めかぶを買いに

風見がほんのり降谷さんのことを好き。

 


 

コンビニで、三つ入りのめかぶを買った。
めかぶの味と食感が好きだし。体にいいことをしている気分になれるから、食生活が乱れている時は、つけたしで買う。
おにぎりと、めかぶとサラダチキン。
午後二時。少し遅めの昼飯を食べていたら、あの人がやってきた。

「食べたままでいい」
「……はい」

おにぎりをほおばりながら、渡された資料をめくる。
計画の変更を告げらる。おにぎりを左手に持ち替え、資料にペンを入れていく。

「以上だ」
「了解いたしました」
「……僕も、ここで、昼飯いいか?」
「……どうぞ」

降谷さんが弁当を広げる。握り飯が二つに、セロリの浅漬けが少し。
ちらりと、窺えば、目の下にはクマ。降谷さんも、ずいぶん不規則な生活を送っているらしい。
三つ入りのめかぶを一つ、差し出す。

「これ」
「……めかぶ?」
「ええ。コンビニのやつですけど。案外おいしいですよ。インスタントの味噌汁に入れてもいい」
「いいのか?」
「……どうぞ」
「ありがとう」

プラスチック容器の、フィルムをはがし、降谷さんがめかぶを食べ始める。

「久々に食べた」
「うん。たまに食べるとうまいですよね……」
「そうだな」
「でも」

三パックのめかぶ。最後の一つを手に取り、フィルムをめくる。

「大学生の時に、一人旅で東北をめぐったんですけど。その時に食べた、めかぶは別格だったな」
「ホォー……たしかに、産地のものはおいしいだろうな」
「ええ。いつか……」

一緒に、食べに行きましょうと言いかけて、やめた。
いつかが、あるかなんてわからないし。俺と降谷さんは、旅行に出かけるような関係ではない。

「いつか?」
「……そのうち、米花百貨店で東北物産展やるだろうから、その時……おいしい、めかぶを買って食べましょう」

割りばしで、めかぶをぐるぐるかき混ぜる。
傍らで、降谷さんが、何かを囁いた気がした。

「え……?」
「いいや。別に」

――旅行の誘いだと思ったのに

 

 

 

【あとがきなど】

セブンイレブンのめかぶ食べながら、思いついた話です。
結構おいしいのでお勧めです。

 

 

 

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