変遷

〇俺×降から……風見の部下×降谷さんなどを挟みつつ。いつか、風降に至る物語(むなくそわるい)。
〇R-18
連載形式(全5話を予定)
誤解の続き

※風見の部下Aさん(オールバック)が参戦しました。
※部下B君の倫理観が、おかしい。
※執行人・茶のネタバレがあります。

主人公:
29歳になりました♡
身長185+。
男根→かなりデカい。
性格→29歳にしては、考えが幼い。

 


 

例の一件。
セフレの男とBが降谷を抱きつぶしてから一か月が経った。

降谷が、風見の部下。Aにぎゅうっと抱きつく。

「降谷さん……?」

 

Bに抱かれたあの日から、降谷は、再びセックスに対する見境を無くした。
むろん、以前のように、多くの男と関係を持つことはなかったが。それでも、セフレの男と風見の部下・Bとたびたび関係を持つようになった。
それは一対一であることもあったし。始まりがそうであったように、三人での行為になることもしばしばあった。

風見の年上の部下Aは、Bが、近頃、隣の課の男と親しくしていることに気がついていたが、特段、そのことを気にしてはいなかった。
二人は、年が近い。この前、上司の風見が設けた酒の席でも、ずいぶんと意気投合していた。
こういった仕事をしていると、人付き合いが限られる。だからこそ、部署内のつながりは大事にすべきだと考えるし、A自身も、公安部の刑事たちとの付き合いを大切にしていた。

Bと例の男が親しくなってから、一か月が経ったころだろうか。
Aは、風見に頼まれ、一人、セーフハウスの点検に訪れた。食料の備蓄の確認、盗聴器の有無、それから、侵入者の痕跡などを調べる。
締め固められた窓を開き、ふと、テーブルに目をやれば。うっすらと積もったほこり。そこに、手形のような跡を見つける。
誰かに確認してもらおうと思い、あわてて、外回りをしているはずのBに連絡をすれば

『ああ、それなら……』

と、のんきな声が返ってきた。
そして

『じゃあ、続きはそこでしますかね』

と、わけのわからない言葉が続く。

「ここでするって、なにを?」
『降谷さんですよ。今から連れて行きますから』

しばらく待機しているよう言われ、Aは、パイプ椅子に腰かける。
刑事部公安部が所有しているセーフハウス用の物件のうち。この部屋は、風見の管理下に置かれている。とはいえ、近頃の風見は多忙を極めていたから、この部屋の保守点検は、AとBの役割になっていた。

降谷が来ると聞き、Aは、清掃を行うべきかと考えた。だが、テーブルの上に着いた埃の痕などは、保管しておいた方がいいだろう。そう思って、前髪のほつれを整えながら、二人の到着を待った。

 

四十分後、彼らはやってきた。
Aは降谷を見て、少し驚いた。見慣れたスーツ姿ではなく、若者らしい、カジュアルな服装をしている。Bの方はといえば、いつも通りスーツのままで、その組み合わせがなんとも、アンバランスだった。
Aは、背筋を伸ばして、降谷に挨拶をした。一方、Bは、上着を脱いで、ハンガーにかけている。

「……Aさんは、降谷さんとは、まだだったんすね」
「なんの話だ?」

AがBにたずねる。状況が理解できないことに焦る。
降谷が、Aの方に近寄ってきた。距離がどんどんと詰まってくる。それこそ、大人二人が話をするには不適切なほどの近距離。どうしたらいいかわからず、Aはその場に立ち尽くした。そして、いよいよ、距離五センチまで迫った降谷が、Aに抱き着いた。

「降谷さん……?」
「軽蔑、してくれて構わない。だが……僕は、こういうことが好きで……そこにいるBや……警察学校時代の同期の男と……この部屋で数回ほど行為をした」
「え……?」

行為、という言葉の意味が分からない。
いや、わかるにはわかるのだが、それが、本当にその意味であっているのかどうか自信がない。

「普段はラブホ使うんですけど。……ほら、男三人で入れるところって、少ないじゃないですか?」

Bの言葉を聞き、Aは様々な可能性を考えた。
――自分の適性を試す抜き打ちの調査なのではないか?
とか。
――降谷があちらに寝返り、Bを従えて、ハニートラップを仕掛けているのではないか?
とか。

「降谷さん、あの……どういうことですか? 説明してください」
「ほら……降谷さん、……あれ、見せてやってくださいよ。そうすれば、Aさんも、引くに引けなくなりますって」

Bの遠慮のない言葉遣い。もともと、敬語が崩れやすいところがあったが、それにしたって、あまりにも、礼節がない。

「おい……B、降谷さんに、その口のきき方は……」
「……A、いいんだ」

降谷はAの体から離れ、そして、イージーパンツと、下着を脱いだ。
突然のことに、Aは、言葉を失う。
降谷は、顔をこわばらせたまま、Aに背を向け、尻をつき出した。
二人が到着する前に、窓を締固めたから、部屋の明かりは裸電球だけで。その不十分な明かりに照らされた降谷の素肌のなまめかしさに、Aは息をのんだ。

「見える……か?」

目をそらすべきだ。そう思うのに、どうしたって、そこを凝視してしまう。
形のいいヒップ。その、くぼみから、白い粘液がとろとろと流れ出している。

「え……?」
「すごくないですか? 降谷さんのそこ」
「いや……その、これは?」
「え……? 俺が出したやつですけど?」

強烈なめまい。Aは、どうしたらいいかわからず、上着を脱ぎ、それを、降谷の尻の上に被せた。
降谷は、びっくりしながらも、それを肩に羽織り。ぺたんと床に座り込む。

「お前ら……あ、いや、降谷さんも、Bも、ちょっと、おかしいですよ。どういうことですか……? これは?」
「すまん……Bは悪くないんだ。悪いのは僕で……。僕……こういうことが好きで。今日だって、彼を誘ったのは、僕だ」

先ほどまで、Bと二人。ラブホテルで大きな声を出していたせいで、降谷の声は、ほんの少しだけ、かすれている。
丸まった背中が、なぜだかとても寂しそうで、Aはそれ以上は何も言えなかった。

「降谷さん。性欲凄いから。俺たち、それにつき合ってるんです。まあ、こっちとしても、性欲処理になるから。助かるっていうか……降谷さん、わりとなんでもゆるしてくれるし」

Bが、降谷の左手首を掴み、それを引っ張り上げる。

「だからといって……降谷さんの呼び出しに、いつだってこたえられるわけじゃないでしょ? なんやかんや、俺たち、忙しいし。……だから、Aさんも、協力してくれると助かります」
「……協力?」

無理やり立たされた降谷は、力なくBの体に寄りかかった。
Bの右手が、降谷の尻を、なでる。
Aは眉をひそめた。

「……っ……ふ……B……」

涙にぬれたような声。それは、性的な快感によって、そうなっているだけなのだが、Aには、泣いているようにしか思えなかった。

上司の上司。
警察庁警備企画課、ゼロの捜査官。頭脳明晰で容姿端麗のエリート様。
Aにとって、降谷は、比較的身近な存在でありながら、しかし、どこか、別世界の人間だった。
その降谷が、欲に抗えず、悲しそうな声でBの名を呼ぶ。
風見よりも二つ年上。降谷よりも三つ年上のAには、今の降谷がひどく、かわいそうな存在に思えた。
だが、自分に何ができるというのだろう?

「A……見苦しいものを見せてすまなかった。この件に関わる気がないなら、今日のことは、忘れてくれ」

Aはため息をつき、前髪に指を通した。
ぴしりと撫でつけられた、オールバックが、ゆるりと、乱れる。

「こんなの見せられて、忘れられるわけ、ないじゃないですか……」

そう。放っておけるわけがない。
降谷がAの方をふりむいた。Aは無言のまま、二人に近づき。降谷の顎に指を添える。
そして、その唇を包み込むような、優しいキスをした。
降谷は目を細めながら、唇をほどき、Aの舌を迎え入れた。

その晩。Aのセックスは酷く優しかった。だが、その優しさが、じれったさを生み、そして、降谷をずいぶんと狂わせた。
Bに対し、手本を示すよう。Aは心底、丁寧に、降谷の体をまさぐった。

 

*****

降谷が、Aさんと関係を持ったとB君から聞いたとき、俺はなんの感想も抱かなかった。
そのうち、そうなるかもしれないと思っていたし。B君と一緒に降谷を抱きつぶしたあの日から、降谷への感情は、熱を失っていた。
あれ以来。降谷とは、一対一でセックスをするときもあったし。3P。酷いときには4Pに至る時もあった。
公安部が、セーフハウスとして確保しつつも、ほとんど使用されることのない、その部屋は、ヤリ部屋のような場所になっていた。

Aさんに抱かれるとき、降谷は、ずいぶんとうっとりした顔をする。強引にされるのが好きなのだと思ってきたけれど、案外そうでもないのかもしれない。そう思って、俺が優しくしてやれば「気持ちが入ってない」「いつもみたいに、もっと、思い切りよく腰をふれ」などと、かわいくないことを言う。だから。結局俺は、降谷をやさしく抱いたことがないままだ。

季節は流れ。俺たちが再開してから一年と、九か月が経とうとしていた。

公安部の職員に、祝日は関係ないとはいえ、今年のゴールデンウィークはとにかく悲惨だった。俺自身は、直接その案件に関わることはなかったが、公安部の職員が殉職したこと。IoTテロを未然に防ぐことができなかったという失態。そして、ハクチョウの一件は、俺達に大きな傷を残した。
それからしばらく、俺たちは、みな忙しく。どうやら、降谷は、酷いけがを負ったらしい。

だから、しばらく、お誘いがなかった。

今までがおかしかったという自覚がある。降谷の呼び出しで、AさんとB君、俺のうち、身体が空いている者がだれかしらかけつけて行為をする。そんな日々がずっと続くわけがない。

降谷が、警察庁に異動になった時のことを思い出す。あの時も、特にお別れの儀式もないまま、俺達は関係を閉じた。
今回も、あの時のように、俺達の関係は、自然と消滅していくのだろう。そう思った。

だから、数か月たった頃。
真夏の夕暮れ時、降谷から呼び出され俺は、面食らった。それと同時に、どこかで、うれしいと思う自分もいて、心が定まらない。

AさんとB君が、どうしていたかは知らないが。俺と降谷は、二人で会う時は、ラブホテルを使っていた。

春ごろまで、よく通っていたホテルに現地集合し、それから、お互い、何も語らぬまま、肌を寄せ合った。
降谷の左肩には、うっすらとした、傷跡が残っていた。きれいに、縫合してもらったのだろう。傷の大きさの割には、肌のひきつれは小さく。薄暗い部屋の中では、ほとんど気にならない程度だった。
セックスを終える。
俺は、降谷に説教をしなかったし。降谷も、俺を挑発するようなことを言わなかった。
だから、きっと、今日が最後なのだと。そう思った。
それなら、せめて、今日くらい、ホテル代をおごらせてほしいと思い、降谷に、何時に部屋を出るかたずねた。

「今日は、君さえよければ宿泊のつもりだった。例の一件の後処理も済んだからな。時間は、あるんだ。それに……」

降谷が、ふっと笑った。
別れを告げられる覚悟を決め、降谷のきれいな顔を見つめた。

「犬の世話は風見に頼んであるから。今日は安心して過ごせる」
「……?」

犬の世話……?
それを風見さんに……?

予想していなかった方向から飛んできた衝撃。俺は、動揺を隠せない。

「は? 犬って……? ゼロの捜査官が、犬なんて悠長に飼ってる場合かよ?」
「……それが。庁舎に行く回数も少ないからな……。今の僕は、フリーランスみたいなもので、ある程度の仕事の調整は自分でできるから、案外どうにかなるんだよ」
「だからって、犬を飼うか? 普通?」
「……しょうがないだろ? どこか、重なって見えてしまったんだから……」
「なにが?」
「初恋の人の気を引こうとしていた頃の僕に……どこか、似てたんだ」

初恋。それは、降谷の人生において、かなり大きな出来事の一つだったのだと思う。
男漁りを始めた理由も、初恋。
警察官になろうと思った理由も、初恋。
そして、犬を飼おうと決意した理由も、やっぱり初恋なのだ。

「いや……だからって」
「たしかに、君の意見は、至極まっとうだ。だがな。犬のいる生活はいいぞ? それに、今はペットカメラや自動給餌機もあるし。僕のペットは、風見のことを、ずいぶんと気に入っている。な? 安心だろ?」

降谷の、こんな明るい顔を見たのは初めてだった。

冷めきっていたと思っていた、恋心。鎮まり切ったと思っていた、嫉妬が、むくりと顔を出した。
果たして俺は、なにに嫉妬しているのだろうか? 犬か?
いや……犬は犬でも、俺はきっと、風見裕也という男に嫉妬しているのだ。
仕事上のあれこれを、風見さんが引き受けるのは仕方がない。だが、犬の世話……これは、果たして、ゼロの右腕がすべき仕事なんだろうか? 俺では、だめだったんだろうか?

「降谷、風見さんのこと、こき使いすぎだろ? 今は、パワハラとかうるさいんだから、気をつけないと……」
「わかっている……だから、それなりに、ねぎらう必要がある時には、ちゃんとねぎらっているよ」
「ふーん……じゃあ、風見さんとも寝てるんだ」
「いいや。風見とはしないよ」

その言葉に、今度こそ、俺は、声を荒げた。

「風見さんの部下とはやってるのにか?!」
「……ああ。でも、風見に悪いと思って、二人とは関係を切ろうと思ってる」

風見さんに悪いと思って……?
だけど、俺とは関係を続けるのか? 降谷にとって、俺は、一体どういう立ち位置なんだろうか。
俺は、降谷の右腕でもなく、ペットの世話を頼めるような存在でもなく、関係を清算してもらうことすらできない。

「降谷……お前な……」
「なんだ? 君は、褒めてくれると思ったのにな。君、僕が、いろんな男と寝ること気にしていたろ?」
「……それは、お前が、あまりにも度が過ぎてるからで」
「ふぅーん。それより……寝る前に、もう一回どうだ?」
「おい、俺は、真剣な話を……」
「説教なら、セックスしながら聞いてやる。君がその気になれないっていうなら、寝転がっているだけで、かまわん。僕は好きにやるから」
「おい……! ふざけんな……! お前、そうやってセックスに持ち込めば、自分のペースになると思い込んでるんだろ? させるかよ!」

降谷の体をひっくり返す。
そして、精液を掻きだしたばかりの尻に、ペニスを挿しこんだ。

「あ……っ……や……っいた……っ」
「あ……? 痛いのも、気持ちいいくせに……なに言ってるんだよ? ここ、ガチガチだぞ。説得力ねえんだよ」
「やっ……奥……だめ……っあ……そんなに、急に……♡」

どうせ、こうやって、降谷の体を好きにしたって。こいつは、俺の思い通りにならないんだ。そう思ったら、涙がぽろぽろと止まらない。
降谷の尻に、腰を打ち付けながら。俺は、降谷が、ふり向きませんようにと、ただただ、そう祈るしかなかった。

 

【あとがきなど】

私は、なんて罪深い生きものなんだろう……
と、思いつつ。今日も私は、むなくそなお話を書くのです。
性描写は、あんまり入れなかったんですけど。部下B君と、俺氏のセックスが、ガツガツ系だとすると。Aさんのセックスはねっとり系です。
ふるぴ……ひさびさのねっとり系のセックスを、堪能してしまったのではないでしょうか。

そして、私が、俺君だったら、地味に一番いやなのって。
風見裕也が、降谷零とセックスすることより。

「あの降谷がペットを飼い出した上に、どうやら、風見さんもその世話を手伝っているらしい」

だったりします。
だって、セックスだったらね。俺君の方がいっぱいしてるし。二十代前半の、きゅるきゅるふるぴのことも、抱いてるわけなんで……マウント取れるんですけど。
犬……やぞ?
仕事のことならあきらめがつきますが……犬の世話……やぞ?
無理……
降谷お前、犬飼うようなやつじゃなかったじゃん。しかも、その世話を風見さんに手伝わせるって何???
しんどみが深い……

 

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