どうか、うまくいきますように

初出:ぷらいべったー 2021/9/8

【確認事項】
純黒ざみ×執行ふるや
攻めの浮気?/開発済の受け?/風橘要素
純黒の風降と、執行の風降が、スワッピングしたら楽しいのでは……? という、思いつきを文章にした・Part ②


 

夢の中で、俺は俺に会った。
すぐにそれが誰であるかわかった。

「お前……ゼロの執行人に出てきた俺か?」
「……その感じ、そっちは、純黒の俺だな?」

どうせ夢なら……そう思って、ぶっちゃけトークをかました。

「執行人に出てくる降谷さん……たまにさみしそうな顔をするところが、すごくよくないか……? 」
「あー……まあ、そうだな」
「まあ、俺の降谷さんも、お転婆でかわいいけど……隣の芝は青く見える……というか」
「”俺の”……?」
「……あの観覧車の一件の後、いろいろあって、俺達は今、恋人同士なんだ」
「へえ……ちなみに、劇場版の時は……?」
「あの時はまだつき合っていなかった。そういう関係になったのは、あの事件から数か月たってのことだ」

自分に、自分と降谷さんのなれそめを話す。不思議な時間だ。
まあ、夢なんてものは、そういうものだろう。

「そっちは……あれだろ? 劇場版の時には、すでに、できてたんだろ? そういう雰囲気隠しきれてなかったし」

他の人たちの目はごまかせるかもしれない。だが、俺達はそれぞれ独立した存在とはいえ、根本的には同じだ。
どうしたって、微妙なニュアンスを拾ってしまう。

「まあ、そんなところだ」
「俺……ゼロの執行人の降谷さんが雨に濡れているシーンが好きなんだ。抱きしめてやりたくなる。お前は……? やっぱり、抱きしめたいと思ったのか?」
「……さあ? どうだろうな? まあ……それどころじゃなかったよ。仲間が死んだし。あの時、東京はIoTテロによって、けが人が続出していた」
「そうか……。そっちは、俺の”零”のことどう思う?」
「んー……そうだな。とんだお転婆だけど、かわいいと思うよ。まあ、ただ……赤井秀一に対する、闘争心については、笑ってしまったかな。俺の”上司”も<我ながら、あの子はちょっとお転婆が過ぎるな……>とあきれていた」

その言葉に、おかしくなって笑ってしまう。ゼロの執行人の降谷さんだって、十分に無茶をしていたわけだが、あれは理にかなった無茶だ。
対して、俺の降谷さんときたら……。

「本当。俺の零は元気で……。時々、年下なんだなあって実感することがある。あ、でも、お前んとこの降谷さんも……ちょっと、守ってあげたい気持ちになる時がある」
「……なあ。お前さ……。執行人の登場人物である降谷零を抱けるとしたら、抱くか?」

荒唐無稽な話だ。別の世界の恋人と、セックスをする。そんなことができるわけがない。
しかし、これは夢であり、目の前にいるのは、俺自身の分身なのだ。
本音を隠す必要はない。いや、どうせ、隠しようがないのだから、正直に答える。

「そりゃあ、男だったら、抱いてみたいって思うだろ?」
「ふーん……じゃあ、スワッピングするか?」

これは夢だ。
きっと、スワッピングをしたいと答えれば、俺の願望が反映されたそういう夢が展開していくに違いない。そう踏んだ俺は

「ああ、スワッピングしよう」

と、答えた。
しかし、夢はそこで途切れ、気がつけば朝になっていた。

実は夢の続きで、俺の目の前にいるのは、執行人の降谷さんなんじゃないだろうか?
目の前の上司に対して、そんなことを考えた。しかし、それは紛れもなく、俺の恋人であり、上司である降谷零で。
雨に濡れたあの人ではなかった。

三日後。
休みの前日。夕方、ニュースを見ながら、うとうとしていると

『じゃあ、俺の上司をよろしく』

という、自分の声が聞こえてきた。
ぱちりと目を開ければ、降谷さんが、俺の顔をのぞき込んでいる。

「起きた」
「え……あ、ああ。降谷さん。こんばんは」
「……君」
「え?」
「いや……なんでもないよ」
「はあ……」

降谷さんの様子が、いつもと少し違った。
どことなく、しんみりとしている。なにか、悲しいことがあったんだろうか?

「なにか、ありました?」
「……え?」
「あ、いや。いつもより、さえない顔をしているというか」
「……君」

降谷さんの顔がぐっと近づいてくる。
ふたつの青がゆらゆら揺れる。

「何でしょう?」
「”僕の”右腕じゃないな?」
「……は?」
「……とりあえず。飲むか?」
「え……? ええ。じゃあ、少しだけ」

これもまた、夢の続きなのだろうか。

「……これは、仮説だが。いわゆる執行人の風見と、君……すなわち純黒の風見は現在、なんらかの事情により、置き換わりが起きている」
「……では?」
「おそらく、数日前に君が見たという夢が引き金になっている……」
「なるほど」

映像作品や漫画などによって、別の世界を生きる自分たちの様子を知ることができる。
俺たちは、そういう不思議な世界を生きている。それならば、なんらかのイレギュラーによって、人物の置き換わりが起きてもおかしくない。

「……しかし。俺は元の世界に戻れるんでしょうか?」

テレビ画面に映るのは『純黒の悪夢』。
降谷さんが、観覧車の上を駆け抜けて、大ジャンプを決めている。

「うわ……本人から、観覧車の上で赤井秀一に殴りかかったという話は聞いてましたけど……あの人、こんなことをしてたんだ」
「我ながら……本当に、やんちゃだよな」
「いや、しかし、こうやって、自分たちの世界のことを映画にしたものを見ると、少し変な気持ちになります。あの場面で、降谷さんはこんなことを思ってたんだなっていう発見があったり」
「まあ、確かに。君の世界では、これが現実であり。別行動していた僕がどのように動いていたかを正確に知る方法はないもんな」
「いや、でも、まあ、向こうの世界でこの映画が見れなくてよかったというか。……自分が女スパイにのされる姿……零には見られたくないし」

視線を感じ、ふと、隣を見る。
降谷さんが、俺のことを、じっと見つめていた。

「君は、プライベートで……僕のことを”零”って呼ぶんだな」
「え……? ああ。まあ。降谷さんって呼ぶこともありますけど、こうやって、部屋で二人きりの時には名前で呼ぶことの方が多いかもしれないですね」

カラン……と音を立てながら、降谷さんは、ウィスキーのグラスを傾けた。

「んっ……。じゃあ、そっちの世界の僕は、君を”裕也”と呼ぶのか?」
「えっ……あ、まあ……その……盛り上がっている時には」

そう。たとえばセックスの時とか。

「裕也」
「……どう、されました?」
「いや……呼んでみただけだ」
「……あなたも、プライベートの時には……こちらの世界の俺のことを名前で呼ぶんですか?」
「いや、裕也、と。呼んでみたのは、初めてだよ」

しっとりと。しんみりと。
さみしそうな表情。
ああ、そうだ。ゼロの執行人を見ながら、俺は、この人を抱き寄せたいと思ったのだ。

「……恋人同士なのに。ずいぶんと、他人行儀なんですね」
「……恋人?」
「ええ。できてるんでしょ?」
「……まあ、関係はあるよ」

その言葉に、俺は、どうしようもない気持ちになる。

「あの……それは、どういった意味でしょうか?」
「僕の右腕は、業務上必要と考えれば、協力者の女とも寝るし、上司とも関係を持つんだ」
「まさか、橘境子とも?」
「……まあ。本人から、そういう報告を聞いている……って、ちょっと……君……」

こんなに、隙だらけな人だとは思わなかった。
俺は今、目の前の男の背中に両腕を回している。

「あなたは、”俺”を好きじゃないんですか?」
「好き、だよ。だけど、僕は、君の恋人と違って、感情をむき出しにすることに慣れていないんだ。君が見た映画にも映っていたかな? 彼は、僕のことをこわいと言った」
「……それは、あなたへの賞賛を込めた、こわいであって」

畏怖の感情。
鍛え抜かれた背中を、やさしく撫でてやる。
降谷さんが、小さく震えた。

「……僕は、君の恋人のように、かわいい男じゃないんだ」
「……そうでしょうか? とてもかわいく思えますが?」
「……君は優しいな。……そういえば、映画の中でも女スパイのために救急車を呼ぼうとしてた」

降谷さんが、俺の胸に手を添えた。
その手のひらが、俺の体を押しのける前に、背中に回した腕にぎゅっと力をこめる。

「……ちょっと、君。……君には恋人がいるんだろう?」
「います。降谷零という恋人が」
「なら……」
「……あなただって、降谷零だ」
「……え?」
「あなたの、さみしそうな様子……ずっと気になっていたんです」
「ちょっと……風見……」
「零……さっきみたいに、裕也って。ね? 俺の名前、呼んでください」

そりゃあ、もちろん。
“零”に対して、申し訳ない気持ちもあるにはあった。
だけど、俺は、今、どうしようもなく。目の前にいるこの人を、慰めてやりたくて仕方なかったのだ。

「ゆう、や」
「れい……」

俺は眼鏡を外し、そして、唇を重ねた。

……降谷さんのキスは、あんまりにもうまかった。
うまいというか、すごくねっとりとしていて、それは、ほとんどセックスだった。
Tシャツの裾から、手のひらをさしこみ、胸を軽くなでる。降谷さんが、背中を大きく逸らせ、キスが中断した。
俺は、胸のしこりを爪の先で軽くひっかきながら、必死に声をこらえる降谷さんの様子に釘付けとなった。

「あの……」
「んぅ……な、に?」
「ここ……女の子みたいにこりこりなんですが? 降谷さん……俺以外とも、その……」

失礼な質問をしている自覚はある。
けれど……

「あっ……」

Tシャツをぺらりとめくり、目視でも、その大きさを確認する。
小指の先ほどの大きさの、コリコリ。
なんだこれ? エロいにもほどがある。
意味が分からない。

「……なんで、そんな、こと……んっ」

指でつんとつつけば、身体がビクンと跳ねる。

「……いや、その。俺の知ってる降谷さんの乳首と全然違うものですから……なんていうか、開発済みっていうか……調教済みっていうか。とにかく……とても、こう……立派な乳首なので、気になってしまって」

降谷さんがぎゅっと目をつむる。

「……すみません。比較されたらいやですよね。……別に、あなたが、だれと、なにをしていても、俺にはどうこう言う権利はないので……」
「君だけだ」
「え……?」
「風見が、しつこくするから、こうなってしまったんだ」

その言葉に、俺は、ドン引きした。
降谷さんに対してではなく、執行人の世界を生きる俺自身に対して。

「え……その、わりきった関係……なんですよね? それなのに……こうなるって……そういった……主従的な……契約を結んでいるとかですか?」

俺の降谷さんも、ちょっとだけMッ気がある。だから、執行の降谷さんがそういった願望を持っていて……ということは十分に考えられることだ。

「いや、単純に、しつこいだけだ」

俺は、不安な気持ちになった。

「……それより。風見……いや……ゆうや……続きはしてくれないのか?」

続きを促される。
色っぽい声、視線。
ビンビンに立ったエロ乳首。
俺は、不安を一旦棚上げし、その乳首にしゃぶりついた。

「乳首だけでイケる人って本当にいるんですね……」

思わず、そのような感想を述べた。
ぐしょりと濡れた、降谷さんのパンツ。
キスと、乳首への愛撫。俺がしたのはそれだけで。男性器には触れていない。

「はあ……っ……ん……君の恋人も、たぶん、そのうちこうなるぞ……? 僕、こういう、素質……あるらしいから」

肉体関係だけの相手。それも、自分の上司を、ここまでの敏感体質に育て上げてしまう執行人の風見裕也。俺自身のことではあるが、俺は「お前の方こそ、こわいよ」という気持ちでいっぱいになった。

降谷さんの立てた仮説の通りに。数日前の夢と、今の状況がリンクしていたとしたら……と考える。

――確か、俺達は、スワッピングの約束をした。

「あの……降谷さん。執行の俺……”零”のこと抱くと思います?」

漠然とした不安が、徐々にその輪郭を確かにする。

「……まあ、君自身が一番わかっていると思うが」
「……はい」
「風見裕也は、別の世界の僕を抱けるような精神性の持ち主だよ」

ぐうの音も出ない。

「風見、それよりも……」

降谷さんが、パンツを脱ぎ四つん這いになった。
そして、自身の精液でどろどろになったそこを、惜しみなく、こちらに見せつけた。

「……君の恋人はどうかわからないが……僕は、とても、性欲が強いらしいんだ」

まるっこい、お尻に手を伸ばす。
むちり、むちりとした手触り。それは、俺の知っている零の尻よりも三割増しで肉付きがよく、俺の手のひらに吸いついた。
降谷さんが尻を突き上げ、左右にゆらゆらと揺らした。
俺の零も、えっちは好きだけれど。こういう、淫靡な仕草は知らない。

「あの……ローションって、どこに?」
「ああ。そこにある」

この部屋の主の代わりに、降谷さんが、答える。
戸棚を開けて、俺は、頭を抱えた。
ローションにコンドーム、ローターくらいは、まあ、わかる。
フェイクグッズの手錠も、まあ、いいだろう。俺と降谷さんも手首を縛るプレイを、わりと気に入っている。
だけど、電マにアナルパールに、極太のディルト、イボのついた極彩色のバイブに、吸引式の乳首ローター、それから、たぶんだけど……尿道にあれこれするための管。さらには、前立腺マッサージに特化したシリコン製の医療器具まで置いてある。

「……好きなの、使っていいぞ。まあ、僕のものじゃないけど」
「……いや、とりあえず、ローションだけ」

零は大丈夫だろうか……?
こんな性癖を持った男に抱かれてしまったら、壊されてしまうんじゃないだろうか?
ひどく不安だ。
いや、しかし。
俺の恋人は、観覧車のてっぺんで、因縁の男に殴りかかるような男だ。俺ごときに屈するわけがない。

ローションで、ナカをほぐした俺は、降谷さんの体を仰向けにひっくり返した。
全身をびくびく痙攣させながらも、声をほとんど上げないまま、降谷さんは俺のアナル責めを耐え抜いた。

「ん……」
「れい……」

俺が呼べば、降谷さんが、膝裏に自身の手を添えて、セルフマンぐり返しの姿勢をとった。
本日何度目かわからない、ドン引きタイム。
女性との関係はわからない。しかし、降谷さんは、同性については執行の俺としかやったことがない(本人の言葉を信ずるならば)。
だとすれば、こういった仕草を教え込んだのは、すべて……俺の分身ということになる。

「ゆうや……、来て」

しかし、恋人と同じ声で呼ばれ。同じ瞳で見つめられれば、なにもかもがどうでもいいような気分になる。そして、誘われるがままに肌を合わせた。
唇を合わせる。コリっとした乳首が、俺の大胸筋を撫でた。
その刺激すらたまらないらしく、降谷さんは、身体をぶるぶるふるわせる。
キスを終え、上体を起こし、降谷さんのアナルに、先っぽを押し当てた。

「んっ……」

降谷さんが、とても上手に俺のチンコを飲み込んでいく。
腰を掴み、ゆっくりとピストンを開始する。

「え……っ? も、うご……? くのか?」
「……え?」
「あ……んっ……いい。君が恋人とするときと同じように続けて……っ」
「では……」

パンパンと、俺の袋が、降谷さんの尻をはたいた。
肉付きのいいケツ。抱き心地がとてもいい。

「……っ」

いつもと同じように、前立腺を責め立てる。
しかし、俺が抱いているのは、零であって、零ではない。
目の前の男は、声をぐっとこらえながら、近くにあった枕を抱き寄せる。
俺は、いつもの、甘い声が聞きたいと思った。
零が、俺を呼ぶ、あの、甘い声を聴きたい。

「零……ほら……声、我慢しなくていいですからね……?」
「んっ……でも……」
「ね……だって、がまんしたら、つらいでしょう? さっきから、イくのも一生懸命我慢してますけど……それも、我慢しなくていいので」
「あ……っでも……」
「でも?」
「……風見は、おん、なが好き……なん、だから……男の……声なん、か……」

俺は、さしこんだチンコを一度抜き、それから、降谷さんの上に重なった。

「え……っ」
「たしかに……あいつは、仕事で女を抱いたんでしょうけど……でも、俺は、あいつと同じ風見裕也だから、わかります。あいつ……絶対、あなたのこと大好きですよ」
「……でも」

すんすんと、鼻をすするような声が聞こえる。俺は、それに気が付かないふりをした。

「……でも?」
「……僕の風見は、僕のこと、一度も……零と呼ばないし。君みたいに、避妊具をしない挿入をしたこともなかった」

執行の風見に対しての苛立ち。それと同時に、目の前の降谷さんに対し罪悪感を覚える。

「いや……すみません。その、零とは最近、つけないのが普通だったから……」
「……君たちは、恋人同士だから……」
「……ごめんなさい。恋人同士だからとか関係ないです。……単純に、ゴムつけるのが面倒になってきたのと、ナマの方がよくて……つい」

いくら、恋人と根本的には同じ存在だからとはいえ。初対面の相手に、ひと声もかけずに、ゴムなしで挿入した。マナー違反もいいところだ。

『……僕の風見は、僕のこと、一度も……零と呼ばないし。君みたいに、避妊具をしない挿入をしたこともなかった』

だが、降谷さんの言葉に安心する。
たとえ、俺の零が、執行の風見とそういうことになったとしても、少なくとも、中出しはないということだ。

「……えーっと、ちょっとお待ちくださいね」

戸棚から、コンドームを取り出そうと思い、体を起こす。
すると、いつの間にか、降谷さんに腕を掴まれていた。

「え……っ」
「いい」
「あの……しかし」
「……たとえ、君が、僕の風見じゃなくても。これが、夢であっても……。僕は一度でいいから、恋人である風見裕也と……セックスをしてみたいんだ。だから、君が、恋人とするときと同じにしてくれ」
「……では」

気を取り直して、挿入を再開する。

「んっ……」

相変わらず、声を我慢する降谷さんの耳元でささやいた。

「零……”いつもみたいに”かわいく、俺の名前を呼んで……それで、声我慢しないで、素直に俺のことを感じて……?」
「あ……っ」
「そう……上手。かわいい」
「……僕は……っ、君の零みたいに……かわいく、なんか……」
「零……。俺にとって、俺の零は一人だけかもしれないけど。あなたも大事な降谷零なんです」
「……っ」
「だから……俺の大事な零を卑下するようなこと……言わないでください」

別にあのシーンに深い意味はなかったのかもしれない。
だけど、雨に濡れるあなたは、ひどく、自罰的であるように思えて。
だから、こうやって、大事に抱いてあげたかった。

「あ……っ……風見……」
「……ほら……そうじゃないでしょう?」

耳にキスをする。

「ゆ……っ……ゆう……やっ」
「うん、零……嬉しい。俺の名前、もっと呼んで……」

腰をガシガシと動かせば、降谷さんが、おそるおそるというようなしぐさで、両手を俺の背中に回した。
ああ。降谷零という男は……どうして、こんなにかわいいんだろう。

「あ……っあ……ゆうや……」
「零……」

奥をコツコツと突けば、降谷さんの体がどんどん汗ばんでくる。

「あっ……奥……もっと奥……」

……その言葉に、俺は、腰の動きを弱める。

「……その奥……というのは……?」
「……っ! そうか……君も、いつものように……僕がおねだりしないと……奥に……っくれないのか」

いや。
言っている意味が分からない。

「おねだり……?」

降谷さんが、息をふうっと吹いてから、小さな声でささやいた。

「……君の……おっきいおちんぽで……僕のおなかの中の……奥の……いちばんえっちなところを……じゅぶじゅぶしてください」

おい……執行の俺……マジか?
別世界の自分の悪趣味さに呆れる。しかし、結局、俺は俺であるから、なんやかんやでツボを押されてしまった。
これはこれで、すごくいい。

「えーっと……」

俺の零が絶対に言わない言葉。
こんな卑猥な言葉をリクエストしたら、めちゃくちゃに怒られるに決まっている。

「……あ……っすまない……っ……はしたなくて……僕」
「え……ああ、すみません。ちょっと、びっくりしただけで……でも、ここ、壁になってますよね?」

コツコツと、行き止まりを叩く。

「……!!!」

降谷さんが、身体をぶるぶるっとふるわせた。
直腸のひだがうねる。俺は、持っていかれそうになるのを必死でこらえながら、降谷さんの頭を撫でた。

「あの……」
「頼む……っ……ぼく……そこを、してほしくて……気がおかしくなりそうなんだ」
「え……しかし、ここ……行き止まりだから?」
「……こじ開けて」
「えっ? ここ、通るんですか?」
「うん……たのむ……も……僕……そこ、もらえないと……」

俺の恋人は、行き止まりをとんとんするのを、ものすごく怖がる。
俺自身も、消化器にペニスを突っ込んでいるという恐ろしさから、行き止まりをこじ開けようなど考えたこともなかった。
しかし。
目の前の降谷零は、そこをこじ開けろと懇願する。

「……体に変調があったら言ってくださいね……あと……」
「うん」
「……声は、我慢しないでください。あと、イくときは、ちゃんと教えて……さっきみたいに、いきなりキューってなるとびっくりしちゃうので」
「わかった」

上体を起こし、一つ深呼吸をする。そして、ゆっくりと、少しずつ。亀頭をめり込ませるように、挿入を深める。
降谷さんが、かわいい喘ぎ声を上げ始めた。

「あっ……あ……すごいっ……あついっ……あ」
「……きっつ」
「ゆうや……っ……ぼく……すごい……君の……ぺにす……あつくって」
「うん……零の、アナルも……っすっごい熱いよ」

ゆっくりと腰を前後させる。
ああ、こんなすごい場所があったんだなあと、感動する。
亀頭に、腸壁がキュウキュウと吸い付いてきて、たまらなく、気持ちがいい。

「ゆうや……うごいて……っおねが……っ」
「うん……ゆっくりね……おれ、すぐ……いっちゃいそ……」

少しずつ、出し入れの速度を上げていく。
背中をひっかかれる。
きっとミミズばれになるだろう。
この背中を、零に見られたら、めちゃくちゃ怒られるだろうなと思いながら、目の前の降谷さんを犯していく。

「あ……っあ♡ ゆうや……」
「れい……かわいい……れいの声……すごくかわいくて、えっちだよ」
「あ……っ……やだ……あっ、はずか、し」

ぺたんぺたんと、肉がぶつかり合う音。
ギシリギシリとベッドのフレームが悲鳴を上げる。

「あ……あ、んっ……ゆうや……」
「れい……好きだよ……かわいい、あー……すげー……まじ、いい」
「あっ……ゆうや……」

ちゅっちゅとキスをしてやる。
俺の零は、セックスの際のキスが大好きだから、執行の降谷さんもよろこんでくれるといい。

「んっ……キス……」
「もっと……?」

ぺろっと唇を舐め、半開きの口から顔を出していた舌をちゅるっと吸ってやる。

「れい……」
「ゆ……っゆう……やあ……」
「好きだよ……れいは? 俺のこと好き?」
「わかんな……っ……わかんない……んっ」

降谷さんの瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちた。
それを、すべて、舐めとってやりたいと思う。
だけど、俺はそれをしなかった。

「うん……俺のことじゃなくて……そうだな。降谷さんは、あなたの右腕のこと……好きですか?」
「……ぼく」
「うん」

ピストンを緩め、降谷さんの顔を見つめた。

「ぼく、風見のことが、好きだ……」
「うん……降谷さん、俺のこと呼びたいように呼んでみて? 俺じゃなくて、あなたの大好きな人のことを思い浮かべながら……」

真ん丸に開らかれた瞳がゆらゆらと揺れる。

「風見……」
「うん」
「風見……好きだっ……」
「うん……」

ペニスで、降谷さんの、身体の奥をゆすってやる。
結局、この人の、孤独を癒せるのは、あいつしかいないのだ。

うまく、いきますように。俺は目をつむり、祈るように、腰をふった。

(この人の想いが、いつかちゃんと、この世界の風見裕也に届きますように)

そんなことを考える。
そして、早く、俺の零のところに戻りたいなあ、などと。そんなことを願うのだった。

 

 

 

【あとがきなど】

純黒ざみ×執行ふるやれい……

どんな感じになるんだろうと思ってたら、こんな感じになりました。
設定を活かしきれていないし……
どっちの風見(降谷)の話をしているのか、わかりにくい感じになってしまった……

でも、書いてる時、最高に楽しかったからおっけー!!!!

執行人の風降……つき合ってないのに、ドン引きするくらい、深い情交をかわしていてほしい……
そういう、切なる思いをこめて、私は、このお話を書きました。

純黒ゆうやくんは、部下たちから心配されちゃうような子なので……
すっとぼけ要素があるに違いないと思って……ちょっとだけ、ギャグっぽさを加えてみました。

執行ゆうやの、ねちっこ変態セックスにドン引きする純黒ざみですが……
だけど、やつはやつで……、自分本位なセックスをするところがあるので……
同意を取らずに、生挿入かまします……
そういうの! 本当に、よくないよ!!!!!!!!

あと、これ、攻めの浮気感がすごくないですか?
……私、攻めの浮気……わりと好きです!! やったー!!! 浮気をしてるのに風降だ!!!!

それと。
相互さんのツイートから……
ゼロの執行人の降谷零は、お尻が大きいという、たいへん有益な情報を得たので……
取り急ぎ、その要素もぶち込みました。
しかし……むっちりとした尻の降谷零に対する解像度が、低いため……

とりあえず、純黒ざみの主観で「三割増し」ってことにしておきました。
雑……!!!!!

スワッピングなので、エロメインで書きたかったのですが……
執行人の風降の「あえて言葉にしない関係性のエロス」が大好きだったので……
それっぽい要素を足しておきました……。

執行人の二人は、この後も、ただれた関係を続けていくと思うんですけど。
最中にお互いの名前を呼んでみる程度の変化は出るんじゃないかなと思います。

問題は、純黒の二人だよ……
お清めセックス必須のやつじゃん……。
かわいそうに……(ごめん、でも、もえてしまう)

 

 

 

 

 

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