真珠は、濡れる。(風降♀)

初出:Pixiv 2021/8/21

風降♀・R-18
〇降谷さんが女性(先天性の女体化)
〇えろこめを目指してた
〇遊園地デート、パール付きのえっちな下着、観覧車、らぶほ……
〇内容はない
〇なぞの露出プレイ/潮吹き/なまなか/ほんの少しぽるちお/中途半端な♡喘ぎ


 

明日は風見とのデートだ。行き先は遊園地。
忙しい合間を縫っての逢瀬。お互いの部屋で会うことの方が多い。その方が合理的だし、当然の流れだと考えていた。しかし、風見は、時折、外でデートする機会を作った。

外でのデートは久々だ。服装も、それなりに気をつかわなければならない。部屋であれば、風見が買ってくれた、ふわもこのルームウェアを着ていればいいわけだが、遊園地にルームウェアを着ていくわけにはいかない。
では、ポアロに出る時のような、Tシャツにジーンズというような服装はどうだろうか。動きやすいし、遊園地なら、ボーイッシュな格好の女性も多いだろう。だが、今回はどうしてもスカートをはかなければならない事情があった。
以前、風見とデートした時に買ってもらった、膝上十五センチほどのスカート。なかなか着る機会がなかったし、これを履こうと思う。

『降谷さん脚がきれいだから、ぜったい、これくらいの丈の方がいいと思うんですよね。ミニってほど短くないけど、これなら脚のラインしっかり出るし』

あの日の風見の言葉を思い出しながら、試着をする。黒い無地のプリーツスカート。風が吹いたら、ふわっとめくれてしまうかもしれない。そんなことを考えて、ドキドキする。(スカートがめくれるほどの突風が吹くことなど、そうそうないわけだが)
続けて、トップスを選ぶ。Vネックのプルオーバーは、胸元がざっくり開いていてなかなかセクシーだ。だが、今回は首元までつまっている前開きのブラウスを選ぶ。どちらを着たとしても、風見は「お似合いですね」と言ってくれるに決まっているのだが、私の中に一つの打算があり、こちらを選んだ。
あとは、気温に合わせて、体温調整できるようにカーディガンを一枚。インナーは、真っ黒な無地のキャミソール。
下着については、すでに何を着けるか決めていた。
ブラは、ふりふりのついたハーフカップ。普段は外に響かないモールドカップを愛用しているが、デートの時は別だ。
限りなくBに近いCカップの胸は、風見の手の中にすっぽり納まるどころか、仰向けになると、なだらかになり、ふくらみはほんのわずかになってしまう。
蘭さんや園子さんのバストを見るたびに「なぜ……?」という気持ちがこみあげてくる。運動のし過ぎが原因かと考えたが、蘭さんだって、かなりの鍛錬を積んでいるはずだ。
自分の胸のサイズについて、とりわけの感想を抱いていなかった私だが、仰向けになった私の胸を風見の手のひらが寄せ集めるようにしてから、揉み始めたのを見た時。もしかしてこれは、ゆゆしき問題なのではないかと考えるようになった。
そういうわけで、少しでも見栄えが良くなるように、デートの時にはハーフカップブラを装着し、しっかりリフトアップする。
今回のデートに合わせて新調したブラジャーは、フロントのところにパールをあしらったリボンのチャームがついている。そして、パンツ。これについては、前回のデートで風見と選んだものをつけることになっていた。

インターネットで頼んだそれが、我が家に届いたのが三日前。『先日通販で注文した商品、宅配ボックスに入ってた』とメッセージを送れば『本当ですか? じゃあ、今度のデートの時に、つけているところを見せてくださいね』と返ってきた。

風見裕也は、堅物のようでいて、スケベな男だ。むっつりな分、質が悪いと言えるかもしれない。
こういう関係になり、風見の堅物ではない一面を知ることになった。
彼は、恥ずかしがる私を見るのが楽しいのだという。

 

 

 

俺が待ち合わせ場所に到着したのは、午前九時四十三分だった。
その遊園地はショッピングモールや映画館が併設された複合商業施設の一角にあった。
入場料は必要なく、乗り物ごとのチケットを買うか、すべてのアトラクションを無制限で遊べるフリーパスを買うかの二択になっている。
コンビニのチケット販売サービスで、フリーパス券の発行を済ませていた俺は、待ち合わせ場所の噴水前で降谷さんを待った。
予定より数分遅れて、降谷さんが姿を見せた。黒のプリーツスカートをなびかせながら、いつもよりもゆったりとした足取りで歩いてくる。
スーツもパンツスタイルを好む人だから、久々のスカートに恥じらいがあるのかもしれない。

「降谷さん」
「……すまん、少し遅れた」
「大丈夫ですか?」
「うん……」

降谷さんの脚をじっと見つめた。恋人の特権。俺にはこの美脚を目で楽しむ権利がある。その視線に居心地の悪さを感じたのだろうか。降谷さんが、足をもじもじと動かした。
上司としての降谷さんには、絶対にそんなことをしないのだが。恋人としての降谷さんには、ついつい意地悪をしてしまう。

「ところで、約束のあれ……準備してきてくれたんですか?」

俺がたずねると、降谷さんが、顔を真っ赤にしながら、こくんとうなずいた。
その仕草に、興奮を隠し切れない。
降谷さんの肩かけバッグには、二人で選んだセクシーランジェリーが入っている。

「……誰かに、見つかったらと思うと、ドキドキしますね?」

降谷さんが、バッグから、えっちな下着を覗かせてしまうような失態を犯すなどまずありえないわけだが。それでも、何かの偶然が重なれば、その可能性はゼロではない。
セクシーランジェリー専門店のネットショップで買った、白のオープンクロッチ・パール付きショーツ。それを真昼間の遊園地で人前にさらしてしまったら……なんてことを想像するだけで、興奮する。
そんなの「私は淫乱で、遊園地の後、このパンツを履いて隣にいるこの男の人とセックスします」と言っているようなものではないか。
昔から、むっつりスケベとして定評のある俺は、降谷さんがバッグにセクシーランジェリーを入れているという事実だけで、そこまでの妄想を繰り広げることができる。

「ばか……」
「すみません……でも、うれしいな。見るの楽しみにしています」

遊園地の後、近くのラブホテルで履き替えてもらおうか? あるいは、デートの途中でショッピングセンターのトイレで履き替えてもらい……いや、さすがにそれは怒られるだろうな。
そんなことを考えながら、俺は、降谷さんの手を取りエスコートを始めた。

降谷さんは、いくつかのアトラクションを却下した。
空中サイクリングは、スカートがめくれるかもしれないとか。メリーゴーランドも木馬をまたがるからだめだとか。スカートに不慣れな降谷さんは、プリーツスカートがめくれ上がることに不安を感じているらしい。
確かに空中サイクリングは、地面よりも強い風が吹き、スカートがめくれあがってしまう……というハプニングがあるかもしれない。
だが、メリーゴーランドなら大丈夫ではないだろうか。現に降谷さんよりもきわどい長さのスカートをはいた女性が、木馬にまたがって、自撮りを楽しんでいる(きっとSNS映えするのだろう)。

「降谷さん、大丈夫ですよ。横に腰かけてから脚を開けば、スカートの中が見えてしまうことはありません」
「しかし……」
「なにをそんなに恥ずかしがっているんですか?」
「別に……」
「ほら、じゃあ、乗りましょう。俺、ムービー取って差し上げます!」
「……あ、ちょっと、手を引っ張るな!」

やや強引に、降谷さんをメリーゴーランド乗り場に連れて行く。
ウェッジとはいえ、久々に高さのある靴を履いているせいだろうか。降谷さんがよろけた。俺はとっさにその体を抱きしめた。

「あ……すみません……」
「いや……その、メリーゴーランドは、ちょっと……無理だ」
「……わかりました」

事情は分からないが、なにか嫌な思い出があるかもしれない。そういえば、観覧車の中で警察学校時代の友人が殉職したという話を聞いたことがある。
そもそも、遊園地という場所自体が、この人にとっては、楽しい場所ではないのかもしれない。

「降谷さん……その、遊園地……もしかして苦手でした?」
「いや……そんなことはない。……そうだな……ジェットコースターとか、観覧車とか、ゴーカートとかなら大丈夫だ」
「え……? 逆に観覧車は大丈夫なんですか?」
「……君こそ、観覧車……大丈夫なのか?」

その言葉に、観覧車でケガをした時のことを思い出した。ケガは軽傷だったし、そんなことよりも、女スパイにしてやられたことの方が精神的に来ていたので、今の今まで記憶をすっかり封印していた。

「ああ。それは大丈夫ですね」
「そうか……それより」
「なんでしょう?」
「君は、いつまでこうしてるつもりなんだ?」

降谷さんを抱きしめたままだったことに気がつく。慌てて、身体を引き離す。おうちデートばかりしているせいか、他者の視線に対する配慮がおろそかになっていた。

「すみません……」
「別に……」

降谷さんがうつむいた。サラサラの前髪で、表情が隠れてしまっているが、恥じらっているに違いない。かわいすぎる。

「あの……観覧車乗りません?」

俺は数百メートル先にある観覧車を指さした。

「え……?」
「あ……その……観覧車って、デートの後半に乗るカップルが多いから……午前中の方が空いているんですよ」
「え……ああ」
「それに、ほら。てっぺんに行けば、人目がなくなるから……ね?」

そしたら、束の間ではあるけれど、イチャイチャできる。
その提案に、降谷さんは顔を真っ赤にしながら、こくんとうなずいた。

 

 

 

 

 

風見が、えっちであることは知っていたが、こんなにいやらしい男だとは思わなかった。
私が、例のパンツ(クロッチのところに切れ目が入っていて、さらに数珠状のパールが、陰部のくぼみに沿うように配置されている)を履いていると知った上で『……誰かに、見つかったらと思うと、ドキドキしますね?』なんて……。昼前から、とんでもなく、卑猥なことを言ってくる。
それにドキドキしてしまう自分も自分なのだが、それにしたって、いやらしすぎる。

つき合い始めて数日で関係を持った私たち。その際、風見が放った言葉が忘れられない。

『降谷さんのこと、頭の中で、何度も何度も犯してました』

いつから、私のことをそのような目で見ていたのだろうか。ただの同僚からのカミングアウトであれば、不快感を覚えだろう。しかし、相手は大好きな風見裕也だった。そんな最低な言葉に、私はすごく興奮したのだった。
どうやら、私は、マゾヒストの気があるらしい。
この年になるまで、そのような自覚はなかった。
性に対する関心が乏しかったがゆえに、自身の性的嗜好の大半は、風見との付き合いの中で知っていった。いや、もしかしたら、それらの嗜好は私自身のもともとの性質ではなく、風見裕也によって覚えさせられたものなのかもしれない。
どちらにせよ、私は、そういったことに興奮を覚えるし。風見は恥じらう私を見てよろこぶ。この言葉が適切であるかわからないが、私たちの関係は良循環で回っている。

午前十時過ぎの遊園地。
平日だが、それなりに人出がある。
電車に乗った時点で、まずいと思っていたが、スカートで隠れているとはいえ、セクシーな下着をつけているという事実は、あまりにもたやすく私に火をつけた。しかも、パールビーズは、私が一歩、歩くたびに陰部を刺激し。集合時間の十五分前に着くよう家を出たはずなのに、待ち合わせの時間に数分遅れてしまった。

このような、プレイを提案してくるなんて、風見裕也は本当にいやらしい男だと思う。そして、それに応じてしまう自分もまた、常軌を逸しているのだろう。

遊園地のゲートをくぐるなり、絶対に乗りたくない乗り物を風見に伝えてた。
スカートの中が見えてしまいそうなもの。それから、陰部を刺激するようなもの。それだけは絶対にNGだ。それ以外だったら、ジェットコースターも、お化け屋敷も受けて立つつもりである。
風見は、私が空中サイクリングを拒否したことにについては納得してくれた。スカートがめくれるリスクがあるし。何より、ペダルをこぐたびに、パールが食い込んでしまう恐れがある。
だが、メリーゴーランドに関しては、なかなか折れてくれなかった。
オープンクロッチの下着で、メリーゴーランドにまたがるということは、外性器の一部が、直接、馬の背に触れてしまうし。なによりも、この下着には、数珠状のパールがついている。
この状態でメリーゴーランドに乗るということは、人前で自慰することと同義である。しかも、風見は、その様子をスマホで撮影するつもりらしい。
最悪だ……と思うのに、反応してしまう自分の体が恨めしい。

「……あ、ちょっと、手を引っ張るな!」

体の力が十分に入らないところで、腕を引かれ、私はバランスを崩した。
風見に抱きとめられ、転倒を免れる。ふわっと香ってきたのは、風見が休みの日にだけつける香水の匂い。それは恋人の香りであると同時に、情事の記憶と深く結びついた匂いであった。
いやらしい下着を履き、朝からずっと直径1.5cmの人工パール12個の刺激を感じながら過ごしている。その状況で、この匂いをかいでしまったら、頭がくらくらしてしまっても仕方がないだろう。
私は、風見の体をふり払うこともせず、風見の体温を感じた。
そのまま、少しだけ言葉のやり取りをし、ようやく

「君は、いつまでこうしてるつもりなんだ?」

と、声をかける。
名残惜しいが、抱擁が解かれたことに安心する自分もいた。
そして、話の流れからとはいえ、風見からとんでもない提案を受ける。

「それに、ほら。てっぺんに行けば、人目がなくなるから……ね?」

……人目がない。
つまり、観覧車のてっぺんで、パンツを見せろと言うことらしい。この男は、一体、何を考えているんだろう? いやらしいことこの上ない……。
しかし、今度のデートで履いているところを見せると約束をしたのだから。それを果たす責任が私にはある。
別に……ゆっくりじっくり見せる必要はない。一瞬だけ、ぺらっと見せればいいのだ。ぺらっと。
それに、観覧車のゴンドラに座っている間は基本的に大きく揺れることはない(観覧車が車軸から外れたり、ゴンドラが落下するようなことがなければ)。となれば、ゴンドラの中にいる間、私はパールの刺激から解放される。
短時間でもいいから、この刺激から逃れたいと思っていた私は、風見の誘いに乗った。

 

 

ゴンドラに、向かい合わせに座る。
俺は、次のゴンドラにだれも乗りこんでいないことを確認すると

「降谷さん、観覧車、ガラガラですね。前後のゴンドラ空っぽだし。そっちに座ってもいいですか?」

と、声をかけた。
降谷さんは、身体をびくりとさせつつも、こくりとうなずいた。
その仕草が、かわいくて仕方ない。
唇へのキスはてっぺんまでお預けするとしても、耳へのキスくらいはしてもいいかもしれない。
シートを移動しようと立ち上がると、ゴンドラがぐらっと揺れる。降谷さんが、身をよじらせた。かわいい。
隣の席に座り、肩に左腕を回す。それから、右手の指で、髪をそっと耳にかけてやった。
小ぶりのイヤリングが揺れている。仕事の時はもちろん、お部屋デートの時も、着けていないから、わざわざ今日のために引っぱり出してきたのかもしれない。人差し指で、イヤリングのチャームをつつけば、降谷さんが俺の顔をじっと見つめる。
キスされると思っているのかもしれない。いや、キスをしてほしくなってしまったのかもしれない。

「もう……する、のか?」

そうやってたずねる降谷さんに、そっと耳打ちをした。

「それは、てっぺんでお願いします」

観覧車におけるキスとは、頂上でするものと相場が決まっている。
その瞬間が近づくまでのドキドキ。この観覧車で言えば、最高高度に到達するまでの約七分半のドキドキが、二人の恋を盛り上げてくれる。
吊り橋効果の原理だ。俺たちはすでに、おつきあいをしているが、それであっても、ブースターは可能な限り何度でも、しかけておくべきだと思う。
耳の軟骨についばむようなキスを落とす。降谷さんの体がびくびくふるえる。どうしたんだろうか? いつも以上に感度がいい。バッグの中に入っていると思しきセクシーランジェリーのおかげだろうか? それとも、このシチュエーションに何かを期待しているのだろうか?
頭のいい人だ。観覧車の中で、前後のゴンドラに人が乗っていなければ、滞空時間中の大半、腰から下のあたりが死角になるということを理解しているはずだ。つまり、この状況で、俺が仕掛けてくる可能性を考えていてもおかしくない。
だが、ここは外だ。やりすぎはよくない。と、なれば、降谷さんが許容できる範囲のえっちなことに留める必要があるだろう。
スカートの中に手を入れる……は、ちょっと危険な気がする。スカートから出ている範囲をやさしくなでてやる程度が適当であろうか。

「降谷さん、やっぱ、脚……きれいですよね」

手の甲で、太ももの前面を撫でてみる。

「やっ……だめ……あ……んっ」

二人きりなのをいいことに、降谷さんは、声を我慢しないことにしたらしい。
家の外でするプレイはほとんど試したことがなかったが、案外、素質があるのかもしれない。今度、バルコニーに日よけのタープを設置したのち、夕涼みと称して酒でも飲みながらイチャイチャしてみようかなどと考える。むっつりである俺は、安全を確保した上でのベランダでの疑似屋外プレイを妄想した。
せっかくなので、降谷さんにもその旨を伝える。

「降谷さん、もしかして……家の外で、いちゃいちゃするの興奮しちゃいます? 警察官が外でそういうことするわけにはいきませんから……今度、バルコニーにタープをつけて、そこで、えっちなことしてみましょうか?」

俺は、指先で、プリーツスカートの端をつまみ、ぴらりぴらりと遊ばせた。

「や……っ……そんなこと……しな、い……」
「そうですか……? 楽しいと思うけどな? 開放的な気分になれるというか」

などと言ってはみたものの。本心では別に、そんなことはしなくてもいいと考えている。
そういうシチュエーションを妄想してくれるだけで十分だ。むっつりな俺は知っている。えろとはイマジネーションである。快感の回路の終着点は脳であり、脳がどのようにその情報を受け取り解釈するかによって、性感の程度は変化する。
シナプスが発達した降谷さんの脳は、些細な刺激を、非常に大きな快感に変えることができる。
半年前まで、セックスを知らなかった人が、今では、触ってもいないのに下着をぐしょぐしょに濡らしてしまうのだ。降谷零の明晰な頭脳が、性の快感に支配されたピンク一色の淫乱モードになってしまう。そんなAVみたいな、幻想のようなセックスを俺たちは何度も何度も経験してきた。

右の手のひらを降谷さんのおへその下に当てた。

「ここ、じわじわしてきちゃった?」

降谷さんは、腰をもぞもぞさせぎゅっと目をつむった。
えっろ……!
よくわからないけれど、不慣れなスカートをはき、エロ下着を持ち歩くだけで、降谷さんはこんなにえっちな気分になってしまうらしい。なら、もっと短いカートをはかせたらどうなってしまうんだろうか? さすがに、外を歩かせる気にはならないが、ドライブデートの時に、きわどい丈のスカートをはかせてもいいかもしれない。そして俺は、信号による一時停止のたびに、降谷さんの太ももを撫でるんだ。

地上を出発してから五分が経過した。頂上まではまだ二分半ある。
確かこの観覧車からは、鈴木財閥のベルツリータワーが見えるはずだが、そんなことよりも、降谷さんから目が離せない。
左手で、イヤリングをつつき、唇を右耳に押し当てる。

「あと、二分半……いや、もう二分くらいですね」

右手で降谷さんの手を握った。

「う……ん……あっ……やだっ」

右耳のイヤリングの金具のふちに舌を這わせたのが、随分と強い刺激に感じられたらしい。
もともと、降谷さんは耳が弱い。しかし、今日はいつも以上だ。

「てっぺんに着くの楽しみですね……?」
「や……ぁ……楽しみ……じゃない……っ!」
「楽しみじゃないんですか?」
「は……はずかしい……」

かわいい。恥ずかしいのか。俺とキスをするのが、ものすごく恥ずかしく感じられてしまうほどに、今の降谷さんはえっちな気持ちになっているらしい。
唇を重ね合わせるだけのつもりだったが、舌を挿入しても文句を言われないかもしれない。
ただし、その場合、遊園地デートの続行は難しくなってしまうかもしれない。しかし、それもまた一興。
午前中の遊園地からタクシーに乗って、ラブホを目指すなんて……最高じゃないか。ラブホのエレベーターの中で「運転手さんにも、平日のこんな時間からえっちするなんてって思われちゃったかもしれませんね」と、囁いたとする。降谷さんは、恥ずかしさで泣き出してしまうかもしれない。

「恥ずかしいんですか?」
「ん……はずかし……い。でも、するって、やくそくしちゃったから……」
「うん……約束は破っちゃだめですよね」

かわいい。何がかわいいって「恥じらう降谷さんを見て、俺が興奮してしまう」という事実を知った上で、降谷さんが恥ずかしがってくれているということだ。
そして、俺が興奮してしまったら、どうなるかということも理解しているはずだ。

「ね……どうしよう。恥ずかしがってる降谷さん見てたら、ここ、こんな風になっちゃいました」

握りしめた手を、自身の股間に持ってくる。
降谷さんは、そこを凝視しながら、身体をビクンとさせた。

「……なんで、ここ……こんな、に?」
「だって、降谷さんがかわいいから……おっと……もうすぐ頂上ですよ……そろそろ……ね?」
「う……うん」

俺は、身体を降谷さんにむけると、その両肩に手を置いた。
降谷さんはうつむいたまま、プリーツスカートのすそをぎゅっと握りしめた。
そういえば、外でキスをしたことなんて、ほとんどなかった気がする。少なくとも、こんな性的な雰囲気の中でキスをしたことはない。
夜の公園を散歩しながら、軽くキスをするとか。車の中で、おでこにキスを落とすとか。それくらいの経験はあったが、こんな風に、双方が性的に興奮している状況でのキスを、家やホテルの外でするのは初めてだ。
降谷さんの肩がかすかに、ふるえていることに気がついて、俺は無理をさせるのはやめておこうと考えた。
唇にふれるだけ。それだけのキスをする。そして、地上に戻るまでは密着していた体を離して、一度、頭を冷やそう。

「一瞬だけにしておきましょうか」
「うん……」
「あ、あと二十秒くらいですかね? 準備はいいですか?」

極力、性的な雰囲気を排除し、声をかける。

「うん……」
「では……」

俺が、降谷さんの顎に指を添えようとした瞬間、それは起こった。

「え……?」

ぺらり、と降谷さんが、スカートをめくった。
目に飛び込んできたのは、降谷さんのバッグに入っているはずのセクシーランジェリーだった。
ほんの一瞬であったが、それは、俺の脳髄に強く焼きつけられた。永久脱毛済みのIラインが真っ赤に充血し、数珠つなぎのパールビーズは体液に濡れてしっとりとしていた。

「ほら……デートの時に、見せるって約束……ちゃんと守ったぞ」

 

 

 

風見が、そっと、向かいのシートに戻り、それから、眉間にしわを寄せながらこめかみを揉んだ。
私は、その様子に戸惑いを隠せない。風見が楽しみにしていたはずの、デート中の下着披露。それなのになぜ、風見は、浮かない顔をしているのか。

「あの……風見」
「えーっと……ちょっと待ってください。今、頭の中を整理しているところなので」

なにか、問題があったのだろうか。
下着の着け方を間違えていたとかだろうか? いや、そんなはずはない。ちゃんと、説明書の通りにはいた。
で、ないとすれば……あれ、だろうか。

「風見……その、正直に言ってくれて、構わない」
「え……?」
「もしかして……トイレットペーパーがついていただろうか?」
「……?????」

風見は、何も答えなかった。
その沈黙が意味するものは……。おそらく、図星と言うことなのだろう。
観覧車に乗る前、すでに、大量の分泌液を垂れ流していた私は、トイレでそれをふき取った。
時間がかかってしまうと、自慰行為を疑われる可能性がある。だから、私は、体液を素早く拭き取って、手を洗うなり、大急ぎで風見の元へ戻った。
そのトイレットペーパーが……残っていたとしたら。風見の心情を想像する。せっかくのえっちな下着に、トイレの名残がついてたとしたら……がっかりするし、百年の恋も冷めるかもしれない。

「風見……その、私、さっきトイレに行ったとき……おしっことかしてないから……」
「え……?」
「この下着……歩くたびに……その……食い込むだろ? 構造的に。それで……一度拭き取っておかないと……スカートにシミができてしまうかもしれないと思ったから……」
「え……ちょっと待ってください?」
「なんだ?」
「降谷さん……まさか、そのエロ下着……家を出る時点で履いてたんですか?」
「……え? だって、デートの時に着けてるところを見せるって……」

風見が、申し訳なさそうに言う。

「その……降谷さん……確かにそういう約束をしたんですけど。俺の中では、そのパンツは……降谷さんのバッグの中に入っているという認識でした」
「と……いうと? 私がノーパンだと思っていたということか……?」

頭が回らない。
自分でも素っ頓狂なことを言っている自覚はある。

「いえ……そうではなくてですね。遊園地の後……降谷さんをラブホか我が家に連れ込むつもりだったので……その時に見せてもらうイメージでした……。まさか、その……朝一から履いてくるなんて、まったく想定しておらず」

私は、絶句した。
風見のことをむっつりだ……などと思ってきたが、人のことを言えない。それどころか、私の方がよほどいやらしいことを考えていたようだ。
顔から火が出るとは、まさにこのことだろう。カーっと顔が火照っていくのがわかる。しかし、一方で、頭はすーっと冷えていった。

「あ……いえ。俺のふだんの行いが悪いというか……俺、ふだんから、降谷さんにえっちなこといっぱい言ってるし……」

無理だ……。耐えきれない。ここから逃げ出したい……! と思うが、観覧車のゴンドラから飛び出すわけにはいかない。
私の身体能力であれば、おそらく逃げ出すことは可能であるが。今の私は、ひどく卑猥な下着を身についている。
いたたまれなさで胸がいっぱいになる。

「あっ……」
「え……?」
「あの、ポケットティッシュ……あの……泣かないでください……もとはと言えば、この下着を買おうと提案した自分が悪いんで」
「ありがとう……」

風見からティッシュを受け取り、涙をふき取る。
今日は、それなりに化粧をしているから、それも気になる。

「あの……降谷さん。地上に降りたら、医務室かなんかで、休ませてもらって……。それで……家まで送ります。タクシー使って帰りましょう?」
「……やだ」
「え……?」
「まだ、お昼にもなってないのに……家には帰りたくない」
「しかし……」
「私をこんな風にしたのは君なんだから……責任もって、ホテルか……君の部屋に連れ込め」
「え……?」
「君が……こんな卑猥な下着を選んだせいで……私は、朝から大変だったんだからな……。電車に乗っている時も……ガタンって揺れるたびに……その……変な感じになるし。歩くたびに……丸いのがぐりぐりってなるし……あげく……私が、これをつけてるって気づいてなかったとはいえ……すごく卑猥なことを言われて……メリーゴーランドに無理やり乗せられそうになって……」
「ああ……すみません……」
「君だって、わかるだろ? こんな風にじわじわと、刺激されて……恥ずかしい気持ちにいっぱいさせられて……君の匂いをかがされて……そんな状況で、耳に、キスとか……その……もう……やだっ」

私は、すっごい恥ずかしかったのに。すっごいえっちな気分だったのに。体がぐずぐずになっていたのに。風見は、私の心と身体がどうなってるのか、正確には、わかってなかった。それじゃあ、一人で隠れて自慰をしていたのと同じじゃないか。
怒りと共に、また、涙がこみあげてくる。

「あ……本当に、すみません……」
「君も、恥ずかしい思いをすればいいんだ……」
「え?」
「まだ……下に着くまでは数分あるだろ? 君も……その、私と同じように、下着をここで晒してみればいいんだ……っう……わあああん……」

自分でも、なにを言っているのか、わけがわからない。
風見も戸惑っているに違いない。

「わかり……ました。その代わり、しっかり見てください」
「え……?」

風見の手の甲から透けた血管。
骨ばった指先が、ベルトを外し、ズボンの前を寛げた。

「ほら……俺のパンツ、見てください」
「かざみの……パンツ……」
「でも……これじゃあ、まだ、降谷さんと同じにはなりません」
「え……?」
「下着から、ビラビラ、ちょっとはみ出てましたから」

その言葉に、混乱する。
あの一瞬で、風見はそこまで見ていたのか……とか。それってすごくグロテスクなんじゃないかなとか。

「先っぽ……だけ、ですけど」

風見は、パンツのウェストから、性器の先端を露出させた。

「……!」
「見て……降谷さんほどじゃないけど……俺も、ぬるぬるです」

次の瞬間、私は、自分でも思いがけないことをしていた。体を前に倒し、指先で、風見のそこをつついていたのだ。

「ちょ……ふるやさ……なにを?」
「ん……」

指の腹についた、風見の体液を、ペロッと舐めてみる。

「がまんじる……」
「うん……」

風見が静かに衣類の乱れを直していく。

「君が……私に幻滅したんじゃないかと思って」
「え?」
「こんな、いやらしい下着をつけて……電車に乗って……ここまできて。その上……その……体液を滴らせながら歩いてたなんて……ドン引きだろ?」
「いや……びっくりはしましたけど……。引いたというよりは、ちょっと心配になりました」
「心配……?」
「降谷さんって、そういうモードに入っている時、体の力抜けちゃうじゃないですか? 今日も、メリーゴーランドの前でふらついてしまったのって、今にして思えば……そういうこと……だったんですよね?」
「……あ、あれは、君が急に手を引いたから!!」
「うん。そりゃあそうなんですけど。観覧車に来るまでの間も、歩行がちょっとおかしかったし。あんなんじゃ、見る人が見たら、目えつけられちゃいますよ?」
「え……?」
「電車で、痴漢とかされなかったです? そんな下着付けてたら、スカートの上からちょっと触られただけで、相手を興奮させてしまいますし。下手したら、痴漢願望ありの女って思われてもおかしくないですよ?」

その言葉に、怖くなってくる。本当に自分は、なんてことをしてしまったのだろう。
風見以外の男に、そのような触られ方をして……。以前の私だったら、簡単に相手を圧倒することができただろう。だが、私の体は、風見によって変えられてしまった。
トイレで自身の体液をぬぐったとき。それは、内腿にまで達していたのだ。

「やだ……」
「ですよね? ですから、これからは、もっとよく考えて、えっちなことをしましょうね。一人でえっちなことをするときは、お部屋の中限定。部屋以外で、えっちなことをするときは、俺の目の届く範囲でお願いします」
「わかった……」
「まあ、でも、降谷さん、自分たちの部屋とかホテル以外の場所でこーゆーことするの、わりと、興奮する体質のようですし……」
「え……?」
「今度これを履いて、一緒にカラオケとか……個室の居酒屋とかどうです? 降谷さんが我慢できなくなったら、すぐに、ラブホに移動してえっちする……とか」

やっぱり、風見は、むっつりだ。地上に着く数十秒前、涼しい顔をして、そんな提案をしてくるんだから。
泣いたことによって、落ち着きつつあった体のうずうずが、再燃する。
風見はそのことに気がついているだろうか。
きっと、気がついているだろう。私は、腰のゆらゆらを止めることができなかったのだから。

 

 

 

タクシーに乗り込むなり、俺は運転手にたずねた。

「すみません、この辺で、新しめのラブホあります?」
「ちょっと待ってください、今、無線で聞いてみますので」

この時間のタクシー運転手は、ラブホの情報に詳しくないのかもしれない。
平日午前十時四十八分。まっとうな大人は、こんな時間に遊園地からタクシーに乗って、ラブホに移動したりしない。
後部座席左。降谷さんは、カーディガンを膝の上にかけて窓の外を見ている。シートベルトを着ける時も、唇をぎゅっと噛んでいたし、スカートの中はすごいことになっているかもしれない。
運転手は、無線でのやり取りを終え。「二つあるみたいなんですけど」と、簡単にその二つのホテルの情報を教えてくれた。
ほんの数キロの移動。俺は、支払いを現金で済ませ。780円の釣りをもらうことを辞退した。タバコと缶コーヒーを買ったらすぐに消えてしまう程度の金額ではあるが、それでも、天気の話すらせずに運転に徹してくれた運転手に感謝の気持ちだ。

タッチパネル式の無人フロント。
三つあるクラスの中で、一番高い部屋を選んだ。高いといったって、平日のフリータイムは財布に優しい。それこそ、先ほどの遊園地のフリーパス券大人2人分よりも安上がりだ。
エレベーターの中で、俺は、降谷さんをからかわなかった。かわりにぎゅっと抱きしめて、背中をとんとん叩いてやった。
刺激的なプレイは、そりゃあ大好きだが、今日の観覧車で起きたことを、降谷さんはまだ消化しきれていないはずだ。あの出来事が、屈辱的な体験にならないように留意する。
俺は、恥じらう降谷さんを見るのが大好きだが、情けない気持ちに追い込むようなことはしたくない。
だが、その辺のさじ加減は非常に難しい。相手の尊厳を大事にしつつ、羞恥プレイを楽しむ……というのは、案外、高度なテクニックを要するものだ。
エレベーターの扉が開く。俺は降谷さんの腰に手を添えて、703号へエスコートした。

先に履き物を脱いだ降谷さんが、俺が靴を脱ぐ様子を眺めている。ぼーっと突っ立ったまま。
俺は、靴を脱ぐなり。その体をぎゅっと抱きしめて、それから「抱っこしてもいい?」とたずねた。

「……どうぞ」

と答える降谷さんを、抱きかかえた。お姫様抱っこなんて、ロマンチックなものではなく。ぎゅっと抱きしめて、身体をぐっと引き上げる、そういう、抱っこ。
びっくりしたのか、降谷さんが、脚をパタパタさせた。

「肩に手を回して」
「うん」

ベッドまで移動する。運搬という言葉がしっくりする、十メートルにも満たない空中散歩。

ベッドに腰を掛けるなり、俺は、自身のシャツのボタンを三つ外した。中には、黒いタンクトップを着ている。

「降谷さん」
「うん」
「お昼……食べてからにします? それとも……ここ、お風呂あるみたいだし、一人でお風呂入る?」
「……大丈夫」
「じゃあ、してもいいですか?」
「うん……そういうつもりで連れ込まれてるから……」

マットレスがきしむ音。
降谷さんを掛け布団の上に押し倒すと、俺はズボンと靴下を脱いだ。
ベッドに投げ出されたきれいな脚。降谷さんは、むすっとしながら、そっぽを向いていた。

「降谷さん」

俺も、隣で仰向けになる。

「……なんだ?」
「好きですよ」

そっと、左手の甲をさすれば、降谷さん細い指が、俺の右手を握った。

「うん」
「俺のために……下着、履いてきてくれたんですよね?」
「……うん」
「びっくりしましたけど。少し、複雑な気持ちもあるにはあるんですけど……でも、うれしかったです」
「……そうか」

降谷さんの右太ももに、俺の脚をぴたりとくっつける。

「ねえ、降谷さん」
「……ん? なんだ?」
「スカートめくって、パンツ……見せてください」

 

風見の太ももに生えたふわふわの体毛を、肌に感じた時。私はとてもドキドキしていた。
好きと言われて、手をつないだ。そして、触れあう素肌。
それだけでも、顔が熱くなってくるのに。
スカートをめくってくれ……なんて、言われたら。見せてあげたくなってしまう。

「……はずかしい」

そう言って、風見の手をぎゅっと握る。
風見は、なにも言わず、私の顔をのぞき込んだ。その顔が、本当にうれしそうで。私は、ますます恥ずかしくなる。

「でも……それ、俺のために履いてきてくれたんですよね? だめ? すげえ見たいんですけど」

風見の左手がスカートの裾に伸びてくる。
めくられてしまうんじゃないか。そんな予感に身をよじらせたが、風見はスカートをめくってくれない。

「お願いです。ね?」

風見はあくまでも、私自身が自主的に、下着を見せるのを待つつもりらしい。

「だめ、ですか?」

そうやって、ささやく声は、ひどく甘ったるく。だけれど「見せてもらえない」可能性については微塵も考えていないような、自信にあふれた声だった。
私は、右手でスカートのすそを掴んだ。スカートの丈が、とても短いようなものに感じられ、改めて、この服装を選んでしまったことへの自己嫌悪が高まる。
冷や汗が出てくる。私はぎゅっと目をつむった。

「降谷さん?」
「……自分の馬鹿さ加減にちょっとあきれてるところだ。少し待っててくれ。気持ちの切り替えがついたら、ちゃんと……見せてあげるから」
「……ちょっと、失礼します」
「え……?」

やや強引にベッドの上で転がされる。強制的に寝返りを打たされ、体が右向きになったところで、風見が私の背中にぴたりと貼りついた。
後ろから、風見がささやく。

「……馬鹿さ加減、というのは?」

その声には、私を揶揄するようなニュアンスは、少しも含まれていない。

「私……日の高いうちから、こんな下着を着けて、長いとは言えない丈のスカートをはいて、街を歩いた」
「うん……」
「どう考えても、正気じゃないだろ?」
「……そうですね。でも……降谷さん、俺がよろこぶと思ったから……この服装で家を出たんでしょう?」
「……うん。だが、君は、びっくりして、手放しでは、よろこばなかった……」

そこまで言って、涙が込み上げてきた。
そうか、私は期待していたのか。自分の行動で、風見がよろこんでくれることを。

「褒めてくれなかった」

私は、風見に、いつもみたいに。「すごいね」「えっちですね」「本当にかわいいね」って。そんな風に、褒めてもらいたくて仕方なかったのだ。

「……ほかの男に、これを見られるかもしれないというリスクを冒した……という点を除けば。俺は、すごくうれしかったですよ」
「白々しい」
「このスカートを選んだのも、俺に、きれいな脚を見せるためですよね? 俺、降谷さんの脚……大好きだから。うれしかったです」
「それだけか?」
「シャツ……前開きのブラウス。これは、俺の思い上がりかもしれないけれど、これを選んでくれたのも俺のためですよね? 俺が、ボタン、一つずつ外すのが好きって言ったから。いや、そうじゃなくても……ふだん、ボーイッシュな降谷さんが……こういう少し甘めな服を選んでくれたの、特別って感じがしてすごく嬉しい」
「ふーん」

私は、もぞもぞと動いて、風見の方に体を向けた。

「……ほら、ボタン、外していいぞ。君、好きなんだろ?」
「よろしいんですか?」
「どうぞ」

にっこりとほほ笑みながら、風見が、私のボタンを一つ外した。

「あー……なんか、ドキドキします……」
「そうか?」

二つ目のボタンが解かれる。

「ええ。だって、降谷さんのシャツを脱がすことのできる男は、この世で俺だけなんですから」
「そうだろうか?」

三つ目のボタンが外れる。風見がやや鋭い目でこちらをにらんだ。

「……そういう冗談は好きじゃないです」
「……君、もしかして、嫉妬深いタイプか?」
「……嫉妬深い男は嫌いですか?」
「さあな? だが、まあ、かわいさあまってなんとやら……と言うからな。なるべく、嫉妬はさせないように善処する」

四つ目のボタンが外れた。

「そうしていただけると助かります。あなたをかわいがることが、今の俺の生きる楽しみなので」

五つ目ボタンが外れる。

「ちょっと失礼します」

風見は、シャツのボタンを一つ残して、スカートからキャミソールの裾だけを引っぱり出した。それを、首元までたくし上げる。
それから、人差し指の腹で、へその周りをぐるりと一周し

「すごい……きれい」

とつぶやいた。

「……どこが?」
「おへそと……あと、ウェストのライン。とってもきれいです」

風見の左の手のひらが、私の腹部をやさしくなでた。

「それだけか?」
「……ブラジャー。これ、かわいいですね」

指先で、チャームをつんつんとつつかれる。

「もしかして、ショーツと合わせてくれたんですか?」
「さあな……?」
「ふふ……このブラ、ひらひらが、たくさんついててかわいい」
「……君、フリルとか、レースとか……そういうの好きだよな」
「単純な男ですからね。そういう、女性らしい記号が、大好きなんですよ」

風見が、私の腰に自身の下半身を押し当てた。

「ほら……ね?」
「……君は、すぐに、そこを大きくしてしまうな?」
「そりゃあ、降谷さんの前では、そうなりますよ。以前から、仕事中も、危ないことはあったんですが……あなたと、こういう関係になってからは、綱渡りの日々です」

私は、パールの凹凸に刺激され、自身の性器に気を取られながら歩いていたあの時間を思い出した。

「私とちがって、そういう下着をつけてるわけではないのに……君は、普段の生活の中で、ここを意識してしまうのか?」
「ああ……たしかにそうですね。俺、あなた限定で……すっごい、すけべなのかもしれない」
「本当に私限定か?」
「うーん……まあ、男って、ほら……反射的にそうなることがあるから……」

風見が笑う。

「……私も、君ほどではないが結構、嫉妬深いのだけれど……」
「嫉妬してくださるんです?」
「ああ」
「うれしいです」

キスをされる。私は、風見の頭をぎゅっと抱きしめた。
舌を絡ませ合う。下腹部のあたりに風見の硬いものを感じた。そんなわけないのに、その圧が、パールの凸凹を通して、伝わってくる気がして、腰が揺れてしまう。
胸のあたりで、風見がせわしなく手を動かした。右肩が軽くなり、シュルっと音がする。ブラのストラップを外されたのだと気がついたときには、風見は既にもう片方の紐に指をかけていた。
自分でも思いがけないほどに、舌が大きく動いた。

「ん……んんっ……んんん……」

風見が、私の舌をジュウジュウと吸いあげる。
左の肩ひもが外された。ブラの中に、ごつごつとした手が入りこむ。両手で胸の先をつままれ、身をよじれば、数珠つなぎのパールが思いのほか深く、溝に食い込んだ。
体から力が抜けていく。唾液がとろとろと流れ出ていく。
じゅっ……じゅっ……という音。風見が、私の唾液をすすりあげる。声を出したいのに、キスでふさがれているからそれができない。
ぎゅっと、胸の先を押しつぶされる。
たまらず、酸素を求めて、キスから逃れれば、自分でも信じられないほどに甘い声が飛び出した。

「あ……っあ……いや……あん……んん」

風見の頭が私の腕から逃げていった。そして、ふたたび、体を仰向けにされる。風見は、私の上に覆いかぶさるなり、れるり……と、乳房と乳房の間。胸骨の上の皮ふに舌を這わせた。
ぞわぞわっとした感触。肌が粟立つようだ。大きな手のひらが私の胸をやさしく包む。体の中心が、甘く、しびれ始めた。真珠の凹凸。とろとろしたものが出てきているのがわかる。きっと、人工真珠は私の出した液体で、ドロドロになっていることだろう。
風見の舌が、胸骨を遡上し、鎖骨に至った。薄い皮ふの上にキスを落とされる。
掛け布団のシーツをぎゅっと掴む。
風見は、私の胸をブラジャーの上から揉んでみたり、直接触ってみたりしながら、こちらの様子をうかがっている。
眼鏡のレンズの向こうにある、切れ長の目。視線がバチリと合う。胸の先を指の間で挟まれた。私は唇をかみながら、風見をにらんだ。

「降谷さん……すごく、かわいい。だから、お願いします。俺に、えっちな下着……見せて?」
「……どうして、そんなに見たいんだ?」
「……さっき、観覧車でちらっと見せてくれたでしょ?」
「……うん」
「一瞬しか見れなかったけれど、すっごい……すっごい、えっちでかわいかったから」
「……かわいいか?」
「うん。かわいいし、きれいだった」
「見て、どうするんだ?」
「そうですね……触りたいし、舐めたいし、匂いをかぎたいですかね」

何言っているんだ……こいつは? そう思うのに、たぶん私は、人工パールを、さらに、しとりと濡らした。

 

 

「……触って、舐めて、匂いをかぐだけか?」
「……え?」

俺が、きょとんとしながら、手のひらの中の胸を撫でると

「意味が分からないならいい」

と、言って、降谷さんがむくれた。

「……よろしいんですか?」
「……なにが?」
「……その、挿れても」
「……同じことを言わせるなよ。了承済みだから、私はここに連れ込まれたんだ」

俺は、首を伸ばし、降谷さんの唇に一つキスを落とした。
それから体を起こし、降谷さんの膝を九十度に折り曲げる
スカートの生地が重力によって、きわどい位置までスライドし、俺はドキドキを抑えることができない。

「……お願いします」
「……なにを?」
「降谷さんが、俺のために履いてきてくれた、えっちな下着。見せてください」
「それだけ?」
「……ふふ」

少し笑ってしまう。
小さな子供みたいだ。いや、もしかしたら本当に、この人の中にはまだ、幼い子供の頃の「だれかに自分を見てほしい」という欲求が満たされぬまま留まっているのかもしれない。

「……笑うなよ」
「かわいい降谷さんの、とっておきの場所、俺に見せてください」
「……とっておきの場所?」
「そう。俺だけが知っている。特別な場所。俺のことをすごく気持ちよくしてくれる、とても、すごい場所」
「……なんか、微妙に引っかかる言い方だな?」
「そうです? 名器って言い方よりはよくないですか?」
「……まあ」

降谷さんが、腰をもぞもぞ動かした。
もうひと押しかなと思いながら、スカートの中に手を入れ、太ももの外側をさする。

「ね……お願いします。見せてくださいよ。大好きな降谷さんの、大事な場所」
「……しかたないな」

降谷さんは豪快にスカートをめくって見せた。
もったいぶらないところが、かわいいというか……なんというか。スカートのウェストからは、ブラウスの裾がちらっと見えた。
それから、オープンクロッチのパンツ。その、白いレースは、触らなくてもぐしょぐしょになっているのがわかるほどに、水分をはらんでいる。
降谷さんの割れ目に、ぴったりと寄りそう、数珠つなぎの真珠。その脇から、充血して真っ赤になった薄いびらびらが、ちょこっとはみ出していた。

「……降谷さん」
「な、ん……だ?」
「すっげ、きれい……です」

クリトリスの上にあると思しきパールをツンとつついた。

「ふ……あ……っ」

ほんのわずかにしか、触れていないのに
呼吸する音は、ずいぶんと悩ましげだ。
トントントンと叩いてみる。

「あ……やっ……んん」

半年前まで処女だった人が、こんなことになってしまうなんて、一体だれが予想しただろうか。
正直、むっつりスケベの俺だって、ここまでは求めていなかった。それなのに、この人は、俺の予想や期待をはるかに超えて、大変な敏感体質になってしまった。

「降谷さん、感じるの上手ですね。トントンするの気持ちいい?」
「あ……っ……んん」

スカートの生地をぎゅっと握りしめながら、降谷さんが、コクコクとうなずいた。

「かわいい」

そう言いながら、指を、真珠と陰核の間に滑り込ませる。愛液でぐちょぐちょになったそこは、とても、すべりがいい。コリコリのクリトリスを撫でてやれば、降谷さんの体がはねた。
半年前まで、皮をかぶって、縮こまっていたここは、いつの間にか立派な突起に成長してしまった。皮がむけるようになるまで、ベビーローション付きの綿棒で丹念にかわいがっていた日々が遠い昔に感じられる。
手塩にかけて育てた甲斐あって、今では少し触っただけで、敏感なしこりが顔を出す。
だから。もしかしたら。今日は家を出た時からずっと剥けたままだったかもしれない。
自身に置き換えて考える。露出した亀頭を何時間にもわたって刺激され続けたら? 拷問だ。
言葉の取り違えによる事故とはいえ、降谷さんには悪いことをしてしまった。

「降谷さん」
「ん……あ……なに?」
「ごめんなさい。ここにずっと、これが当たってたんですね?」

指を抜き。人工真珠をクリトリスに押しつけるようにプッシュする。

「あ……や……だ、強いっ……」

クリトリスの上の真珠に連動して、数珠つなぎのパールが、降谷さんの割れ目を数ミリほど移動した。

「あ……」

ひくんと、入り口のあたりが収縮したのが見えた。

「すっごい……。もしかして……今日、ずっと、ぴくぴくさせてたんですか? 自分でもわかりましたよね? オマンコがぴくんってなったの」
「……なってない……!!」
「そうですか? ヒクンってなって、とろって……ちょっと白く濁ったやつが出て来てますが?」

ビーズの下に指を滑り込ませ、降谷さんの、穴に人差し指を突っ込む。

「やっ……あ、あっ……」

外性器ばかりを刺激されている間、そこは、ずっと触られることを待ちわびていたのだろうか。降谷さんのえっちな穴が、俺の指にきゅうきゅうと吸い付いた。

「すっごい……ここ、トロトロなのに、キュウキュウって締め付けてくる……こんなにきつくて、俺のチンコ入りますかね?」

その言葉だけで、おそらく、挿入の衝撃を思い出したんだろう。また、降谷さんの体がはねた。

「ゆうや……れいって呼んで?」

降谷さんのおねだり。

「いいんですか? まだ、ハメてないですけど?」

名前を呼び合うのは、繋がっている時だけ限定というのが、暗黙の了解だった。

「……うん」
「それとも、あれですか? もうハメてほしい?」

指を二本に増やし、なかをじゅぼじゅぼとかわいがってやる。

「あ……っ……あっああ、ゆ……うや……はげし……」

指の出し入れに合わせて、ビーズが前にずれたり後ろにずれたりしている。頭のいい降谷さんであっても、刺激を処理しきれなかったかもしれない。

「あ……♡ すき……ゆうや……す……き……もっと、もっとして……♡」

セックスの終盤ならともかく、前戯の段階で、快楽を求めて喘ぐことはめずらしい。

「すごい……れい……今日は、いつもよりえっちだ……すっごくかわいい」

手マンする指はそのままに、降谷さんの股間に顔をうずめ、真珠と割れ目の間に舌を滑り込ませる。

「あ……♡ なめちゃ……や……あっあ……」

なぜか、降谷さんが、スカートの生地を俺の頭に被せた。もしかしたら、この状況に対する、精一杯の抗議だったのかもしれない。だが……はっきりいって逆効果だ。

――えっちな下着をつけてる彼女のスカートの中で、オマンコをかわいがってやる。

むっつりスケベの俺にとっては、大変にありがたいシチュエーションだ。
なんていうか濃い。匂いも。味も。すっごく濃くて、それだけで、チンコが痛くなるくらい、興奮してしまう。

べちゃべちゃ、じゅるじゅる音を立てながら、えっちな分泌液を舐めとっていく。

「や……やだ……あ♡ じゅるじゅる……しない……で……はずかし……」

そんなことを言うくせに、腰を前につき出し、クリトリスを押しつけくるのだから、説得力がない。
中に突っ込んでいた指を、じゅぼんと引きぬき、舌をそちらにスライドさせる。鼻の頭にビーズが当たって邪魔だ。仕方なく横にずらした。
舌を硬くとがらせ、中に突っ込む。甘酸っぱい味が広がり降谷さんが悲鳴を上げた。

「だめ……しゃわ……してないのに……あ……あっ……ああん」

シャワーをしていないここに、舌を突っ込んだり這わせたりするのは、そうめずらしいことではない。しかし、降谷さんは、毎回毎回、恥かしがる。とはいえ、恥ずかしがるわりに「やめてくれ」とは言ってこないので、今後も続けていくつもりである。
ビーズをずらしたことによって、今度は、クリトリスに、鼻や眼鏡のフレームが当たってしまう。
初めて、クンニをしてあげた時のことを思い出す。ドロドロになってしまった俺の眼鏡を見て、降谷さんが、弁償したいと申し出た。新調する必要はないことを伝えた後「それとも、俺がこの眼鏡してると、思い出しちゃいます? 舐められた時のこと」と、からかってやったのだが、あの時の降谷さんは本当にかわいかった。そんなわけがないと言いながらも、顔を赤らめて、体をふるふるさせていた。

舌を抜き出し、溝に沿って上へたどっていけば、ぷっくりとしたクリトリスにたどり着く。ちゅうっと吸い上げれば、降谷さんが脚をじたばたさせ、掛け布団の上のベッドスローがくしゃりとゆがんだ。
初めてえっちした時は、布団の中じゃなきゃ嫌だとだだをこねたこの人が、掛け布団の上で、オマンコをぐしゃぐしゃにさせて喘ぎ声をあげている。処女だったころの降谷さんに、この様子を見せたら、びっくりして泣いてしまうんじゃないだろうか?

それなりに知識はあっても、自慰の経験すらほとんどなかった、あの頃の降谷さんは、本当にかわいかった。
だけど、俺のために、えっちなパンツを履いて、電車に乗り、遊園地を歩き、内腿までびしょびしょにしてしまう今の降谷さんもかわいらしくて仕方ない。

「あ……ちゅうちゅう……だめ♡ ……そこ……吸っちゃやだ……あ♡」

気持ちいいくせに……と思いながらも、「だめ」と言われたので、吸うのを中断する。かわりに、前歯の裏に引っ掛け、軽くかんでやった。

「だめ……ゆーや……それ……つょ……つよいよお……だめ……だめえ……だめだ……ゆうや……だめ、だめ……きもちよすぎちゃ……うよお♡」

説得力のない声色。
とはいえ、あまりいじめ過ぎるのもよくない。クンニを中断し、スカートの中から脱出した。降谷さんの顔を見つめる。頬は真っ赤に染まっていて、青い目からは涙がこぼれ落ちていた。

「れい」
「ん……? ゆうや?」

降谷さんがこてんと首を傾げた。

「すごく気持ちよさそうになってますね……。スカートの中もぐしゃぐしゃだけど、お顔もぐしゃぐしゃになっててかわいい」
「や……やだ……かわいくないだろ? それ……メイクだって……」
「かわいいですよ。すごく、えっちな顔になってて。……うれしいな。付き合う前は、降谷さんはきっと、えっちなこと嫌いだろうなって思ってたんですけど……嫌いどころか、えっちなこと大好きになってくれてうれしい」
「べ、つに……大好き、とかそういうのはない」
「そうですか? じゃあ、えっちなこと好きじゃなくてもいいんですけど……すごく、いやらしい体で……」
「やらしいとか言うな……! 君の方が、よっぽどやらしいだろ? こんなパンツを僕に買い与えて……」

性器への刺激が中断したせいだろう。降谷さんは、ほんの少しだけ冷静さを取り戻したようだ。きりっとした目つきで、俺をにらんでくる。
俺は降谷さんに寄り添うようにして横になる。スカートの中に手を入れ、横にずらしたままにしてあった真珠の連なりに指を引っ掛け、ピンとひっぱりながら中央に戻した。

「あ……っ……そこ……、びんかんになってるから……」

噛んだばかりのクリトリスはきっと真っ赤に腫れ上がっていることだろう。
降谷さんは、両脚をぴんとさせながら、ぎゅっと息を止めた。この前のセックスの時、最近オナニーをするようになったことを白状させた。この様子からして、スタイルはきっと、脚ピンだろう。

下着とパールビーズのジョイントの部分を掴み、勢いよくそれを引き上げた。

「や……あ……あ……だめ……そこ……だめ」

指の力を抜けば、ビーズがぬるりと元の位置に向かって動いていく。

「ああ……ん……」

再びビーズひっぱりあげる。外性器の、複雑な構造に真珠が引っかかるのだろう。するんとはいかない。

「これ、ひっぱると、ごりごりする?」
「ん……ごりごりする……」
「ひっぱったあと、戻すときは? どんな感じ? こっちもごりごりですか?」
「ん……わかんな……ああっ……」
「こーやって、強く引っ張ってごりごりすんのと……」
「あ……ゆ……うや……ああ……」
「こっちの。ゆーっくり戻すときとどっちが気持ちいいですか?」
「んん……わかんな……ああ……んん」

俺は、手を止めた。

「あ……ん……っふ……」

無意識なのか、意識してなのか知らないが、降谷さんは腰を小さくゆすり、エロ下着でオナニーを始めた。

「ちょっと……セックスの最中のオナニーはダメですよ」
「……してな……い……」
「腰ゆすって、ビーズにオマンコこすりつけてるじゃないですか……まったく、無意識でやってるんですか? えっちな人だなあ」
「あ……っ……だって、君が……手を止めるから……つらくて……」
「なんでつらいの?」
「もど……かしい」
「そうですか。じゃあ、ごりごりとゆっくりだったら……ごりごりの方がよかったですかね?」
「まあ……強いて言うなら、ごりごり……だな」

セックスの最中に照れ隠しで「強いて言うなら」なんて言葉が出てくる女。降谷さんが初めてだ。口にはしないが、こういうちぐはぐさが、かわいくて仕方ない。

「わかりました、ごりごりですね」

俺は降谷さんの体をくるんと、ひっくり返し、うつぶせにさせた。そして、腰を持ち上げる。
セックスの時の降谷さんは、俺に従順だ。真面目と言った方がしっくりくるかもしれない。
今日だって、中途半端に乱した衣類を、自分で整えることも、逆に取っ払ってしまうこともせずに、そのままにしている。こういったことに、正解なんてありはしないのに。まるで、俺の期待に正しく答えようとしているみたいだ。

降谷さんの横で膝立ちになる。白いレースのオープンクロッチに、大粒のパールビーズ。フロント側からの眺めも絶景だったが、後ろからの眺めも、素晴らしい。
小さな面積の布は、降谷さんの立派なお尻を隠さない。純日本人ではなかなか見られない、真ん丸のお尻。美しいチョコレート色の肌は、アナルのあたりを中心に、愛液で濡れそぼっている。
割れ目にぴっとりと吸い付いた、真珠の連なり。俺はその端と端をつまんだ。
俺の行動を先読みしてのことだろう。降谷さんは、枕を手繰り寄せ、それを口元に押し当てていた。

 

 

うつぶせにされて、お尻を天井に向かって突き上げる。
風見はこの姿勢をとった私の女性器を舐めるのが好きだ。だけど、今日は舐めるわけではないらしい。真珠の通った紐。風見は、その前と後ろの端を指でつかんだ。

『わかりました、ごりごりですね』

風見のセリフがリフレインする。
私はとっさに、枕を引き寄せ、そこに顔をうずめた。

「行きますよ」

宣言したくせに、風見はすぐには動かさない。この男の、こういう所が、大嫌いで大好きだ。
こうした方が、私が気持よくなるのを知っていて、わざと焦らしている。あそこがジンジン熱くなる。焦らされた後にやってくるものを、私の体はすでによく理解していた。
まだかまだかと、待っているが、風見は一向に動いてくれない。私が、腰をふってねだるのを待ってるのかもしれない。だが、その手には乗らない。

「するなら……はやくしろ……」

口頭で、行為の開始を促せば、風見がそれを勢いよく、前方に引っ張った。

「ん……っ」

枕に口を押し当てて、どうにか声が出るのをこらえるが、通過していったばかりのビーズが、今度は勢いよく後ろに下がった。前に、後ろに。ビーズの凸凹が、敏感な場所をえぐりながら素早く移動していく。

「あ……っああ……っ…あ……あ……っだめ……はやい……っ」

抗議したところで、ゆっくりしてもらえることはないだろう。そう思いながら、激しめの刺激を受け入れる。
だが、予想に反して、風見は、それをゆっくりと動かし始めた。

「ん……? ゆっくりがいいんですか?」

ぬるり、ぬるりと、丸い凹凸が前後していく。
ゆっくりだったら、刺激が弱くなるかといえば、そう単純なものではないらしい。
これは、風見とのセックスで学んだことだが、ゆっくりと刺激されたほうが、感覚が研ぎ澄まされてしまい、刺激をつぶさに拾ってしまうことがある。
今がそれだった。

「あ……あ……あー……っ……んん……だめ……あ……」
「だめ? ゆっくりにしたんですけど?」
「ゆっくり……は……だめ……あ……んんん……なんかきちゃう」
「んー……? イってもいいですよ? ……それにしても、すごいですね……膝のあたりまで、垂れてる」

気持ちいい刺激に、風見のいやらしい言葉。鼻息まじりの声から、彼の性的興奮が伝わってきて、体の中心がぞくぞくしてきた。

「や……あ……あ……ゆっくり……やだ……」
「じゃあ、こっちの方がいいです?」

ビーズが素早く往復する。

「あああ……っあああんん……ん……ああ」

感覚が過敏になったところで、激しいごりごりを与えられ、腰のあたりがふわふわし、膝ががくがくしてきた。それなのに、風見はビーズでごりごりするのをやめてくれない。

「や……あああ……やだ……やだああ……いま……い……っ……ああん……だめ……いってる……いってるからあ……」
「いいですよ。ずっとイってて?」
「や……やああ……ああ……」

体がピンとなって、それから、くたっとなる。
そこで風見がようやく手を止めた。

「すっごい、かわいい……」

体を仰向けに返され、胸を揉まれ唇をふさがれた。
いつの間にか、眼鏡を外していたらしい風見が、キスの合間に、私の目をのぞき込んだ。細長の目に小さな瞳。時々、すごく意地悪に見えるそれは、今は、とてもやさしい。
ちゅっ、ちゅと、風見が私の唇をついばむ。胸を包み込む手のひらは、あたたかく、やわらかで、達したばかりの私の体をねぎらうようだった。
でも、ときどき、つめ先で、先端をつついてきたりして、風見の手つきは優しいのに意地悪で、意地悪なのに優しい。セックスの時だけの、風見の意外な一面。
付き合う前は、真面目一辺倒で、面白みのない堅物だと思っていたが、実はそんなことはなく。私を抱くときの風見は、少年のように好奇心に満ちた表情で、この体に触れる。

「ん……っゆうや……」

いい加減、君を直接くれないか? そんな気持ちで、キスの合間に名前を呼べば。

「ちょっと待ってくださいね」

風見が私から離れようとした。
おそらく、避妊具をつけるためだ。
私は、低用量ピルによって、自身の性周期を完璧にコントロールしている。だから、信頼のおけるパートナーとのセックスの際、その配慮は不必要なのだが、風見はいつもゴムを着けて行為に至る。
理由を聞いたことはない。あれだけ、私の体にいろいろ施しておきながら、ここで堅物さを発揮するのか……と思ったりするが「ピルを飲んでるからつけなくていい」なんて、そんなセリフ。言わなくて済むものなら、言わないままでいたい。
だが、半年前まで、処女だった私でも知っている。
多くの男性は、それをつけずにした方が気持ちいいと感じるらしいことを。
今日は、伝えてみようかなと思った。
いやらしい下着をつけたまま、街に出てしまったことに比べたら「つけなくていい」と伝えることぐらい、なんてことないように思える。

「それ、しなくても、大丈夫だ。打ち明ける機会がなかったが……実は私はピルを飲んでいる」
「ああ、知ってますよ。洗面所の小さい缶に入っているやつですよね?」
「……知ってたのか???」

なら、なぜ? 君はいつも、避妊具をしてから私の中に入ってくるのか?

「ええ。なんなら付き合う前から、気づいていました」
「そうか……。では……その。君が、現在、泌尿器科にかかるような病気をしていないのであれば……つけなくても、大丈夫なんだが?」
「ああ……そっちは、大丈夫なんですけど」
「なんだ? 私が何か病気を持ってるとでも?」
「いえいえ。 そうではなくてですね」
「じゃあ、なんだ?」
「ゴムしてれば、外れたり破れたりしないように気をつけるじゃないですか?」
「え……なんだ……? 話が見えてこないんだが?」

しかし、なんだかとても、嫌な予感がする。

「降谷さん……俺としかしたことないし。ただでさえ、俺の……無駄にでかいし。あんまりね……無理はさせられないじゃないですか?」
「……え?! ちょっとまって、君、まさかとは思うけど……あれで手加減してたのか?」
「まあ……手加減というか……。うん……そうですね」

なぜか悔しい気持ちになった。
経験不足などを理由に、手加減をされていたこと。風見は、もしかしたら、十分には気持ちよくなっていなかったかもしれないということ。

「君……それで、ちゃんと、気持ちいいのか?」
「気持ちいいには、気持ちいいですよ」

なんだ、その煮え切らない言い方は。
負けず嫌いに火がついた。
私ばっかりが、いつも、わけわからないくらい気持ちよくなっていて、一方の風見は、余裕を残した状態だったなんて。

「手加減しなくていい」
「ですが……」
「手加減するな……!」

風見は少しの沈黙ののち「後悔、しないでくださいね」と、囁いた。
その声に、きっと、真珠が濡れたことだろう。

 

ゴムありを選択してきた理由は、いくつかあった。
不規則な生活をしている降谷さんがピルを飲み忘れているかもしれないとか、ローション付きのゴムを使った方がナマでするより性交痛が起こりにくい場合がある、とか。
もちろん、先ほど述べたように、リミッターとしてつけているというのも事実ではある。
俺だって男だ。降谷さんを直に感じたいと思うし、抜かずに何回いけるか挑戦してみたい気持ちもある。
しかし、彼女は、半年前まで、処女だった。
それも、自分で指を入れたことすらないような、まっさらな体をしていた。
そんな相手に、いくらピルを飲んでるとはいえ、中に出すというのは、少し酷ではないかと考えていた。
だが、降谷さんは、ナマでの行為を求めている。
おそらく、自分が気持よくなりたいというよりは、俺をよろこばせたいが故の発言だ。
俺の恋人は、なんてかわいいんだろう。唇をキスでふさぎながら、俺は再び、降谷さんの下着に手を伸ばした。真珠の連なりを横にずらす。キスを中断し、そっと前髪をなでてやると

「ゆうや」

降谷さんが俺の名前を呼んだ。それは、入れていいという合図に違いなかった。

俺のせいで、降谷さんはずらし挿入を普通の行為だと勘違いしている節がある。
つき合い始めの頃に俺が言った「いきなり丸出しにして、セックスするのは恥ずかしいでしょ?」という戯言。それを、鵜呑みにした降谷さんは、セックスにおける最初の挿入で下着を脱がそうとすると、むしろ、たいへん恥ずかしがる。
勉強家の降谷さんのことだから、そのうち、ずらし挿入の方が上級者向けの行為という真実にたどり着いてしまうだろう。だが、本人が気がつくまでは訂正しないつもりだ。
真珠によって、朝からずーっと刺激を受け続けてきた、降谷さんの割れ目。俺は、自身の下着を下ろすと、亀頭を使って、丹念にそこをなでてやった。

「あ……ゆうや……」

セックスで緊張するのは久しぶりだ。
降谷さんが、慣れていない頃は、痛がったり怖がることが無いように、慎重にことを進めてきた。しかし、最近はだいぶ慣れてきたので、リラックスして行為に臨んでいた。

亀頭で、降谷さんの形を感じる。熱さや、とろとろが伝わってきて、たまらない。

「あ……っあ……あん」

先っぽで、クリトリスをつついてやる。いつも通りの行為なのだが、降谷さんの喘ぎ声はいつも以上に甘やかだ。
こりこりのクリトリスに、自身の尿道口を押し当ててみる。

「れ……い……っ」

気持ちいい。

「あ……ゆ……や」

降谷さんが、俺の首に腕を回してきた。とんとんと、クリトリスをつつく。額から汗が出てくる。

「とんとん気持ちいい?」
「ん……きもちいい……けど」
「けど?」

チンコを移動させ、入り口の周りのひだをツンツンとつつく。

「あ……あ……んんん。いじ、わる……しないで」
「れい……」
「ん……ん……」

降谷さんの穴がひくひくとして、俺を誘った。

「俺、緊張してます……」
「……だいじょうぶ、だから……きて……」

挿入の直前。降谷さんが、身体をこわばらせてしまうのを知っている。痛いとは言わないが。やはり、俺のものを受け入れるには、それなりの苦痛が伴うはずだ。
だけど、今日の降谷さんはにっこり笑って、俺の背中をポンポンと叩いた。
本当に。この人には、かなわないなあと思う。

えっちな意地悪をして、身体でいろいろなことを教えてあげた。せめて、セックスくらいは、俺の方が優位でありたいと願った、ちっぽけなプライド。

そんなプライド、どうでもいいと思えるほどに、今、俺は降谷さんのことを愛おしく思い。そして、ぐちゃぐちゃに抱いてやりたいと思った。

「好き、ですよ」
「うん……私も、好きだ……っあ…え…………ふ……あ」

降谷さんの入り口に、先っぽを押し当てる、
先端の一番太い場所が通過するには、時間と、ほんの少しの工夫が必要だ。

「……力抜いて? 押し戻されちゃう」
「ふ……ふー……んん……んんっ?!」

右手で、左側の乳首をぎゅーっとつまんでやる。なかなか認めてくれないが、反応を見る限り、右よりも左の方が感じるらしい。

「ん……んん……ふっ……あ……」

ぐーっと、圧をかけながら、穴を押しひろげていく。乳首を引っ張ったり、はじいたりして、気を紛らわしてやろうとするが、むしろ逆効果らしかった。抵抗は強まるばかりで、抜けなくなったらどうしようという不安がよぎる。
いったん後ろに引き、入り口のところで、一センチ程度のピストンを繰り返す。

「あ……あ……ん……♡……ゆうや……きて……っ」
「うん……ちょっとずつね」

緊張すると体がこわばってよくない。俺は、手のひらで、降谷さんの太ももをやさしくなで、首筋に舌を這わせた。
穏やかな刺激が功を奏したのだろうか? 降谷さんの体から徐々に力が抜けてくる。ピストンをちょっとずつ深めていく。やがて、先っぽが、すっぽり中に納まった。
体重をかけながら、ゆっくりと腰を進める。
ゴム越しでは、感じることが難しかった、ひだの感触。やがて、先っぽにざらっとするものを感じて(この人……こんなところまで、出来が違うのか?)と、驚嘆した。

「ん……はいった……?」
「うん……れいのナカ……すごいよ。」
「ん……」
「もう……ほんっと……なんで、こんなところまで、完璧なんですか?」

ズンと、一突きしてやれば

「あ……あ……ああ……おっき……い♡」

降谷さんが俺の背中にしがみついた。
結合部に真珠の凸凹を感じる。俺は、わけがわからないほど興奮した。
真面目な彼女が、えっちな下着を着て、中途半端に乱された衣類のまま、男に抱かれている。降谷零は俺の女なのだと、そんなことを思った。自分に、このような征服欲があるなんて思ってもみなかった。
降谷零が、俺を搔き立てる。
この完璧で美しく、そして、どこか寂し気なひとを、俺の女にしてしまいたい。そう思うのは、本能か? あるいは、主従感情の慣れの果てか。降谷零を、己の最も敏感で、最も雄の生態に根差した場所で感じる。
もしかしたら、俺が、コンドームの使用にこだわっていたのは、恐怖だったのかもしれない。
降谷さんの深い場所。この人の細いウェストの一体どこにこんなスペースがあったんだろうと思う程に、奥深くまで……

――飲み込まれる。この人に。

俺たちは、このまま、溶け合って一つになってしまうかもしれない。

「あっあああ……や……あ、ああん……あっ♡ あ……ゆう……やぁ……♡」

腰を激しく打ち付ける。そのたびに、下着の生地と俺の下腹がぶつかって、それがすごく煩わしい。
ちゅぽんっと、性器を引き抜く。

「や……なんで……ぇ……」
「足上げて……」

降谷さんは、ぽやんとしたまま俺の指示に従う。
パンツを降谷さんの脚から引き抜く。生地はずしりと重く、絞ったら、ぽたぽたと、愛液がしたたり落ちるんじゃないかと言うほどにぐしょぐしょだった。
下着をその辺に放り投げ、俺は、シャツとタンクトップを脱ぎ、中途半端な位置でとどまっていたボクサーパンツを取っ払った。
続けて、降谷さんのスカートを脱がす。
降谷さんは、びっくりしていたようだったけれど、腰を動かすなどして、協力的だった。続けてブラウスを脱がせ、キャミソールを外し、ブラジャーを取りはらう。
いきなり、全裸にされたことで、降谷さんはびっくりしたようだ、もじもじとしながら、枕をぎゅっと胸の前で抱いた。
もちろん、俺はそれをゆるさない。

「だめです」

枕をぽんっと、床に投げる。

「……れい」
「あ……はずかし……」
「……すごくきれい」
「うん……んん……あっ……ゆうや」

耳元で語りかけながら、ゆっくりと、挿入を再開する。
激しいピストンによって、押しひろげたばかりのそこは、信じられないほどスムーズに俺のペニスを受け入れた。

「ん……っんん♡」

ずぶずぶずぶと、突き進めば、竿がキュウキュウと締め上げられる。

「れい……っ……なか、すご……」
「ん……」

俺は、降谷さんの腰を持ち上げ、足を大きく開脚させた。

「ひゃあっあ……」

腰全体を使って、押しつぶすように体重をかけてやれば、結合はさらに深まっていく。

「や……奥……おく? おく……ああ……たいじゅう……かけちゃ……だめ……あっあ」
「だめ……? でも……これ、すっごい、きもちい……」
「あ……だめ、じゃ、ない……けどおお……っ♡」

肩にかけられた、降谷さんの手。それを一本ずつ外す。それから、手首を握り、ぐっとベッドに押しつけてやった。

「あ……んんっ」

腰をゆっくりと上下させる。首筋にキスをしてやる。
腕を固定され、俺の体に押しつぶされ、降谷さんはきっと自由に身動きが取れない。かなり、乱暴なセックスになっている。
意地悪をしたことはあっても、こんな荒っぽい抱き方をしたのは初めてだ。
降谷さんも戸惑っているが、俺自身も戸惑っている。だけど、今日はどうしても。こんな風に、ペニスで相手を制圧するような、そんな抱き方をしたくて、したくて、仕方がないのだ。
腰の動きを少し速める。

「あ……あっああ……は……んんん♡」
「れい……好き……愛してる……れい……」
「ゆ……ゆう……や……んっんんんー」

キスをする。降谷さんの舌が、俺の唇をぺろぺろと舐めた。
舌を差しこんでやれば、苦しいだろうに、必死に舌を絡ませてくる。ピストンをやめ、先っぽを奥にとどめたまま、キスを深めた。

「んっ……♡ んん……」

ぺちゃぺちゃと、唾液が混ざり合う音が響き、降谷さんの中がキュウキュウと締まる。
彼女は腰の動きを止めることができないらしい。俺の胸元に、コリコリしたものがふれる。小ぶりではあるが、形のいい、おっぱい。どうも、必死になって俺の体に押しつけているらしい。
もっと気持ちよくしてあげたくなって、キスを中断し、降谷さんの胸にかぶりつく。手首の拘束をやめ、左手を太ももの裏にそえた。それから、右手で、丸っこいお尻を、わしづかみにしてやった。
上目づかいで、降谷さんの様子を窺えば、両手で自身の口をふさいでいる。

「だめ……。声我慢したらだめ、です」
「でも……」

右手を一旦お尻から離し、降谷さんの指先を引っ張る。

「いいですか、右手はここ。自分でここをコリコリしてください」
「あ……ん……はずかしい……」
「はずかしいかもしれないですけど……ここ、コリコリしたら、もっと気持ちよくなるの、わかってますよね?」
「そう……だけど……」

腰を軽く前後し、奥を一突きしてやる。

「あ……っんんん」
「ね? 気持ちいいの好きですよね? 俺、降谷さんが、気持ちよくなってるの見るの大好き……だから、お願いします。右手でクリトリスこりこりしてください……降谷さんならできますよね?」
「うん……できる……けど」

再び、右手で、尻たぶをぎゅっと掴む。はりがあって、まんまるで、つやつやの、かわいいお尻。

「準備いいですか? たぶん……俺、いつもより……激しくしちゃうと思うけど?」
「うん……んっ……んん♡ いい、よ……ゆうやのすきにして……んんっ……んん」

激しくすることへの同意をもらったが、すぐには動かない。
俺の言いつけ通り、降谷さんは、チンコを挿されたまんま、クリトリスをいじっている。

「クリきもちいいの? 中ぎゅうぎゅうなってる」
「ん……きもちいい……けど……」
「けど?」
「はやく、きて……ゆうやの、おちんちんで……れいの……お……おまん……こ……じゅぼじゅぼして」

こんな言葉。教えた覚えがない。
たぶん、いろいろと調べて、俺がよろこびそうな言葉を探し当てたのだろう。

「あー……もう……ほんっと、かわいいなあ」

腰を前後させれば、結合部から、べちゃべちゃとした音が広がる。

「あ……あっ、あん……あ……ゆうや……♡ いきなり……はげし……っ……はげしいよ」
「れい……なか……すんげ……うねってる」
「んっ……んん、あ……あ……これ……なに……あ……なんか、でちゃ……でちゃうよお」
「はぁっはっ……♡ れい……だしてごらん」
「やだ……なにっ……これ……おしっこ? おしっこでちゃ……」

ペニスの位置を調節し、今日はまだ、重点的に刺激していなかった、降谷さんのいいところをぐりぐりしてやる。
ゴムをしていないからだろうか? 今日の俺は、彼女の感じやすい場所を的確に探り当てることができた。

「あ……ゆぅ……や……だめ……でちゃ……でちゃうよ……んんん」
「れい……おしっこじゃないからだいじょうぶ。思い切り出してごらん」

亀頭で、降谷さんのいい所殴りつける。
そのたびに、中の圧が高まっていく。
そして

「え……わかんな……あっあ……ああ、そこぐりぐりだめ……だめっえ……あ♡ あっあ……ああ」

まるで、間欠泉のように。
温かな液体が、ぷしゃあっと吹き上がった。

「あ……っあああ……とまんな……とまんないよぉお……」

生まれて初めての潮吹きに戸惑ったのだろうか? 降谷さんがめそめそと泣き始めた。
だが俺は腰の動きを止めない。いや、正確には止められなかった。

「ん……ああ……っ…だめ、うごいちゃ……また来ちゃう……からっあ……んん」

いいところをガンガンとついてやれば、一度目ほどではないが、それでも、やはり、結構な勢いでぴゅうっぴゅうっと、液体が飛び出した。

「あ……あ……あっあう……んん……ふ……っんんあっ……」

立て続けに潮を吹かされて、くったりした降谷さんの体。ピストンがしやすくなったのをいいことに、奥を激しく突き立てる。

「あ……あっああ……ゆ……う……やあ……っ……あ……あ」
「ごめ……俺、止まれなくて……あ……やば……いきそ……」

ぐいぐいっと、奥をえぐれば、降谷さんがなかをぎゅうと締め付けた。

「あ……れい……ごめ……俺……っいぐ…っ。でる……っ……んんっ……っく……っふ……あー……ふーっ……っう」

わけわかんないほどに気持ちよくって、射精が止まらない。腰を振りながら降谷さんの奥に精液を擦りつける。

「あ……ゆぅや……あ……んん」

とろけきった降谷さんの声。
かわいい。ゆらゆらと、腰を動かし続ければ、徐々にペニスが硬さを取り戻してくる。

「え……うそ……まだ……あっ……なんで? あ……え……?」

射精した俺が、ペニスを抜くと思っていたのだろう。
インターバルを挟まずに再開したピストンに降谷さんは戸惑っているらしかった。
そりゃあ、そうだ。こんな風に、この人を抱くのは初めてなのだから。

「手加減するなって言ったのは、あなたでしょ……」
「そ……だけどぉ……こんなの……わかんなかった……あ……っあ♡」
「そうですか? 俺、頭の中ではいつも、こうやってずっと挿しっぱなしのまんま……何時間も、あなたを犯したいって思ってましたが?」
「んんんっ……なん……時間も?」
「そう、何時間も。休憩もつながったままして。れいが寝ちゃっても、こうやって……っく……く……俺はずっと、腰を動かし続けてるの……」
「や……なんで……っあ……」
「こら……れい……右手……どうするんだっけ?」
「できない……っ……んん」
「できるでしょ? 指動かさなくても、そこに添えてれば、俺が……ほらっ……こうするたびに……そこ、コリコリできちゃうでしょ」

初めての経験に、パニックを起こしつつも、それでも、降谷さんは俺のために、クリトリスをいじり始めた。出し入れの速さを調整し、ゆっくりにしていく。

「あ……だめ……っ……ゆっくりはだめ……」
「だめじゃないでしょ……? れいのオマンコはひくひくして、よろこんでるよ?」
「だって……ゆっくり……は、びんかんになっちゃう……っ♡ からあ」
「でも、激しくしても、怖いでしょ? ほら……ここ、ここガシガシついたら、またさっきみたいに、お潮ぴゅーぴゅー吹いちゃうかも……?」
「あ……やだ……あれはいや……」
「うん。じゃあ、ゆっくり……しますからね……?」

ゆったりとしたピストンに、降谷さんは悩ましげな声をあげた。

「あー……んんっ……ん……あっあっあ♡ ああん♡」

カリがいいところをひっかくたびに、背中をそらし、小さくいってしまっているらしい。

「あ……っ♡ いま……いま……あっ……そこ、だめ……っ♡」
「ここ、ひっかけると、中がすっげえうなりますよ」

射精を一度済ませたことにより、今の俺は、まあまあ余裕があった。

「あ……っあ……♡ んん……♡」

ゆっくり刺激されることに、もどかしさを覚えたのかもしれない。
クリトリスを触る降谷さんの指の動きが、徐々に早くなっていく。

「すごい……クリトリス、上手に触れてますね……かわいい……♡」
「あ……っ……だって……ここ……こりこりするの……きもちいいから……っ♡」
「たった、半年でこんなになっちゃうなんて、降谷さん、本当に才能ありますね……」
「ごめ……ん、なさい……い、いんらん……な女でごめんなさ……い」
「謝らないでください」
「だって……きもちいこと……っ……好き……」
「才能があるってのは、淫乱ってことじゃなくって」
「うん……」
「俺に愛される、才能があるって意味ですよ」

降谷さんの体を押しつぶすように体重をかける。それから、激しく腰をふってやった。

「あ……っあ……♡ ゆ……ゆう、や……っきもちい……好き……好き」
「うん……気持ちいいね……っ……っく……俺もすごい好き……れい……」

一度目に出した精液をぐちゅんぐちゅんとかき回しながら、俺は、二度目の絶頂を目指す。

「あ……おなかの中……ちゃぷちゃぷ……する……っ……♡」
「うん……もっと……はげしくして……い?」
「はげし……く? っ……あ……あっ……ゆ……やがしたいなら……」
「したい……れいが、俺のチンコなしでは生きられなくなるくらい……っ……めっちゃくちゃにしたい」
「や……っあ………ああ……すき……好きだ……ゆうや……あ……♡」

いつの間にか、降谷さんの両腕が、俺の背中に回されていた。それから、長い脚も。
そういえば、付き合う前に、組み手をした時、固技の力強さに驚嘆したっけ。
俺たちは今、がっちりかみ合っているから、腰を動かそうとすれば、どうしたってポルチオになってしまう。

「あ……っあ……あああ……♡ むり……っ……こわれちゃ……うよぉ……っ♡」

わずかに残った理性の中で、痛がらなくてよかったと安心する。
ごりごりと、先っぽを力強く押しつければ、降谷さんが、竿をギュウギュウと締め上げた。

「あ……っ……あ……ゆっ……や……♡ はああ……っあんん……」
「れい……好きだ……れい……俺のものになって……」
「あ……あっ……ああん……君の……ものに……して……ん……あ……えっあ……ひゃああ……ん!!!」

気持ちいい、気持ちいい。気持ちいい。

「出る……っでる……」
「出して……っ……ゆうやの……ぉ……んんっ……せ、えき……いっぱい……だし……って……!」
「あ……あ゙……ゔっ……ッ……きもちい……っ……はっ……はあ……」

降谷さんが俺にぎゅうと抱き着く。汗ばんだ肌が、はりついて、その密着感がたまらない。
本当に、一つになってしまったような。そんな気がしてくる。
心地よい疲労感。重力に逆らうことをやめ、降谷さんにすべての体重を預ける。

「ん……っ……」
「ごめん……重いでしょ……でも、ちょっとだけ……」
「おもい……けど……」
「うん……」
「君を……かんじられるから……」
「うん……」
「いいよ……。ずっと……このまんまでいて……」
「うん……」

本当にずっと、このまんまでいられたらいいのに。
そう思いながら、俺は、降谷さんの頭をなでた。そして、五分程、そのままの姿勢を保った後、ゆっくりと、身体を離し、性器を引き抜く。
じゅぶじゅぶに泡立った、精液が、降谷さんの透明な愛液と共に流れ出た。

「あ……なんか……どろって……した……ん」
「俺が、いっぱい出しちゃったからね」
「風見……なんか……さみしくなっちゃった」

降谷さんが、ぽろぽろと泣き出す。
その体を、ぎゅっと抱きしめてやった。

「ご飯食べたら、またしましょう……」
「うん……」
「その前に一回お風呂はいろっか?」
「うん……お風呂、はいる」
「なか、きれいにしてあげるね」
「……うん」

あんなに気持ちいいことをしたのに。
いや、あれほど、気持ちいいことをしたからこそ。繋がっていない今が、無性にさみしくて。
俺の方こそ。これから先、きっと、この人なしでは生きられない。そういう体になってしまったような気がした。

 

 

【あとがきなど】

仕事でね。
心が疲弊しきっていたので。
そんな自分を癒すために、書いていたら、こんな内容のないエロが……3.6万字を超えてしまった衝撃。
私の精神……燃費悪すぎでは???

風降♀ R-18は、そのうち書きたいと思っていたので、内容はともかく、書き切ることができてよかったです。
疲れている時に書いた話なので、おかしなところあってもスルーしてください。

風降♀ R-18を書いた感想なんですが……。
私の場合、降谷さんの身体の構造が異なるだけで……やってることは風降と一緒だなと思いました。
結局のところ、私は、すれ違いコントのようなエロコメが大好きだし。
風見裕也のことになると、びっくりするくらいちょろくなってしまう降谷零が好きなんだなって思った。

私の書く風降♀と風降の違いを、あげるとするなら。
体の構造の違う相手を抱くことのおっかなびっくりさが、風見サイドにあるってことと。
風見が、降谷零♀に対する溺愛を隠さないってことくらいかなって思いました。

あと、この話を書く中で、学んだことは。
恥ずかしいっていうのは、照れくさい感じの、きゅんきゅんする恥ずかしさと。
自分が情けなくて仕方なくなるような、自己の尊厳が傷つくような恥ずかしさの二種類があるということです。
この違いについて、もっとよく考えて、降谷零を恥じらわせていきたい。

それから、すっげー気持ちいいセックスをしてしまったからこそ、その後にすごく寂しくなってしまう二人ってのも、すごくかわいいなと思ったので、多用していきたいです。

好きなシチュエーション、何度でも、何度でも、妄想して、書き綴っていきたい!!!!!

 

 

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