大学時代の悪友に誘われた合コンで、美人上司と鉢合った。 #エアコミケ2 無料配布

#エアコミケ2 無料配布・その2 です。

〇降谷さんが女性です。
〇降谷さんの一人称が私。
〇潜入捜査時の偽名が「安室透子」※読み方は、ご自由に……!

派遣社員として、もぐりこんでいた会社で、合コンに誘われた「安室透子(降谷零)」は、偶然、風見裕也と鉢合うのだが……


 

——とある企業に関する調査。

安室透子の名で派遣社員として働き始めて三か月。
派遣先で、それなりに自由に動くためには、人間関係が大切だ。また、女性の持つネットワークは侮れないものがある。したがって、女性同士のおつきあいを大事にしていた。
さすがに、毎回というわけにはいかないが、ランチや女子会に誘われれば、それなりの頻度で参加する。

その日、私は合コンのお誘いを受けた。断ろうと考えたのだが、女性側の出席者を聞いて参加を決めた。普段はなかなか話すことのない別フロアの二十七歳の女性。彼女には、専務と不倫しているという噂がある。なにか、捜査の役に立つような情報を持っているかもしれない。

女性側の幹事は、私に彼氏がいないことを知っている。いつかの女子会の折に話してあった。
一応、学生時代に彼氏がいたことにしておいたが、そんな事実はない。

幹事の女性は二十五歳だけど、しっかり者で。社会人になってから彼氏のいない私のことを大変心配していた。結婚願望強めの彼女からしてみれば、二十九歳で彼氏がいないというのは、相当にヤバい事態になるのだろう。
そして、男性メンバーには一切興味を示さず、女性側の出席者をやたらと気にする私に、彼女は

「安室さん、学生時代には彼氏いたんだし、ビアンさんではないですよね? なんで、そんなに女性の参加者ばっかり気にするんですか? もしかして……ですけど、うちの社員との間で、なんか嫌なことありました?」

と、親身になって話を聞こうとした。
ちょっと、露骨すぎたなと反省する。

「いや、社員さんはみんな優しいですし。他の派遣さんとも仲良くやってます。ただ、案外、人見知りなところがあるので」
「えーそうなんですか? あ、もしかして、その人見知りさが原因で、男の人とうまくいかないとかですか? 合コンって、初対面の男性とお話する感じですけど、大丈夫です?」
「あ、まあ、それは、何とかやり過ごせると思います。学生の時とか、何回か、参加したことあるので」
「ちょっと! 安室さん……何言ってるんですか? やり過ごすなんて! 今回の合コンのお相手はX大法出身のアラサー男性四人。職業は公務員もしくは弁護士、大企業の法務担当……! というようにですね。収入も、社会的ステータスも申し分のない方たちなんですよ!」
「あー……そうだったね」

X大法学部と聞いて、部下の顔がちらついた。
まあ、大きな大学だし、彼が来ることは、まずないだろうけれど。

「というわけで、安室さん! 今日は、なにがなんでも五時ダッシュ決めて、洋服を買いに行きます!」
「え? 服……?」
「いや……安室さん、自覚無いかもですけど……。出社のたびに、違うお洋服を着ているし。その全部がよく似合っているから、ファッションお好きなんだろうなー……と思っているんですけど。でも、正直、同性受けはすごくいいけど、男性受けはさほど……って感じのファッションじゃないですか?!」
「えー……そうですか?」
「そうです! その刺繍付きの丸襟のブラウスに、ゆったり目のカーデガン。とてもかわいいです! そう、すごく、かわいいですけどね……男受けで考えると少し微妙ですね……」

その言葉に、衝撃を受けた。
なぜなら、出社時に着ている服のすべては、部下である風見裕也が用意しているからだ。

(あいつ、男のくせに……どうして女性受けするレディースファッションに詳しいんだろう。いや、でも、潜入捜査の上で、女性とのネットワークを作らないといけないことを考慮すれば、正解なんだろうけど……)

そのようなことを思う。
なにはともあれ、幹事の彼女とのつながりはターゲットと近づく上で大事になる。それに、場違いな服装で浮くのも嫌だし……と考え、私は終業後の誘いを受けることにした。

 

 

合コン当日。
男受けを意識したファッションというやつで出社すると、確かに、フロアの男性からの視線が、こちらに集中した。
自分では気がついていなかったが、風見裕也の選ぶ服は、女性らしいラインが隠れるようなデザインになっていたらしい。
おそらく、潜入捜査するうえで、目立ちすぎぬようにという配慮があるのだろう。前々から、できるやつだとは思っていたが、そこまで計算して服を選んでいたとは……今度、褒めてやろう。

幹事の彼女が選んだ服は、アイボリーのニットのワンピース。襟のところが開き過ぎている感が否めないが、タンクトップのインナーを着こんで、過度な露出は控えている。
丈は膝上十五センチほど。二十九歳の自分がこれを着ても大丈夫なのかという不安があったが、二十五歳の彼女とショップ店員が絶賛してくれたから、たぶん大丈夫だろう。
ニットワンピを買った後、それに合わせるブーツやらストッキングやら、胸元にキラッと光るネックレスやらを選ぶ。気づいたら、時刻は八時を過ぎていた。上着は手持ちのものから選ぶことにして、彼女と別れる。
ファッションのことは風見に丸投げしていたから、久々のショッピングに疲れてしまった。

 

その男受けのいいファッションで合コンに参加する。

—―目の前の席に座った男は、こちらをガン見した。

せっかく褒めてやろうと思ったのに。潜入中の私と偶然会ったこの場面で、風見裕也は、驚きを隠さない。
ブーツのヒールのところで、革靴を踏みつけてやろうかと考えつつ、テーブルの死角でスマホを操作しメッセージを送る。既読がつく。周囲に見えないようにスマホを確認した点。これについては、褒めてやってもいい。

——初対面という設定でふるまえ
——了解しました

 

 

そう、確かに彼は、私のメッセージに対して、了解しましたと送ったのだ。
何度確認しても、そう書いてある。
それなのに、風見裕也は、わりと積極的に私に絡んだ。
私のグラスが空になりそうになると、間髪入れずにおかわりの確認をしたし。私が、料理の取り分けをしようとすると「俺がやるからいいよ」と言って、てきぱきと料理を小皿に盛り付けた。
合コンに参加するのは、学生の時以来だが……私にもわかる。風見裕也さん三十歳・公務員・趣味はクロスワードパズル。この男、安室透子・二十九歳・仕事はアルバイトや派遣を転々・最近犬を飼い出した……に狙いを絞っている。

仕事最優先で考えれば、専務と不倫の噂のある彼女とどうにかこうにかなってほしいのだが……。
うっかり、それを伝え忘れたのは、私のミスだ。
今更、風見が彼女に狙いを定めたとしても、別の男性がすでに何歩かリードを決めている。

おそらくだが、風見裕也は合コン慣れしている。

私に狙いを絞りつつも、他の女性を無視しているわけではない。きちんと話を聞くし、箸を落とした女の子がいれば、すぐさま店員を呼び新しいものを準備させる。
料理のとりわけの際も、さりげなく、みんなの好き嫌いを確認するし(私も、サラダのトマトをよけてもらった)、適度に面白い話をして場を盛り上げた(上司と一緒に行ったカレー屋で、激辛に挑戦しピッチャーから水を飲んだ話は、どうやら彼の鉄板トークであるらしい)。

私の部下は、もしかしたら、もてるのかもしれない(そう考えれば、女性のファッションに詳しいのも納得だ)。
やがて席替えなんかがあって、風見と席が離れる。
男性側の幹事がトイレに立つ。「あ、俺も」と言って、風見がその後を追った。
少し、ほっとする。
先ほどまで、席が離れていた男性と世間話をしつつ、不倫疑惑の彼女を会話に引きずり込む。これで、次に会ったときにはランチを誘うくらいできそうだ。

その後、もう一度、席替えがあった。幹事の采配により風見裕也と隣同士の席になる。
風見は初対面の男として私に接する。優しくまっすぐに、しかし、どことなく熱の帯びた視線をともなって。

 

合コンが終わり、二次会の流れになったが、すっかり疲れてしまった私は「ペットが心配だから」と言って、帰宅することにした。
風見裕也も「明日、休日出勤だから」と二次会を断り、男性側の幹事に茶封筒を渡す。

二次会に向かうメンバーを見送り、風見と二人っきりになる。とりあえず、そのふくらはぎに、ローキックを入れる。

「いった!! 安室さん、どうしたんですか……?!」
「……もう、いつも通りでいいぞ」
「……そうですか? 降谷さん、どうしたんですか?」
「説教だ。ついてこい」

風見を、近所の公園に連れ出し、二人でベンチに座ろうとする。風見がコートを脱ぎ、ばさっとベンチにそれを敷いた。

「降谷さん。今日、薄着だから……ベンチ冷たいでしょ?」
「……コート脱いだら、君だって寒いだろ?」
「いや……まあ。でも、俺、酒入ってるし。今、ちょっと、体がほてっているので」
「そうか」

人気のない公園で、説教を始める。

「君のスマホに送ったよな? 初対面らしくふるまえって」
「ええ」
「それで、君も、返事をよこしたよな? 了解したと」
「そうですね」
「それなのに、どうして、……あんなふうに絡むような真似を…?」
「降谷さん……」
「なんだ?」
「降谷さんの指示通りですよ」

風見が、私のことをじっと見つめる。
その視線は、先ほどの合コンの時よりも、熱い、気がした。

「は?」
「俺、降谷さん……というか、安室さん……いや、まあ降谷さんなんですけど。とにかく、俺は合コンで、あなたと出会っていたら。確実にああしますから」
「……え? ちょっと、意味が分からないのだが?」
「え? 意味が分からないんですか? つまりですよ。俺は、上司・部下として降谷さんと出会ってしまったので、それなりの節度をもって、あなたと接しています。でも……まったくのプライベートで出会っていたら、その限りじゃないってことです」

なんだか、とんでもないことを言われてしまったような気がする。
説教をするためにここに来たのに、そんなことはもう、吹き飛びかかっている。
かわりに、風見が説教めいた口調で話し始める。

「だいたい、なんですか? その服装。俺の選んだ服じゃなくて、合コン用の勝負服みたいなやつ着ちゃって……降谷さん、彼氏ほしかったんですか?」
「あー……いや、その、なりゆきで……」
「俺、本当にひやひやしたんですよ。あなたが、誰かに、お持ち帰りされるんじゃないかって。今日のメンツ……今は、だいぶおとなしいですけど、昔は、それなりにそれなりだったんで……」
「……おい、君も、それなりにそれなりだったのか?」
「……」
「おい」
「そこは、まあ、ね。降谷さんも大人なんだから……いろいろ、いろいろあるじゃないですか」
「私は、何もなかったけどな」
「……は?」

風見裕也が心底驚いたというような顔で、私を見た。思わずそっぽを向く。

「あのー……降谷さん? 今、この時間は、プライベートな時間でしょうか? それとも、仕事の時間でしょうか?」

色恋に疎い私でも、その質問がただの確認ではないことを理解している。

「プライベートだ、と答えたら、君はどうするつもりなんだ?」
「そうですね……とりあえず、あなたの手を握ってみたいですね」
「ふーん」
「で、どっちですか? プライベート? それとも、やっぱり、仕事の時間ですか?」

ベンチから立ち上がり、敷物にしていた風見裕也のコートを羽織る。

「そうだな……今は

 

 

【寸止めが大好きな女の書くあとがき】

寸止めばんざーい!!!!!!!!
風見×降谷(♀)でした。
降谷さんが、女の子であっても、風見さんには降谷さんの服を買っていてほしいし。
降谷さんは、ハロと一緒に生活していてほしい……。
そういう気持ちで書きました。私の書く風見裕也は、どの世界線でも、だいたい、遊んでます。

 

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