なんにせよ。また会えるなら、それでいいんです

〇降谷さんの中途半端な初体験(R-18)
〇風見さんが降谷さんをゆする
〇人並程度にしか感じない降谷さん
〇風見さんの風見さんがとにかくでかい。
〇降谷さんの降谷さんが仮性
〇風見さんが少し変態っぽい
〇いろんな要素を詰め込みすぎて、少しとっちらかってます
〇ギャグだと思います


 

風見裕也は焦っていた。
降谷零と連絡が取れなくなってからすでに1週間が経過していた。

降谷が安室透の名義で借りている部屋をたずねる。
覚悟を決めて、合鍵で戸を開ければ、そこは、もぬけの殻になっていた。部屋の中を見聞し、クローゼットの中も、戸棚の中も確認した。けれど、何一つ残っていなかった。ベランダのプランターもなくなっていたし、部屋には髪の一本も落ちていなかった。

風見は、誰もいない部屋の壁を殴りつけた。石膏ボードがぐしゃりとへこみ、壁紙が破れる。
しゅるりと、ネクタイをほどき、彼はその場に座り込んだ。

(無事でいてくれ)

 

 

風見裕也が、MAISON MOKUBA の壁を破損させてから、10日が経過した。

あいかわらず、降谷零からの連絡は来なかった。心配はした。不安にもなった。だけど、絶望はしていなかった。
例の仕掛けは、まだ発動していない。死んだときに作動する仕掛けが、生存証明として機能するなんて、皮肉だな、などと思いながら、風見裕也は4日ぶりに家に帰る決意をした。
部下たちに、明日休むことを告げ、庁舎を後にする。

玄関の前に立った時、風見は少し違和感を持った。けれど、とても疲れていたし、少し投げやりな気持ちにもなっていたから、警戒はしつつも普段と変わらない動作で部屋の鍵を開けた。鍵を回すとき、妙な引っかかりを感じた。
そして、扉を開けると、見慣れた靴が転がっており、浴室からはシャワーの音がした。
今更手遅れだと思いながらも玄関扉を静かに閉め鍵をかけた。そろそろと靴を脱ぎ。ジャケットをハンガーにかけ、脱衣所の戸を開けた。

洗濯機の上に置かれた衣類。ループタイとサングラス。風見裕也は、そのすべてに見覚えがあった。なぜなら、それらはすべて、彼が買い集めたものだったから。
着替えの横に記憶媒体のようなものが置いてある。風見は、それを手に取り、スラックスのポケットにしまった。

深呼吸をひとつして、ひとおもいに浴室の扉を開ける。

「降谷さん!!」

浴室の蒸気で風見裕也の眼鏡がくもった。
ザーッと音がして、ワイシャツがぐしゃぐしゃに濡れた。きゅっと、蛇口を締める音がする。風見はあわてて眼鏡を外し、目を細めながら状況確認をした。

「のぞきとは、悪趣味だな」
「お言葉ですが……しばらく行方をくらましていた上に、人の家に不法侵入して、シャワーを浴びてる方がよほど悪趣味ではないですか?」
「しょうがないだろ。あの部屋解約しちゃったし、ここくらいしかシャワーを使える場所がなかったんだから」

そう言うと、降谷は、浴室のドアに手をかけた。
風見裕也は、あわてて半身をねじ込み、ドアが閉まるのを阻止した。

「おい……僕は、まだ、シャワー浴び始めたばっかりなんだよ」
「降谷さん……! そんな、悠長なこと言ってていいんですか?」
「はあ……?」
「大事な情報媒体を、あんなところに置きっぱなしにするなんて……俺も舐められたものですね」
「風見……! あれをどこにやった??!」
「さあ、どこでしょう」

降谷が風見裕也の胸ぐらを掴んだ。

「あれがないと……!」

風見は、降谷零を抱き寄せ、ぐっと下半身を押しつけた。
降谷の体が、こわばる。

「ねえ、降谷さん……情報を取り返したいなら、取引しませんか? 探り屋のあなたなら、俺が何を望んでいるか…わかりますよね?」
「君…上司をゆするのか……?」
「部下の信用を損ねるような行為をしているのは、どこのどなたでしょうか?」

降谷零は、体の力をぬいた。

「わかった」
「では……」
「ただし、気持ちよくしなかったら、絶対にゆるさない」

風見裕也は、降谷零を解放し、バスタオルを2枚手渡した。

 

 

バスタオルで拭いただけの降谷の髪はしっとりと湿っている。降谷は全裸のままベッドの端に座った。
その様子を眺めながら、風見は、びしょびしょに濡れたシャツとインナーを脱ぎ捨てた。スラックスのポケットに手を入れ、鍵と記憶媒体を取り出し、床頭台の上に置いた。
そして、引き出しを開けて、未開封のローションとコンドームを取り出す。

「……準備万端だな」
「ええ。結構前から、あわよくばって思ってましたから」

風見裕也はベルトのバックルを外し、スラックスをすとんと床に落とした。続けざまに靴下を脱ぐ。
そして、降谷を押し倒しながら、ベッドの上に乗った。
仰向けになった降谷の首にかじりつく。眼鏡のフレームが降谷の顎にぶつかる。だけど、風見は、眼鏡を外さなかった。
鎖骨のあたりに舌を這わせ、右手で、降谷の脇腹をさすり、左手で、胸元をまさぐり、右脚で降谷の中心部に刺激を入れた。濡れたシャツを脱いだばかりの風見の体はしっとり濡れていて、ぴたりと降谷の肌にはりついた。
風見の男根が下着の生地を押し上げる。
降谷の体は最初、少しも反応していなかったけれど、様々な刺激をうけるうちに、徐々にではあるが呼吸が乱れていった。風見は、体を起こし降谷のペニスに触れた。

「かわいい……さきっぽが、少しだけ……こんにちはしてますね」

そう言いながら、半勃ちのそこに口づけをした。

「こんにちは…って君な……!」

風見の舌が、降谷の裏筋をなめ上げる。降谷の体から力が抜けた。その隙をついて、風見裕也は降谷の両脚をぐっと開かせた。

「降谷さん…やっぱ、体やわらかいですね」
「……そりゃあ、まあ、ストレッチとかしてるからな…」
「では、ローションとってください」
「……うん」

降谷は床頭台の上に置かれたローションを手に取り、風見に渡した。

「……降谷さん? 本当にいいんですか?」
「うるさい! だって、これに応じないと、あれを返してくれないんだろ? ゆするなら、もっと徹底的にゆすれ」
「…ああ……そうですね。では失礼します」

風見は、ローションを開封し、自分の手のひらの上にそれを垂らした。手のひらの熱で温まるまで……などと考えたけれど、ローションを温めている隙に、逃げられたとなると、とても間抜けだから。冷たいままのローションで愛撫を始めた。
最初は、しわの周りをなぞるように。それから、指を入れ、段階を追いながらそこを広げていった。
降谷は身をよじらせながら、その違和感に耐えた。性器もすっかり萎えている。

「なあ……さっさと、挿れてくれないか……なんか、気持ち悪くて」
「まあ…俺も、はいるんなら、そうしたいんですけどね」
「………君…もしかして、でかいのか?」
「ご存じなかったんですか? 俺が巨根なの……結構、有名な話ですよ」

降谷が黙りこむ。

「……仮眠明けに、朝勃ちしたところを目撃されてですね。それが、何回か立て続けにあって……俺のサイズがわりと大きいことが知れ渡ってしまって」
「そうか……」
「……あのー……もしかしてですけど、降谷さん…男とするの初めてだったりします?」
「え…? いや、まあ……そうだけど」
「まじっすか?」

降谷零は、長い右脚をふりあげて、風見の左ほほに軽めの蹴りを入れた。眼鏡がベッドの上に落ちる。

「ちょっと…いきなり危ないじゃないですか?」
「君が悪い」
「なんで……?」

風見は眼鏡を拾いあげ、それを降谷に渡した。

「だって……君…僕のこと……男とそういうことしてる…って思ってたんだろ?」
「……まあ、仕事内容を考えて、そういうことしてても不思議じゃないかなって……。それに、降谷さん…とにかく顔がいいし……声もセクシーだし、体もすごくきれいだから……」

降谷は、風見をにらみながら、眼鏡を床頭台の上に置いた。
その様子を見届け、風見は示指と中指を降谷の中に突き刺した。

「……ッ」
「初めてなら、なおのこと……丁寧にほぐさないとですね」

 

 

それから、30分ほど風見裕也は降谷の中をいじり続けた。さすがの降谷も少し気持ちいいような気がしてきた。それでも、まだ、異物を受けいれる違和感の方が勝っている。

「風見……いいから、もう……いい加減、挿れて…さっさと出して…終わりにしてくれ!!!」

降谷が懇願すると、風見は、眉間にしわを寄せた。

「でも……降谷さんを気持ちよくするって約束しちゃいましたし」
「もう…あの約束は、いいから」

ぬぷん……と音を立てながら、風見は自分の指を引っこ抜いた。

「わかりました……では、挿れましょう。降谷さん、そこのゴム取っていただけます?」
「……うん」

降谷は床頭台に置かれた新品のコンドームを風見に渡した。

「……ねえ、降谷さん? やけになってません?」
「やけ……?」
「いや、別に、降谷さんがいいならいいんですけど」

風見は先走りでシミのできたパンツを脱ぎ捨てた。降谷の視線がそこにくぎ付けになる。
慣れた手つきでゴムをつけながら風見が言う。

「……でかいでしょ?」
「……まあ…でかいな……」
「まあ…ご厚意に甘えて少しは挿れてみますけど……俺、こんなだから、挿入できなかったとかよくあるんで…あんまり気にしないでくださいね」
「……うん」

風見の先っぽが、降谷の入り口を、ぐにぐにと刺激する。

「では、深呼吸してください?」
「うん……」
「ちょっとだけ、チンコ…扱きますよ?」

風見は、降谷のアンダーヘアを軽くなでてから、ゆるゆると、手コキをはじめた。

「ん…っ」

降谷のそこが、少しだけ硬くなっていく。

「じゃあ、挿れますよ?」

風見は少しずつ降谷の体に体重を乗せていった。

「降谷さん、深呼吸」
「うん……」

先っぽのでっぱりが、ぬるん…っと降谷の体の中に侵入した。風見は、小刻みに腰を動かしながら、挿入を深めていった。
先端から3割ほどが入ったところで、降谷の体から冷や汗が噴き出した。半勃ちになっていたペニスも、へにゃりと力を失っている。
風見は腰の動きを止め、降谷の下腹をなでた。

「降谷さん……? 苦しい?」
「う…ん……」
「やめる?」
「ううん……やめな…い」
「でも……まだ、ちょっとしか入ってないですよ…? ……抜きますね」
「……抜かなくて…いい…っ。僕は大丈夫だから…っ……ひとおもいに挿れて、腰振って……さっさとイけ」

そう言う降谷の声はとても苦しそうだった。

「……降谷さん。降谷さんの中ね……正直、きつすぎて、俺も痛いんですよ」
「……え?」
「でも、中途半端でもいいから、降谷さんの初めてをもらいたいし……。少しだけ、動きますね?」

そう言うと風見裕也は、降谷零の浅いところを静かに往復した。風見のカリが降谷の中をひっかく。降谷には、それが少し気持ちよく感じられた。
3分ほどのピストンを終えると、風見はずるりと自分のものを引き抜いた。少し強めの刺激が降谷の体に入る。

「あ……っん」

降谷は声を抑えることができなかった。

「あ、やっと少し感じましたね?」

そう言いながら、風見はコンドームを外し、降谷の上に体を重ねた。

「ねえ、降谷さん……」
「……ん…なんだ?」
「降谷さんも、前の方が気持ちよさそうですし…一緒に抜きましょ?」
「は?」
「俺と降谷さんのやつを、2本まとめてこするの。ね? 俺、降谷さんのおなかの上に出したい」
「……わかった」

降谷は、ためらいがちに、自分と風見のものに、手のひらを添えた。その手の甲に、風見が自分の手のひらを重ねる。

「降谷さん、キスしてもいい?」
「……うん」

二人はキスをしながら、ぬちゃぬちゃと二本分のペニスを扱いた。そして、あっという間に白いものを吐き出した。

「……あー…よかった…降谷さんは気持ちよかったです?」
「……うん」

風見が降谷の体から離れる。そして、眼鏡をかけ、降谷の下腹部に右手を伸ばした。

「……おい…なにしてんだ?」

風見の右手が、降谷のへその周りをぐるぐるとなでる。

「んー……降谷さんの精液と、俺の精液が混ざるの…なんか…いいなと思って」
「は?」

降谷は身体をおこし、風見をにらみつけた。二人分の精液が、降谷の下腹を伝い落ちた。

「降谷さんの体、やっぱ、ザーメン映えしますよね……一度、かけてみたいなと思ってたんです」
「……君…真面目そうな顔して、まさか……変態か??」
「あー…それも、結構、有名な話らしいですよ」
「は?」
「公安部の独身連中でAVの貸し借りしてたことがあるんですけど。なんか、俺の選ぶタイトル、ちょっと、アレらしくて」
「おい……AVの貸し借りって、君たち暇なのか?」
「いやいや、多忙で彼女作る暇がないからこそですよ」

ムードのかけらもないピロートーク。風見裕也は、床に落ちたバスタオルを拾い上げ、それで、自分の腹の上をぬぐった。

「ところで、降谷さん。記憶媒体の方は、もういいんですか?」
「……ああ、返してもらうぞ……どこに隠したんだ?」
「いや、隠すもなにも……床頭台の上ですよね」
「……」

風見が降谷に抱き着いた。

「おい…! なんだよ」
「降谷さん、絶っっ対っ途中で気づいてましたよね? 俺が記憶媒体をそこに置いたの」
「……気づいてない」
「俺、一応、確認しましたよ? ローション取ってもらう時も、ゴム取ってもらう時も。本当にいいの? って。そもそも……MOKUBAを引き払ったっていうのも嘘ですよね?」

風見がそう言うと、降谷は風見をにらみつけた。

「なんで、わかった?」
「俺、10日ほど前に、あなたの部屋の壁ぶんなぐって、穴あけちゃったんですけど」
「え……君、僕の部屋の壁に穴をあけたのか?」
「ええ。10日もあれば普通は、管理会社などの出入り業者が気づくでしょ? それなのに騒ぎにならなかったし……おかしいなと思って、家主に確認を取ったら案の定、賃貸契約は解除になっていなかったんです」

降谷は、うつむきながら言った。

「……まあ、今回の一件が終われば、あの部屋に戻る予定だったしな」
「ねえ、降谷さん。なんでわざわざ俺の部屋でシャワーなんて浴びたんですか? ビジホとかでもなんとかなったのに? ……俺が帰ってくる時間を見計らうようにシャワーを浴びたりして……。床頭台の上にある記憶媒体には、気づかないふり……。俺ね、最初は怒ってましたけど。途中から、毒気抜けて怒る気失せましたもん」

そう言うと、風見裕也は、小さな声で笑った。

「……すまん」
「別に。降谷さんが俺に言えないことがあるのは、しょうがないことですし……。どーせ、また、潜らないとなんでしょ?」
「うん……」
「結構、危ないんですか?」
「わからない」
「じゃあ、結構、長い?」
「まあ、そこそこに」

弱弱しい声で受け答える降谷零を、風見裕也はぎゅーっと抱きしめた。

「そうですか……無理して会いに来てくれたんですね?」
「うん」

風見が降谷の耳元でささやいた。

「ねえ……降谷さん、実は、俺とえっちしたかったんでしょ?」
「……え?」
「だから、俺の帰宅時間を狙ってシャワーを浴びてたんですよね? で…最後までやりたかったから、床頭台の上の記憶媒体の存在を無視し続けたんですよね?」
「いや……それは、ちょうど死角で気づかなかったから……」
「じゃあ、記憶媒体についてはそういうことにしますけど。……その後も、俺は挿入なしに持っていこうとしたのに、降谷さんは挿れるのにこだわってましたもんね?」

降谷の手が、枕に伸びた。そして、その枕で風見裕也のことをひっぱたいた。

「ちょっと……降谷さん、わりと痛い……枕ですけど、降谷さんがやると…それ、わりと痛いです」
「全体的に君が悪い」
「俺は、事実を言っているまでです」
「……君な…今日は、もう時間が無いからあれだけど…。あんまりそういうこと言ってると、次に会った時、お説教だぞ? それも容赦ない説教だ」

降谷が枕を投げつけると、風見はその枕をキャッチした。そして、枕を床に放り投げ、降谷の手を握る。

「…降谷さん」
「なんだ? 謝罪する気になったか?」
「……いえ」
「じゃあ、なんだ?」
「俺、楽しみにしてます」
「は?」
「降谷さんに、次に会ったとき、説教食らうの……楽しみにしてます。……だから、お仕事、がんばってきてくださいね」

おわり

【あとがきなど】

幼少期に好きだった童話=その人の性癖というのを見かけて。
子供の頃に大好きだった「羽衣天女伝説」をモチーフにした話を書きました。
水浴びしている天女の羽衣を隠して天界に帰せなくする男の話。子供の頃、すごく好きでした。

風見さんは、羽衣を、隠したふりをして、すぐに見つかる場所に置いておく男だと思い、このようなお話にしました。
性描写については、いつも感じやすい降谷さんを書いていて、先日、冷感症の降谷さんを書いたので

「人並程度にしか感じない降谷さん」

を書いてみたくなり、書いてみました。
すごく難しかったです。
冷感症の方がぜんぜん書きやすかった……

あと、私は、受けの下腹部の上で攻めが二人分の精液をかき混ぜるシチュエーションが大好きなんですけど。
あんまり、見なくないですか???
なんで、こんな、素敵なシチュエーションが流行らないのか不思議です。
それこそ、男性同士の性行為じゃないと成立しないプレイなわけで……
これ、受けがドン引きしてもかわいいし。受けが「攻め君……それすんの好きだよね?」って余裕発言かましてもかわいい…ので、もう……本当、流行って……

 

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