした俺に、降谷さんが言った。
「降谷さんはキスNG」と、その言葉を肝に銘じ。身体への愛撫にすら、唇を使わないよう配慮してきた。

 

二度目のキスは、降谷さんを車で自宅前まで送り届けた時のこと。
シートベルトを外した降谷さんに声をかける。

「ちょっと失礼します」

そして、唇を奪えば、最初は少し抵抗をみせたものの。気が付いたら、背中に手を回されていた。
キスを終えた後のうっとりとした降谷さんの顔を見て、俺はこのまま車を出してしまいたいと思った。
だけど、そういうわけにもいかない。なにせ降谷さんは、三日ほど家を空けていたのだ。俺が仕事帰りに、様子を見に来ていたとはいえ、ワンちゃんだって飼い主に会いたいだろうし。降谷さんも、家でゆっくり休みたいはずだ。
しかし、気持ちの確認だけはしておきたくて

「ごめんなさい……キスNGなのに。でも……降谷さん、最近、俺の唇をやたら見つめてくるから。したいのかなって思ったら……我慢が効かなくなってしまって」

なんて。白々しいセリフを吐いた。
降谷さんが、ぎゅっと俺の左袖を掴む。そして

「一時間……いや、三十分経ったら、部屋に来い」

と言った。
その唇に、もう一度キスをした。今度は、少しの抵抗もせず。降谷さんは俺の背中に手を回した。

はっきり言って、その日のセックスは最高だった。
今までの行為で相性がいいことをなんとなく察していたが、キスをしながらの行為。降谷さんはちょっとあり得ないほどに乱れまくった。

「こら……ワンちゃん、起きちゃいますよ」

そう言って、耳にキスをすれば降谷さんの体がびくりと跳ねる。

「じゃあ……キス。キスして声……僕の口ごとふさいで」

声をふさぐために、と降谷さんは言った。
だが、本当はそうでないことを、俺は見抜いていた。
おそらく、降谷零という男はキスが好きで。キスハメも好きで。つまり、仕事で性行為するとき、キスをしないのは、前後不覚にならないための防衛手段なんだろう。

(降谷さんは単純にキスが好きなだけで、俺を好きなわけではないのかもしれない)

そんなことを考える。
だが。

(キスでとろとろになってしまった自分を晒してもいいと思われる程度には信頼されているということなんだろう)

とも思う。
他者が何を考え、何を感じるのか。それを正確に捉えることは不可能だ。まして、相手は三つの顔を完璧に演じ分ける男。はなから、その心を完璧に理解しようなど、大それたことは考えない。
俺のキスとペニスを受け入れて、気持ちよさそうに体を震わせる降谷さんの頬を撫でる。
そして「この人の役に立てるのであれば、何回だってキスをしてやろう」と。そんなことを考えた。

 

 

「バーボン……あなたね。今時、そんなことを言う売春婦……世界中どこを探してもいないんじゃないかしら?」

助手席のベルモットがタバコに火をつけた。
体を使った交渉に関する打ち合わせ。「キスはNGなので、先方にそこだけは伝えておいてもらえます?」と頼めば、皮肉を返された。
自分でもわかっている。セックスは大丈夫でキスはだめ、だなんて。どうかしている。
だけど、こういう仕事のやり方をするからこそ、その一線だけは保っていたかった。

風見裕也とキスをしたいと思ったのは。出会って間もなくのことだった。
だからといって、行動を起こすつもりはなかった。
彼の歴代の恋人はすべて女性であったし。上司と部下という立場の問題もある。なにより、こういう仕事からアガるまでは、恋愛をする気にはなれなかった。
それでありながら、色を使った仕事に風見を巻き込み。処理の一環として、行為を持ち掛けたのだ。そのなりふりかまわさに、自己憐憫すら感じなくもない。

初めて風見の体を求めた時、彼は僕にキスをしようとした。
僕はギリギリのところで、それを拒んだ。それを受け入れてしまったら、すべてが決壊してしまうと思った。
これは仕事だ。と、自分に言い聞かせる。
そして、キスがダメだと伝えたからだろう。風見は、僕の耳、首筋、胸の尖りにすらキスを落とさなかった。そういう生真面目なところが愛おしく思え。
自分の気持ちを抑えるために、キスはだめだと伝えたはずなのに。ますます、好きになってしまいそうだった。

だから、都内の繁華街。お互いに、洋服をしっかり着込んだ街角。
風見がマルタイから僕を隠すためにした、とっさのキス。その数十秒間で僕の決心はぐずぐずに溶けてしまいそうだった。
業務遂行上の致し方ない出来事だったことを理解している。
僕の顔を隠す方法は、いくつかあったはずだ。しかし、確実性と、即効性を考えると、キスはなかなか有効な手立てだった。実際、頬に添えられた風見の手のひらは、とてもいい具合に僕の顔を隠したし。都会で長らく潜伏生活を送っている対象は、ちらりとこちらを見たが、すぐに視線をそらしてしまった。
風変わりなできごとに対して、無関心であること。あるいは、無関心さを装うこと。それができなければ、都会の街並みになじむことはできない。

僕は、キスをした風見を責めなかったし。風見も謝罪しなかった。だいたい、僕らはもっと罪深い粘膜のすり合わせを経験している。すべて、今更だった。

君子の交わりは 淡きこと 水の如し

風見が、なぜキスを手段に選んだのかとか。キスをしたことでどんな感情の変化があったのか。そういった諸々に対して、僕は無関心でなければならないし。それができないのであれば、せめて無関心を装うべきだ。
三つの顔どころか、百の顔だって演じ分けて見せる。

――だが、それは、仕事上の話だ

僕は、この私的感情を、うまくコントロールできない。
これは、仕事ではなく。恋の問題だった。

油断すると、つい。風見の唇を見つめてしまう。への字唇がかわいらしい。一見すると、薄く見えるが、彼の唇は見た目より、しっかりとして肉厚だ。

二度目のキスを仕掛けられた時。僕は、もう、自分を抑えられなかった。

仕事帰りの送迎。風見のキスと告白まがいの言葉。どうしたって、離れがたい気持ちになり。僕は少しの時間を設けたのち、風見を家に上げた。
ハロは、ぐっすりと眠る子だから。僕の情けない声を聴いていないといい。
あんな風に他者の体と唇を求めたのは、その夜が初めてだった。

 

 

キスが好きなのに。キスをねだるのは上手じゃない。

ストイックで、私欲を満たすことに不慣れな降谷さんは、チンコの挿入は要求できるくせに。キスを頼む際には、なんらかな理由が必要らしかった。

「声、抑えられないから」
「顔を見られるのは恥ずかしいから」
「キスした方が、奥の方まで入るから」

そんな理由をつけた方がよほど恥ずかしいと思うのだが。
理由もなくキスを欲しがることの方が耐えられないらしい。
だから、俺の方からゲームを仕掛けてやる。

「降谷さん、ゲームをしましょうか?」
「ゲーム……?」
「はい。イッた回数だけ、キスをしますので、イったら教えてくださいね」

我ながら、なんてふざけたゲームなんだろう……と思う。
しかし、キスをしてもらうことを想像して、早くも思考がとろけてしまったのだろうか。
降谷さんは、このばかげたゲームの意義、公平性、ルールについて一切の確認をしなかった。

前戯で、うっかりキスをしそうになり、あわてて唇をかんだ。キスをしてもらえると思ったのに、もらえなかったからなのか、降谷さんは、ほんの少し口を尖らせた。
それが、とても、かわいくて。またしても、キスをしそうになってしまうが、それでは、ゲームが成立しない。

俺の部屋での行為。明日は休みだから、じっくり取り組むことができる。

降谷さんの下着を取っ払い、秘部に指を添える。
そんなこと、一度たりとも頼んだことはないのに。家でほぐしてきたのだろう。降谷さんのアナルは、すでに十分準備されていた。
全裸で横たわる降谷さんの中を。左手の人差し指と中指で検分する。「イッた回数だけ、キスをしますので」たった、それだけの言葉。しかし。キスが大好きで、キスハメでぐずぐずになってしまう降谷さんに対しては、十分な催淫効果をもたらすらしい。
腰をゆらゆら揺らしながら、降谷さんが言った。

「かざみ、はやく……僕、イきたい」

キスをねだるより。絶頂を欲しがる方が簡単だなんて。降谷さんの価値観は、ちょっとどうかしている。でも、そういうアンバランスさに、ペニスを硬くしてしまう俺だって、第三者から見たら、どうかしているのだろう。
指を三本入れて、ナカをこじ開けるよう、ぐにぐにとかき回せば、いつもより感じやすくなっている降谷さんは、トロトロと精液を垂らした。

「あ……風見、ぼく、いま……イッた……」
「降谷さん、最近、ナカでイくとき」
「うん……っん」

指で、前立腺をぐりぐりしてやれば、さらにとろとろと精液が漏れ出る。

「白いの、おもらししちゃうのかわいいですね」

ぐっぐっと、やや強引に。指をめり込ませるようにして神経叢を刺激する。敏感な場所を乱暴に扱われ、降谷さんは、続けざまに二度目の絶頂を迎えた。

「や……かざみ、ぼく……また」
「うん」
「キス……二回……」

俺は、降谷さんから、指を引き抜くと、唇にちゅっちゅと二度、軽いキスをした。

「や……キス……」
「うん。次も、イったらね」

チンコにゴムを被せ、ローションをぬったくる。そして、降谷さん腰を掴むなり、自重を使って奥まで押し入った。
前立腺を激しく刺激されていた余韻。それが抜けきらないうちに、硬いものが腹の中を駆けあがっていったのだ。降谷さんは、あっという間にイッてしまう。
そして、キスが欲しくてたまらないんだろう。小さな絶頂をすべて漏らすことなく口頭にて自己申告した。

「かざみ……イッた……ぼくあ、また……ああっいまので、三回イッたから……あああん……あ、四回……キス、四か……あっああ、五回、かざみ、キス……あっ……ろっか……いして……」

しゃべりながら、数が、どんどん更新されていくのがかわいらしくて、調子に乗りそうになった。だが。いくらプライベートな時間とはいえ、相手は上司だ。多少の忖度は必要である。

「降谷さん……さっきから、イきっぱなしですし。それ、小さいやつを全部カウントしてますよね? だから、降谷さんがイッた回数。全部まとめて一回です」
「や……あ……」

キスが一回しかもらえないと知り、降谷さんはすごく悲しそうな顔をした。

「でも、長く上手にイけましたからね。そのぶん、じっくりちゅーしてあげますよ。ああ。それとも……短いの六回の方がいいですか?」

俺の提案に、降谷さんは、腰をゆらゆらさせ

「あ……っあ、僕……さっきからずっと……イってる……だから、ちゅうして……長いの」

とキスをせがんだ。

「はいはい。じゃあ、キスしますよ」

仕方ないなあという顔を作りながら、ご褒美のキスをすれば、降谷さんが俺の首に腕を回した。そして、ジュウジュウと、俺の舌が痛くなるほどに強く強く吸ってくる。
降谷さんは、キスが好きだが、キスをするのはへたくそだ。と、いうよりも必死になりすぎて緩急をうまくつけられないのかもしれない。俺は、降谷さんの乳首をぎゅうぎゅうと摘まみ、ブツでナカをゴリゴリとかき回して、降谷さんの意識を分散させた。
舌への吸引が緩まったところで、角度を変えながら、丁寧に中を舐めまわす。ガシガシと腰を前後にふれば、降谷さんが、ぎゅっと息を止める。大好きなキスハメ。どうも、先ほどよりも、深くイってしまったらしい。降谷さんの肉壺が俺のチンコをいい具合に締め上げた。たまらず、唇を外せば、降谷さんが苦しそうに肩で息をした。

「あ……ふるやさ……すっげ、今……深くイきましたね」

そうやって褒めれば

「かざ…み……ぼく……今……ああっ深くイったから……もっと、深い、キス……ちょうだい」

降谷さんは、すかさずキスをねだった。
言葉ではなく、キスで返事をすれば、降谷さんのおなかがぎゅんぎゅんうなる。より奥の方へ、俺を導くような襞の動き。

たまらなくなった俺は、キスを中断し

「降谷さん……ああ…っ……キス……降谷さんの……おなかの中の……一番深いところにもしてあげますね」

降谷さんの奥の奥を軽くえぐってみせた。

「え……? っあ……ああっ」
「ここ……ね。このちょっと先。俺のチンコの先で、ここに、いっぱいキスしてあげます」
「あ……♡ キス……♡ 風見のオチンチンと……僕の…おなかの奥……♡ ちゅっちゅ……するの?」
「ええ……そう、そうですよ」
「あ……でも……くちにも……」

腰をゆらゆらさせながら、降谷さんの奥が緩むタイミングを探る。

「……ぁっ……くっ。もちろん。降谷さんの、かわいいお口にも……はあー……っ。いっぱいちゅうしてあげます」
「~~~~~!!!!!」

降谷さんの口をふさぎ、腰を突き動かした。降谷さんの歯が、がりっと俺の唇にぶつかって、血の味がジワリと広がる。だが、そんなことはどうでもよかった。

上でも下でも、とにかく、キスをしてやる。
こんなキスができるのは、俺しかないと体に教え込む。
人を好きになる理由は、いろいろだ。
優しいから。歌がうまいから。仕事ができるから。話をしていて楽しいから。十人十色。千差万別。

だから、降谷さんが俺を好きになる理由が「最高のキスをしてくれるから」であってもかまわない。

 

 

なんかよくわからないけど、キスに血の味が混ざった。だけど、僕は痛くないから。出血をしたのは風見だろう。血の味なんて、決していいものではないのに。風見の血だと思った瞬間に、それを好ましく思ってしまう。
風見が提案してくれたゲームは、僕にとってとても都合がよくて。セックスで気持ちよくなれる上に、キスまでしてもらえる、とてもいいものだった。

風見はとても興奮している。いつもとは違う獰猛なキス。だけど、僕はそれをすごく気に入った。いつもの風見は、たぶんキスがとても上手で。必死過ぎて全力でやりすぎてしまう僕のキスと違い、彼のキスには余裕と遊び心といやらしさがあった。
僕は風見にキスをされると、すぐにトロトロになって。そして、キスをしたまま、肛門性交を行うと、もう、わけがわからないほどに気持ちよくなり。自分でも信じられないような、恥ずかしいことを口走ったり、えっちな仕草をしてしまう。

おなかの一番奥。どう考えたって、ペニスの先端が入り込むのには不適切な場所。そして、並の男性器では到達できないそこを、風見の先端はごりごりと少しの余裕をもって刺激することができる。
その行為を「キス」と風見は表現した。風見のペニスと……僕の体の奥まった場所がキスをする。想像しただけで、気がおかしくなりそうだった。

唇をふさがれ、奥を何度もえぐられた。
キスをしながら、ちゅこちゅことピストンされてしまう行為。僕は、気を失わないように、必死で風見の体に縋りついた。

おなかの中から、気持ちいいのが全身に広がって、身体がひんやりとしてくる。息はとても苦しくて、だけど頭がぽわんとして気持ちよくて、冷や汗がだらだらと流れ出た。
キスが終わってしまう。そして

「降谷さん……息して……? あれ……おーい、意識あります?」

風見が腰の動きを止めた。それでも気持ちよさの波が止まらない。

「かざみ……っあ……んー……ぼく……いま、すっご…く、イってしまっていて……ああっだから……」
「ああ、いったん抜きます?」
その提案に僕は必死で首を振った。

「ちが……き…す……げーむ……僕……すごく…いまイってるからあ……♡」
「え……あのゲーム……っあ……まだ続けます?」

風見が腰を軽くゆすりながらたずねる。

「うん……キス……おねが……い……して? あっ……して、くださ……い♡」

おなかの中がたまらなく気持ちよくて、早くキスをしてほしくて、僕は風見の頭に手を伸ばした。

「……さすがは降谷さんです……ゲーム……俺の負けですね」

唇をふさがれる。そして、ピストンは再開された。

 

数時間後、目を覚ますと、風見が僕の顔を愛おし気に眺めていた。どうやら、気をやってそのまま眠ってしまったらしい。
眼鏡越の向こうにある切れ長の目。

「降谷さんのキスって最高ですね」
「君……そういう皮肉は……」
「皮肉なんかじゃないですよ。俺、もう、降谷さん以外とはキスできないかもしれません」
「そうか……」
「本当は、俺が、降谷さんにそう言わせたかったんですけどね」
「えっ……?」

どういう意味だと、聞き返そうとした矢先に、風見に唇を奪われた。それがたまらなく気持ちよかった。大きな案件が片付いた後で。明日は二人とも休みだ。
余裕と遊び心といやらしさのあるキスを、たっぷり堪能する。
それから。

「なあ……キスの前借りをしちゃったから、僕、絶頂しないと……」

僕は風見を誘った。バーボンだったらもっと上手に男を誘惑できるだろう。
だが、今の僕はただの降谷零だ。キスをせがむことすら、うまくできない。恋愛面において、僕は、非常に不器用な男なのだ。

「は……? 前借り……ですか?」
「ゲームの続きだよ。イってないのに、キスをもらってしまったから……」
「ああ、そういうことですか」
「うん……あの……あと……僕が上手にイけたら、その……」
「なんです……? こういうキスがいいとかご希望があるんですか?」
「君の、オチンチンで、僕のおなかの奥にキスするやつも……してもらえるだろうか?」

風見が眼鏡を外しながら、ふふふと笑った。
変なことを言った自覚があるので、その笑いをとがめない。

「あー……本当に、あなたって人は……最高の恋人ですね」
「え……?」
「また、気絶するかもしれませんけどよろしいですか?」

その声に、おなかの奥がキュンキュンとして。
僕は「最高の恋人は君の方だろ」という言葉を言いそびれてしまった。

 

 

【あとがきなど】

なんか知らんがキスの日と聞いて書いた。

風見
(降谷さんはキスとかキスハメが大好きだなあ……)
降谷
(風見とのキスが好きだ……キス、ハメ? というのも……とてもきもちよくてダメだ)

な、風降でした。
微妙にすれ違ってるけど、最終的にはちょうどよい感じのところで落ち着く風降……すごく好きなので。
これからも、何度だって二次創作していきます。

ところで……みなさんは、受けの実況中継(「僕、いま○○だよぉ……」的なやつ)を書きながら、おもしろくなり、筆が進まなくなったことはありますか?
私は、今日、これを書きながら、それを体験しました。

「かざみ……イッた……ぼくあ、また……ああっいまので、三回イッたから……あああん……あ、四回……キス、四か……あっああ、五回、かざみ、キス……ろっか……いして……」

ここ。
数がどんどん増えていくことに笑ってしまった……
でも、しょうがないよね、小さくいっぱいイってる時に実況したら多分そうなるし。
風見とのキスが大好きな降谷さんは、イった回数、全部報告したいって思ってしまうし。

だからね……仕方ないんです。

 

 

 

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