欲したり、求めたり

初出:2021年4月11日(Pixiv)
男だけの飲み会で
二人きりでない飲み屋のお座敷で
君の責任

の続き。
風見さんの家に移動して、セックスするだけ。

 


 

タクシーを呼び止める。降谷さんを後部座席に通し、助手席に乗り込もうとすれば「君もこっち」と促される。その言葉に従い、リアシートに腰を落ち着けると、右膝が降谷さんの体に触れた。
俺たちは、あれも、これも、それも済ませている恋人同士であり、俺は三十歳のいい大人だ。それが、まるで思春期のごとく、少しの刺激がチンコに突き刺さる。
ふーっと息をはいて、その衝撃をやり過ごし、平静を装いながら運転手に自宅の住所を告げる。カーナビの操作音。運転手がこちらをふり返り「ええっと、番地は……?」と問いかけてきた。俺は、少しいらいらしながら、もう一度、番地を口ずさんだ。
ドライバーに非はない。最初に住所を告げた時、俺はとても早口だった。つまり、番地を聞き返されたのは自業自得なのだ。しかし、だからこそ、俺は余計に苛立ちを抑えられない。
お互いに、それなりのアルコールが入っている。それであっても、降谷零という男は、冷静な自分を残しているはずだ。だから、俺が早口になったり、イライラしていること気がついているだろう。
降谷さんが、こめかみをさすった。
俺は、なんだか八つ当たりしたい気持ちになった。「俺がこんな風になってるのは、降谷さんのせいなんですからね!」と。そう言えたらどんなにいいだろうか。

タクシーはいろんな客を乗せて走るから、俺のイライラなど、どうということはないらしい。カーナビの操作が終わりクラウン・コンフォートは走り出す。
最初から一次会の後は俺の家にお泊りすると決めてあった。
俺が宴席で降谷さんをからかったのは、いつものやり取りの一環に過ぎない。私的な時間において降谷さんをからかうのは初めてではないし、二人きりの場面であれば、もっと刺激的な意地悪もしている。
想定外だったのは、その後のことだ。
少しでも早く二人きりになりたかった俺は、トイレに行った降谷さんを時間差で追いかけた。そして、手洗い場にいた降谷さんをトイレの個室に連れこむ。
ことは俺のペースで進んでいる。そう思って油断したのがいけなかったのかもしれない。結果、俺はカウンターを食らった。
恋人として過ごす時間、降谷さんは俺に主導権を明け渡す。
ところが、居酒屋のトイレにおいて、降谷さんは俺に「待て」をした。これは、強烈な体験であった。
愚息をしぼませるために、男子トイレの個室で、フランダースの犬の動画を再生した。昔から、この手の物語には弱いが、降谷さんのワンちゃんと触れ合うようになってから余計に揺さぶられやすくなった気がする。
俺はものの数十秒で心を持っていかれた。やがて、少年と犬への想いが高まるのと反比例するように、俺のチンコは熱を失いふにゃりとしおれた。
勃起がおさまったことに、安堵する。

だが、座敷に戻れば降谷さんがいる。萎えたものはすぐに熱を取り戻してしまいそうだった。
果たして、俺が「待て」をされていることに気づく者はいるだろうか?
一次会が終わるまでの数十分。俺は、タバコを吸いながら、どうにかこうにかその場をやり過ごした。

 

タクシーの運転手は、あまりしゃべらない人だった。
俺がいら立っていたせいかもしれない。あるいは、俺と降谷さんの間にある緊張のようなものを感じ取ったのかもしれない。
運転手は、カーナビを使いつつ、適宜、裏道を活用して道路の混雑を避けていった。だから、想定していたよりも早く家についてしまった。

清算を済ませ、タクシーを降りる。
降谷さんはエレベーターのあるエントランスではなく外階段に向かった。そして「走るぞ」と言って、階段を一段飛ばしで上っていった。
その後ろを追いかける。階段を強く蹴って、だけど、夜だから足音はなるべく立てないように。
当たり前だけれど、先に走り出した降谷さんには、とても追いつけそうもない。別に勝負をしているわけではないし、降谷さんがどこかに逃げて行くわけでもない。目的地は俺の部屋と決まっている。
それでも、走る降谷零の背中を見たら追いかけてしまう。それは、きっと、変えようのないサガのようなものだ。

「あ……!」

上から降谷さんの声がした。

「どうしたんです?!」

より一層、強く階段を蹴る。
そして、ようやく降谷さんの姿を視野に入れる。

「靴が脱げた」

踊り場を曲がった先の階段の六段目。革靴が片方落ちていた。
降谷さんは、その少し上の段に座り、こちらを見下ろしている。俺は、一度、踊り場で足を止め、ゆっくりとした足取りで階段を上がり靴を拾った。

「ほどけることもあるんだな」
「なにがです?」
「君が結んでくれたイアン・ノット」

俺は、しゃがみこんで、降谷さんに脱げた右足の靴を履かせた。紐をイアン・ノットに結んでやる。

「そりゃあまあ、ほどけにくい結び方であって、ほどけないわけじゃないですからね」
「そうだな」
「でも、ほどけたのが今でよかったです」
「うん」

それで、マンションの外階段にしゃがみこんだまま、短くキスをした。
舌を絡ませたら、理性が飛ぶとわかってたから、唇を合わせるだけにとどめた。そして、手をつないで外階段を、今度は歩きで上る。
集合住宅の共有スペースで手をつないだのは、これが初めてだ。
ちょっと胸がいっぱいになって。ついでに、チンコの方もパンパンになっていた。

自宅のドアの前で、鍵を取り出そうとまごついた。
だから、俺は針金のようなもので鍵をあけた恋人を責めなかった。
降谷さんはこの部屋の合鍵を持っている。それを取り出す手間すら億劫に思ったのだろう。ピッキングは褒められた行為ではないが、緊急事態であれば仕方がない。
部屋に入り、ドアを施錠する。俺は、靴を脱ごうとしている降谷さんの背中を抱きしめた。だけど、抱き着いたままじゃ靴がうまく脱げない。それで、仕方なく、両手を離した。
俺は靴を適当に放るなり、再度、降谷さんを抱きしめ、そのまま寝室に直行した。
寝室の蛍光灯を灯す。調光する時間すらもったいなく感じられて、突っ立たままの降谷さんからジャケットをはぎ取った。
居酒屋のトイレで見たのと同じ光景。降谷さんの感じやすい乳首が、インナーとシャツを押し上げ、そのありかを主張していた。思わず息をのむ。
降谷さんを抱き寄せキスをした。頭の後ろに手を回す。細くてキラキラの髪を手でとかしながら、舌をつき出し、降谷さんにそれをしゃぶらせた。
だらだらと湧き出る唾液を流しこみながら、降谷さんのシャツに手をかける。
後頭部から手が離れたせいか、唇の連結がほんの少しゆるんだ。すると、降谷さんの手が俺の後頭部に伸びてきて、より必死に舌を吸われた。珍しいなと思った。

――降谷さんが積極的に性行為に取り組むこと。

これ自体は特筆するようなことではない。だが、序盤から飛ばすのはめずらしい。普段は、一度目の挿入の終わりごろになってようやく乱れだすという感じだから、いつもと違う様子に興奮すると同時に、最後まで持つのか……? などと余計な心配をしてしまう。
手のひらで、降谷さんの胸のコリコリを撫でまわし、それからぎゅっとつねり上げてみる。

「やぁっ……」

と、降谷さんは短く啼いて、そんで、息をハアハアさせながら、こちらを見つめてきた。

「んー?」

と、首をかしげながら、青い瞳をのぞきこむ。つまんだ乳首は離さないままに、しかし、微妙な強弱をつけながら、降谷さんのおでこに自分の額をすりつける。

「どうしました?」
「君……きみさ……飲み屋の話ってほんと…うなの、か?」
「本当って?」
「僕の……今……君がつまんでいるところ…ピアス、とか……鍼とか」

その言葉を聞いて、ちょっとだけ悩んでしまった。そりゃあ、やってみたい気持ちはある。でも、降谷さんの怖がることはしたくない。

「興味はありますが……でも……俺は、今の降谷さんの乳首も最高だと思っているので、まあ、降谷さんがしたくないなら、しません」

つねっていた乳首を解放してやる。それから、爪の先で軽くひっかく。ほんの数ミリ動かすだけの微細な動き。降谷さんは、俺のシャツをぎゅっと握り、小さな声で喘いだ。

「これで、こんな風になっちゃうんですからピアスなんて無理でしょ? 日常生活に支障をきたします」
「ぁ……ん……」

降谷さんをベッドに座らせる。俺は服を脱ぎ、パンツ一枚になってから隣に腰をおろした。
先走りが、ダークグレーのボクサーパンツにシミを作っている。降谷さんの服をどこから脱がそうかと考えながら、太ももに手を伸ばせば、さらりとそれをかわされる。
無駄のない動き。降谷さんは俺の正面に回り、膝立ちになった。そして俺の股間に頭をうずめる。
布越しに、チンコを食まれた。

「ふるや、さん?!」
「ね……風見……君のここ、がちがちだし……先っぽからなんか出てるみたいだけれど」

そう言って、降谷さんはパンツをずらして俺のイチモツを取り出した。

「今日、積極的ですね?」
「だって、なんか、こうふんしているんだ……」

チンコに熱い息がかかった。

「なあ、その……しても……いいか?」
「しても……、と言いますと?」
「口でするやつ」
「ああ、では、どうぞ。ひとつよろしくお願いします」
「うん」

明るいままだなと思ったけれど、それを言い出すことはしなかった。あるいは、明るいままの方が、もっと高いところまで昇れるんじゃないかって、そういう期待があったのかもしれない。
降谷さんが、挿入の前に俺のものをしゃぶる。実はこれも、結構レアだ。前半は俺が降谷さんを責め立てて、後半戦、タガが外れた降谷さんがフェラなどを仕掛けてくというのが、なんとなくのお決まりのパターンだった。数度の絶頂を経た降谷さんは、ふにゃふにゃになっていて、いつも、とてもおいしいものを見つけたような表情で、俺のチンコをぺろぺろ舐める。
でも今日の降谷さんは、まだ一度もイっていない。だから、いつもよりクリアな頭で、俺のペニスと対峙している。
降谷さんの右手が、竿を握り、皮を少し下に引っぱった。形のいい唇が、尿道口をちゅっと吸い上げる。それから、くびれのところを舌でぐるりと三百六十度舐めとられた。腰が浮く。明確な意図を持った舌づかい。降谷さんが上目遣いで、俺の顔色をうかがった。きりっとした眉とキラキラのまつげ。
裏筋を舌先で舐められる。気持ちいなあと思いながら試しにおねだりをした。

「降谷さん、さおんとこ……軽くこすって……あ、そう、そんなかんじ。いや、もっとこう……皮を引っ張るんじゃなくてさする感じで、手首スナップきかせて」

ジェスチャーを交えながら伝えれば、本当にそのようにしてくれる。

「あ……い…ッ……ふるやさ…んじょうず」

何をやらせても、人並み以上にできてしまう人だ。あっという間にコツを覚えて、とても的確な手コキを施してくる。

「あ……あの、ちょっと、こう……しゃぶって……ああ、いや、そんな深くしなくていいです、ちょっとお口開けでください」

フェラチオを中断して、降谷さんは、あーんと口をあけた。

「ちょっと失礼しますよ」

指を三本ほど降谷さんの口の中に差し込んだ。それから、指の腹を上にして、上あごの裏側をゆっくりと撫でた。
降谷さんは、俺の手首をぎゅっと握り、指をちゅうちゅうと吸った。

「……ここ。ここに、俺の先っぽをなんていうか、押し当てる感じ……」

そういえば、キスの時も、ここを舐めてやると嬉しそうにする。たぶん、性感帯なんだろう。指でなでられるのも気持ちいいらしい。降谷さんの呼吸が乱れていく。

「そんで、吸ってほしいんです。ほっぺたをすぼめる感じで。まあ、無理のない範囲で」

左手で頭を撫でて、降谷さんの口から指を引き抜いた。はあはあという息遣い。竿を握り、降谷さんに亀頭を差し出す。
降谷さんの喉がごくりと動き、ぬるぬるの先っぽを口に含んだ。そして目をつむる。眉間には皺。
同じ男同士。歯を立てないようにとお願いするまでもなく、降谷さんは大変上手にフェラをなさった。
降谷さんの上あごが、亀頭を圧迫するとそのたびに、お口の中が潤う。あふれてきた唾液を降谷さんが飲み込めば、口腔内が陰圧になって俺の性器にぴたりとはりついた。それが、すごく気持ちよくて。先っぽからトロトロが止まらない。
やがて、コツをつかんできたらしい降谷さんが、ぱちりと目を開けてこちらを見た。右手で、先ほど教えた通りの手コキを始める。
「待て」のせいで、いつもより感度が上がっていた俺は、情けないことに、ものの数分でイってしまいそうだ。

「あ……、ふるやさ……ぁあ゙ー……むり、でそ……くち、はなして」

だけど降谷さんは、ちゅうちゅうと吸いついて、なかなか放してくれない。
俺は、身もだえながら手を伸ばし、降谷さんの乳首をひねり上げた。瞬間、ジュポンとチンコが抜ける。ギリギリセーフ。口内射精は防げた。
……がしかし、ジュポンの瞬間、唇がいい感じカリに引っかかって。それが、なんか「ああ……っ」って喘いじゃうくらいに気持ちよく、結局、俺は勢いよく射精した。
居酒屋のトイレで焦らされたこと、明るい部屋で卑猥なことをしている背徳感、降谷さんの乳首が勃ちっぱなしであること……それらが総合的に作用した結果だと思う。自分でも、ちょっと引くくらいに、ぴゅーぴゅー出てしまい、降谷さんの顔どころか、前髪までもを汚した。

「は……ぁー……ごめんなさい。あ、降谷さん、目開けちゃだめです」

慌てて、鼻セレブを引き抜いた。それで、まずは、瞼の上を丁寧に拭った。髪についた分も拭き取ろうとしたのだが、思いのほか粘り気の強いそれをティッシュだけで、きれいに除去するのは難しかった。

「バスタオル準備するんで、シャワー浴びに行ってください」

パンツを履きなおし、バスタオルを取りに行こうと歩き出すと、降谷さんが後ろから抱きついてきた。

「……だめ」
「いや、しかし、髪の毛かぴかぴになっちゃいますよ」
「後でちゃんと洗う」

返事に詰まる。
黙り込む俺の背中に。降谷さんは自身の胸をすりすりとこすりつけた。

「風見、僕は、続きをしたい」
「……いや、お風呂でしてあげますから」
「……君のだって、ぜんぜん萎えてないし」

ご指摘の通り、あれだけ盛大に射精したにもかかわらず、俺のチンコは、固さを保ったままだった。
俺は、降谷さんの腕をほどき、後ろをふりむいた。

「どうして、今日はそんなに積極的なんですか?」
「……どうしてって。だって……君がみんなの前で、こっそり僕をからかうから……」
「降谷さんは、からかわれると、えっちな気分になっちゃうんですか?」
「わかんない……わからないけど。なんか、風見ってやらしいよなって改めて実感したというか……その……それで」
「つまり、どういうことです?」
「君もよく言うだろ……? 僕のえっちなところを見ると、興奮するとか」
「降谷さん、今日、俺のことをめちゃくちゃ煽っているってわかってます?」
「うん。一応自覚はある」
「本当ですか……?」

俺の問いかけに、降谷さんは、凛とした声で答えた。

「トイレで君に、おあずけをした時から、責任を取る心づもりでいたよ」
「そうですか」

その目つきは、とても真剣だった。

「だから……君こそ、ちゃんと、責任取れよ」

長い指が、自身のシャツのボタンを一つ一つ外していった。そして、ばさりと脱ぎ捨てる。
降谷さんがインナーを鎖骨の上までまくる。二枚の布の下で所在を主張しづけていた突起が二つ。赤く色づいて俺を誘った。

「僕を、こんな風にしたのは君なんだから」

そんなことを言われて我慢できるほど、俺は自制心のある男じゃなかった。精液をかぶった降谷さんの前髪。そこは、すでに、かぴかぴになり始めているような気がするが、それを気にしているようでは男が廃る。
ズボンとパンツを脱がせ、その勢いのまま降谷さんをベッドに押し倒した。

「降谷さん、ローション……いつもの引き出しにあるんで、出してもらっていいですか?」
「いや、大丈夫」
「しかし、準備しないことには……」
「準備してある……」

俺は、少々、疑いの目を向けながら、降谷さんの尻穴に指を突っ込んだ。すると少々のこわばりはあるが、大きな引っ掛かりはなく、人差し指をつけ根までを飲み込んだ。

「……え、まさか、居酒屋のトイレで?」
「……馬鹿、あんな短時間じゃ準備できない」
「では……?」

指を二本に増やし、中をぐちぐちとこねくり回す。やわらかくはあるのだが、やはりぬめりが足りない。

「あ……っ」

指を引き抜く。それから、ベッドを匍匐前進し、引き出しからローションのボトルを取り出した。
手のひらで、トロトロの粘液を温めながら降谷さんにたずねる。

「降谷さん、おしり、どこで準備したんです?」
「自宅」
「……え、じゃあ、居酒屋に居たときにはセックスできる状態だったってことですか?」
「……まあ、そうだけど」
「なんで?」

ぽたぽたとローションが、シーツにシミを作る。
俺は、再び、降谷さんの中に指を挿入した。

「だって、のみ……かっい……のあと、おとまり……だと、いつもよりここに来るの、遅くなっちゃ……う、から」
「あーなるほど、俺と、ちょっとでも早く繋がれるよう、ここをほぐしておいてくださったんですね」
「ん……そう……ぁ、っあ」

二本の指でぐりぐりと中を拡げていく。それから、指を三本に増やす。
ぷっくりとした前立腺を、とんとんとすれば、降谷さんが脚を閉じて指の動きを阻もうとする。

「いつものことではありますが」

負けじと、前立腺をいじめ続ければ降谷さんの体がふるえた。

「降谷さんのえっちなところ見ると興奮しますね」

そう言いながら、指を引き抜けば、あと少しでイけそうだったであろう降谷さんが、名残惜しそうに

「ああ……っん」

と啼いた。
降谷さんが自分で中途半端に脱いだインナーを、取っ払って、丸裸にする。
俺はパンツを下ろしガチガチのペニスにコンドームをつけ、眼鏡を外した。
手のひらにローションをたらし、なすりつけるようにしてゴムになじませる。

「降谷さん、挿れやすいように、脚……開いてもらっていいですか?」

声をかければ、短く息を吸い込む音がする。
降谷さんは両の膝裏を抱え、自らマンぐり返しのような姿勢を取った。頭の回転がいい人だから、どうすれば俺が一番興奮するか計算して、こんないやらしいポーズを取ったのだろう。計算じゃなくて、天然でやっているのだとすれば、とんだド淫乱だ。
蛍光灯の明かりの下、ローションでぐずぐずになったアナルをひくつかせながら、降谷さんは泣き出しそうな顔をしている。
早く慰めてあげたい。そう思って、突き刺すようにチンコをねじ込めば、降谷さんの顔がいっそうのことゆがんだ。慰めてあげたいんだか、泣かせてやりたいんだか、自分でもよくわからなくなって、とりあえず根元までおさまるように、ぐっと、腰をすすめた。
そういえば、今日はまだ、まともに乳首をかわいがっていなかったなとか、そんなことを思い出して降谷さんの右乳首に、かじりつく。ナカが締まって、具合がとてもいい。

「ん……あ…ぁあっ……」
「あ……ふるやさ…ナカうねってる」

降谷さんの太ももに手を添え、ぐいっと開脚させる。そして肌を貼り合わせるように体を重ねた。
しっとりと汗ばんだ褐色の肌が、吸いついてくる。降谷さんのチンコの先端が、俺の腹筋にあたって、ぬるぬるする。唇を重ねつつ、奥に向かってぐっと体を押しつけていく。陰毛が何かに触れる感触。
左手で自分の体を支えながら、右手で乳首をはじいてやれば、降谷さんは、ふうふうと顔を真っ赤にしながら、俺の舌を吸った。
そして、俺は錯覚する。俺の舌が、降谷さんにとって、とても必要なものなんじゃないかと。
降谷さんの乳首をはじく指先を、おなかの中を満たすペニス、ぺたりと吸いついた皮膚を。それらを降谷さんは必要不可欠なもとのして欲しているのではないか。
「どうぞ余すことなく、お楽しみください」そう思うと同時に、俺にとっても、降谷さんの唇や、感じやすい乳首や、ぎゅうぎゅうとしまる肉筒が、とても必要なもののように思えてきた。
セックスをしていなかった頃の俺たちは、果たして、どうやって生きていたのだろう。そんな疑問すら生まれてくる。
これほど、お互いを必要としているのに、俺達は居酒屋でセックスをしなかったし、マンションの外階段でも体を合わせることをしなかった。だが、このベッドの上であればお互いを求め合うことができる。

降谷さんが腰を揺らして、俺を深くまで誘いこもうとする。唇を離せば、降谷さんは、やっぱり泣き出しそうな顔をした。
男が見てもほれぼれするような、きれいな腹筋。そこにぱたぱたと白い液体が散る。どうも、精液が漏れ出て止まらなくなっているらしい。
果たしてこの状況でピストンしてしまってよいものか躊躇するが降谷さんは腰を揺らして、俺を見つめた。
腰をホールドし、ゆったりストロークすれば、降谷さんが首をのけぞらせ、ナカをぎゅっと締め付けた。

「かざ……み、お…く……おく……ちょうだい」

求めに応じて、今度は少し速めのストロークで奥を穿つ。
焦らしたりとか、前立腺こすりながらとか、いつもなら、いろいろ考え、降谷さんの様子をつぶさに観察しながら、行為をすすめるのだが、今日に限ってはそれが難しい。
とにかく、奥へと、それだけを考える。降谷さんのナカがうねったり、ヒダが絡みついてくるのを感じながら、とにかく奥へ。
そういうがむしゃらで、でたらめなピストンを繰り返すうち、わけがわからないくらいに気持ちよくなってきた。

「あ……はげし…っ、かざみ……かざみ」
「ふるやさん……あっ、すご……」
「おれ……へんにな…っちゃ……いそ」
「変になって……ふるやさ……おかしくなっていいよ」

降谷さんの手が空を泳いだ。俺は、それを捕まえて、降谷さんの体を抱き起し少々の無茶をして対面座位の形に持っていった。
体位を変えたせいで、お互いの動きのタイミングが少し合わない。それがすごくもどかしかった。でも、一分もしないうちに、ちょうどいいタイミングが見つかって、俺達はもっと気持ちよくなる。

「かざみ、ふか……っぃ」
「あー……きもちぃ……」

二度目の絶頂が近づいてきたのを感じて、先っぽを奥にこすりつけるようにしながら、降谷さんのナカを堪能する。

「あ……いきそ……」

その声掛けに反応するみたいに、締めつけがより一層強くなる。

「あー……はぁ…はー……」

二回目の射精は、勢いこそ一度目に劣ったが、長さはそれなりで、頭が真っ白になるくらいに気持ちがよかった。
降谷さんを仰向けに倒して、ゆっくりと性器を引き抜く。

シャワーも浴びていないし、歯も磨いていない。降谷さんの前髪は、やっぱり、かぴかぴになっていたし、身体はあらゆる液体でべとべとになっている。
降谷さんがあくびをした。俺もつられてあくびをする。それからふたり掛け布団にくるまって、リモコンで照明を落とした。

そして、キスをして、肌を合わせ、抱き合いながら目をつむる。

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