君が、僕を捕まえて

!注意書き!

〇警察の薬物汚染がひどい感じの話
〇風見さんが、都市伝説とかオカルトを好みます
〇風見さんがばりっばりに違法作業をします
〇オリジナルキャラ(協力者)が出てきます
〇複数のモブ×バーボン要素があります(むりやり)
〇ベルねえさんちょっと出てきます。
〇風降の身体的な絡みは、ほとんどないけど、風降だといいはります

※R-18についてですが。このお話に関しては…18歳未満の人には読んでほしくないなあという配慮でつけてありますので、直接的な性描写はほぼないです。

いろいろと、問題があるお話なので、何でもゆるせる方のみどうぞ♡


 

 

都内のビジネスホテルの一室。
風見裕也は、協力者に報酬を渡した。
協力者の瞳はきらりと輝き。
風見裕也は、舌打ちをする。

「で、本国からは、どういう方針が降りてきてるんだ? 日本支部はそれに対してどう対応する?」
「やだな。警視庁公安部の刑事さんともあろう方が、あんな都市伝説を信じてる? CIA日本支部なんて与太話を?」

協力者の男は、ツインルームのベッドに腰をかけ、風見裕也から受け取った報酬を手のひらの上に広げた。
風見は仁王立ちし、じろりと、その手元をにらみつけた。

「悪かったな。俺は、特命リサーチ200Xを毎週欠かさず録画し、ムーを読んで育ったんだ。ドッペルゲンガーを信じるし、陰謀論も面白く読んだし、アトランティスはあったと信じてるんだよ」
「へえ……ところで、次からは新品の注射針も頼めない?」

男は、ビニール袋に小分けされた、白い粉末に口づけをしながら言った。

「自分で準備しろ」
「サービス悪いな。末端のヤクザだって、医療用の針をつけてくれるっていうのに」
「そりゃあ、顧客が、肝炎やらエイズやらになったら、商売が先細るからだろ。あれは、サービスでもなんでもない。まあ、営業努力とは言えるだろうが……」
「それもそうか。しかし、これに関しては…注射針はないけど……君んとこが準備してくれるやつが、一番、質はいい」
「当然だ。粗悪品を渡して協力者の頭がぶっ壊れたら、元も子もない」

ぶっきらぼうに答える風見裕也を見て、その男は、口を大きく開けて笑った。
しばらく笑うと、男は、ジャケットの胸ポケットに報酬をしまい、脚を組んだ。

「ありがとう。君たちの営業努力に感謝するよ。……さて、では、例の件について手短に話をしようじゃないか……」

 

 

風見裕也は、違法作業というものに慣れている。

協力者を懐柔するためであれば、犯罪歴のもみ消しを行うこともあったし。
違法薬物を提供することだってある。
むろん、この事実が公になれば、公安部の信頼失墜は免れない。
そもそも。
なにもなくとも、特高警察の流れをくむこの組織を忌み嫌うものは多いのだ。

協力者と別れた帰り道、チェーンのコーヒーショップで、一杯のカフェラテを飲む。
ラストオーダーぎりぎりに駆け込んだ店内に、人はまばらで。
風見は、閉店時間まで、ぼんやりと窓の外を眺めた。

上司である降谷に、合法的手段という線を残すように諭されたことがある。
けれど、そういう降谷だって、違法作業の必要性を否定しているわけではないのだ。
職場の鍵付きのロッカーの奥には、まだ、500グラムほどの在庫がある。
この国の違法薬物の人気商品は、戦後すぐからずっとアッパー系と相場が決まっていて。
その白い粉と、警察の関係は、深く……そして複雑に絡み合っていた。

風見自身は、その粉を、体に取り入れたことは一度もない。

しかし、自分も「使用者」には変わりないと考える。
この物質の持つ作用を利用して、必要な情報を得ているのだから。
ある意味では、この白い粉に依存をしているのだ。

いくら、違法作業に、慣れたとはいえ。
この国を守るために奔走する上司に必要な情報を届けるためとはいえ。
良心の呵責にさいなまれることもある。
それであっても、風見裕也がこの仕事を続けることができるのは。
彼が人並外れた楽観主義者であることが要因かもしれない。

カフェラテのトレイを返却し店を出る。
風見裕也は、新しくリリースされたスマホゲームのことを考えながら、夜の街を歩いた。

 

 

 

上司である降谷零から、電話がかかってきたのは、その三日後のことだった。
風見は電話越しの降谷の声を聴き、わずかな違和感を覚えた。

「いいか? お前ひとりで来い」
「……はい」

それでも、発信履歴は確かに降谷からのものであったし。声だって降谷の声に違いなかった。
ひっかかりを覚えつつも、上司からの呼び出しに応じ、指定されたマンションまで公用車を走らせた。

いつでも、拳銃を発砲できるよう準備をしつつ。指定された部屋に押し入る。
なんの変哲もないワンルーム。
に、おかれた部相応なほど大きなベッド。

そこには、立位のまま腕を組む降谷と。ベッドにぐったりと倒れこむ、降谷の両方がいた。

「ドッペル……ゲンガー?」

風見の、間抜けな声を聴いて。
立っていた方の降谷が笑った。
いつもの降谷よりも、少し背が低い。

「あの……これは?」
「この子、ある男のことになると、冷静さを失っちゃうのよね……どうも、判断ミスしたみたい」

少し背の低い降谷が、降谷の声で、女のような口調でしゃべった。

「あなたは?」
「んー……私ね、この子に死なれると困るの。まあ、これくらいで死ぬような男でもないのだけれどね……でも、このままにしておくのは大変まずいの。だから、後始末、よろしくね。わんこちゃん」

それだけ言うと、彼女は、とても優雅にこの部屋を出ていった。
ポカンとしながらも、ワンルームに置かれた、ダブルベッドの上でぐったりと横になる降谷の様子を観察する。
褐色の体に、白いなにかが、大量に付着していて。
髪の毛はぐちゃぐちゃに乱れており。
尻の穴からもドロッとしたなにかが、垂れていた。
散乱した衣服。
体中に、かまれた痕や、縛られたような跡。
それに、腕には、注射痕が見受けられた。

胸郭は、規則正しく上下している。
呼吸は正常のようだが、なんらかの薬の作用でぐったりしている降谷は、風見の呼びかけに、少しも応じなかった。
降谷の右腕をつねる。
ゆっくりではあるが、降谷の右腕は風見の指を振り払おうという意志を見せた。

 

 

――目を開ければ、見覚えのない天井。

降谷零は、ベッドから飛び起きて、部屋の様子をつぶさに観察した。
ベッドサイドの目覚まし時計を見ると、時刻は夜中の2時。

物はあまりないが、随所に生活感があって。
寝具の色から、判断するに、男の家。
すると、聞きなれた足音がして。

がちゃりと、ドアが開いた。
ぱちんと、部屋に明かりがつく。

「あ、起きましたね」
「風見……?」
「ええ、ここ。私の家です。……降谷さん、水」

風見に促されて、ベッドに座り。
手渡された、ペットボトルの水を飲み干した。

「何時間?」
「14…いや、13時間くらいですかね。降谷さんのスマホから着信あって迎えに行って」
「ああ、僕が君を呼んだんだ?」
「覚えてない…? ですか?」
「ああ。まったく。僕のスマホは?」
「ベッドサイドに」

降谷は自分のスマホを手に取ると、発信履歴を確認した。

「本当だ。12時16分。確かに、この電話から君の電話への発信記録があるな」
「ええ。……で、ですね」
「うん」
「降谷さん、注射、打たれてるでしょ?」
「え…ああ。本当だ……痕があるな……というか…この服は?」
「あ、すみません。俺の服です。新品を準備する時間がなくて」
「……いや、いい」

風見は、降谷のすぐ目の前で正座をした。

「降谷さん、昨日のことを、覚えています?」
「まあ、ある程度までは……どこで、なにをしようとしていたか、まではな」
「薬を打たれたことは?」
「なんとなく……?」
「じゃあ、体中にある歯形とか……そのようなものについては?」
「さあ、その辺はさっぱりだ」

降谷は、そう言いながら、脚を組んで。
空になったペットボトルのラベルをはがした。

「俺が、降谷さんに呼ばれた時……降谷さんは、その薬のせいで、もうろうとしていて……で、おそらく、薬のせいだと思うんですが…その……性行為を持ちかけてきたんです」
「へえ」
「ええ。それで……ですね。いくら乞われたとはいえ、無体をはたらき……大変、申し訳ありませんでした」
「ああ……それで…か。直腸のあたりがもぞもぞするのは」
「ええ」
「ずいぶん、激しいんだな。君のセックスは」
「申し訳ありません」

風見が、うなだれる。
降谷は、一度組んだ足をほどき、にこりと微笑んだ。

「しかし……みょうだな」
「妙……とは?」
「そんな激しいセックスをしたわりに、君、傷の一つも無いじゃないか。僕は抵抗しなかったのか?」
「あ……いえ。抵抗される前に、しばりました」
「ふーん。じゃあ、そういうことにしておこう」

風見の額に冷や汗が噴出る。
ぎゅっと、眉間にしわを寄せながら風見が言った。

「いずれにせよ。あなたは、得体のしれない相手から、注射を打たれた。だから、明日の午後、体調が落ち着き次第。警察病院で採血をするよう手配しておきました」
「採血?」
「ええ。HIVと肝炎ウィルス感染などの、もろもろの検査です」
「ほー……じゃあ、君も、一緒に採血してもらえ」
「え?」
「なんだ? 僕のこと、めちゃくちゃに抱いたわりには、ちゃんとゴムつけてたのか?」
「あ、いえ……その……」
「まあ、万が一に備えて、だよ。さっきから、尻がひりひりする。出血もあったんだろ? なら、君への感染リスクも全くないわけじゃないよな?」

降谷は、そう言うと風見にトイレの場所を聞き。
寝室を後にした。

 

 

(降谷さんを、だましとおせるはずがない)

と、風見は思う。
すでに、降谷さんは自分の嘘に気づきつつある。
それでも、嘘をつこうと思ったのは、降谷のため……というより、自分のためかもしれない。

降谷と風見は警察病院の処置室で順番に採血をした。

先に採血を終えた降谷は、廊下に出て、看護師に指示された通り小さな脱脂綿で穿刺部を圧迫した。
ベンチに腰をかけて、風見の採血が終わるのを待つ。
処置室から、風見と看護師の笑い声が聞こえてきた。

「ありがとうございました……あ、降谷さんお待たせしました」
「ん」
「じゃあ、車回してきますんで、裏口の方で待っててください」
「いや、少し休んでからでいいよ。指で、しばらく押しとけって言われたろ?」
「え、ああ。そうですね」

風見が、降谷の隣に座る。

「楽しそうだったな」
「楽しそう?」
「看護師と。ずいぶん話が弾んでいたじゃないか」
「あー。まあ、そうかもしれないですね」
「君、もてるんだな」
「……いや、もてるのは、俺の血管ですよ。俺の血管、めちゃくちゃ針を刺しやすいみたいで。昔から、看護師と合コンとかすると、血管だけはね。やたらと褒められるんですよ」
「なんだそれ」

降谷が笑い出す。
その笑い声に、風見は、少し調子に乗る。

「わー、めっちゃ採血しやすそう♡ 風見さんの血管走行、ほんと好きー♡ ……とかね。んなこと言われても、どうすりゃいいんだって話ですよ」
「ふふ…君の裏声……案外高いな…」

ケタケタ笑う上司を眺める。
この後、自分が何をすべきか。
懸案事項は山積みだった。

降谷を家まで送り、その足で、カイシャに舞い戻る。
昨日の夕方、風見は自宅近くに自分の部下を呼び出し、あることを頼んでいた。
とある、体液の、DNA分析。
不織布にどろっとついた白い液体は、三枚重ねのジップロックによって、密閉されていた。
風見の部下は、紙袋から、ちらりとそれをのぞくと

「うげえ」

とつぶやいた。

風見は、そのDNA鑑定の速報を聞くために担当者のラボを訪ねた。

「で、何人分?」
「ええ。7人分です」
「そうですか……」
「まだ、7人分のDNAを分離しただけで、詳細は調べていないのですが……あ、でも。ひとつだけ純日本人ではない男のDNAが含まれていました」
「……ああ、ハーフ? ですか?」
「ああ、おそらく」
「そのDNAについては、詳細は調べなくて結構です。……いや、できれば、検出しなかったことにしておいてもらいたい」
「なかったことに……ですか? ……どうも、めんどうそうな一件ですね」
「ええ。巻き込んで申し訳ない」
「まあ……たまに、あることですよ……。非親告罪になってからは特に。……以前のように示談でどうこうできなくなりましたからね」

担当者は、風見の依頼を「お偉方の子息が絡んだ強制性交の後始末」と結論付けたようだった。
そう思い込んでもらっていた方が、都合がよかったから、風見はそれを否定しない。

(6人か……)

薬物を打たれたとはいえ。
冷静さを失うような状況にあったとはいえ。

降谷が、6人の男にマワされた

その事実に、風見は動揺した。
最初に現場を見た時点で。
相手が一人ではないことは予想していた。
そもそも、薬を打たれていたとしても。
降谷が男一人相手に、好き勝手にされるわけがない。

そうなれば、相手は複数である……と考えるのが自然だ。

それにしても、6人……か。
6人は、多すぎるだろ

風見は、降谷が、潜入捜査を円滑に進めるために、体を使うことを知っていた。
降谷は、右腕である風見にそのことを隠そうとはしなかったし、風見にローションやコンドームを買いに行かせることもあった。
そのことについて、感傷的になったことはない。
降谷零という男は、目的達成のためなら、他人にどう思われようが構わないというようなところがある。
だから、コンドームとローションの買い出しを頼まれたところで、風見は、降谷さんらしいとしか思わなかった。

けれども。
それは、降谷が自分の体を道具として、うまく利用しているからこそ、そう割り切れるのであって。
今回のことははどうしても、気持ちを切り替えることができなかった。

(あの人が、人と対面して、その支配権を完全に失うなんて……)

失敗は誰にでもあることだし。
自分だって、紙一重で助かったものの、死にそうになったことはある。
それなのに。
ベッドの上で、精液まみれになりながら昏倒する上司を、見た時。
風見裕也は、ひさしぶりにやるせない気持ちになった。

 

 

血液検査の結果は、二人とも、白だった。
降谷の記憶も、曖昧なままで。
風見の計画は、今のところ順調に運んでいた。

そんな中、例の協力者から緊急の入電があった。
いそいで、報酬を準備し、接触を行う。
協力者がセカンドハウスとして使っているその部屋は、ワンルームの部屋に不相応な大きなベッドが一つ置かれている。
薬を使用して、行為するためだけに借りているというこの部屋に、風見は嫌悪感を覚えた。
間取りも、置かれた家具も、何もかも違うのに。
降谷が、犯されたあの部屋のことを思い出さずにはいられない。

「今日は、機嫌が悪そうだ」
「まあな……これを渡した瞬間に、お前を覚せい剤所持の嫌疑でぱくってしまいたいくらいには、いら立ってる」
「おいおい。その薬を譲渡してるのは、どこの誰だって話だよ」
「ああ。だから、俺も自首するさ……まあ、確実に、もみ消されるだろうけどな」
「おい……あんまりたちの悪い冗談を言うな。それより、はやくそれをよこせ」
「ああ……今日は、注射針つけてやったぞ」

そう言うと、風見は、警察病院の看護師から、こっそりと横流しされた医療用の注射針を男に見せた。

「どうも、君の営業努力に感謝する」

注射針と、報酬を受け取った男は、風見に資料を渡し、口頭でいくつかの情報を伝えた。

 

 

 

協力者との接触を終え、カイシャには寄らず、直接家に戻る。
部屋の前に立った時、中からかすかに人の気配を感じた。
当たり前だが。いつも風見であれば、すぐにドアを開けたりしない。
けれど、風見は、無防備に、その扉を開けた。
玄関先には、Tシャツ姿の降谷がいて、少し面食らったような顔をして立っていた。

「その……警戒しなさすぎじゃないか?」
「……すみません」

降谷は風見の手をとった。

「話しがある」
「私に黙秘権はありますか?」
「あると思うか?」
「まあ……ないんでしょうね」

風見は靴を脱ぎ、降谷に導かれた。
寝室のベッドに、隣り合わせで座る。
風見は上着のジャケットを脱ぎ、それを、傍らに置いた。

「さて、どこから、話そうか?」
「……どこからでも、どうぞ。どうせ全部お見通しなのでしょう?」
「僕を買いかぶるな。全部……じゃないから、君から話を聞く必要がある」
「そうですか?」

風見が、眉間をぎゅっと抑えた。

「わかっていると思うが。君が、どのような働きをしているか……僕にはそれを調べる権限がある」
「ええ」
「6人分……いや7人分のDNAのでどころは?」
「……わかってるでしょ。……その様子だと、俺がもみ消そうとした、もう一人のDNAが誰のものかってことも……」
「まあな……しかし、わからない点がある。なぜ、鑑定に出した?」
「なぜ……?」
「君、僕が男たちにされたことを、隠すつもりだったろ? なのにDNA鑑定出した上に現場写真もしっかり残してある」
「写真……見た…んですか?」
「ああ。君のノートパソコン調べさせてもらった」

何事もないように言う上司の言葉を聞いて、風見はシュルシュルと自分のネクタイをほどいた。

「こわい…人ですね」
「そうかな。そもそも……君、僕のこと抱けないだろ? その時点で君の嘘は破綻してた」
「……いや? ……抱けますよ」
「…そう……か?」
「ええ」
「……まあ、君が、僕を抱けるかどうかは、この際いいんだ。嘘を貫き通すつもりなら、DNA鑑定も、証拠写真を残すこともすべきでなかった…という、そういう話だ」

降谷は、そう言うと、風見の肩にもたれかかった。

「君に抱かれたことにしてやってもよかったのに。君が妙な動きをするから、僕は、君の嘘を暴くはめになった。なぜ……決定的証拠を残した?」
「……降谷さんもご存知の通り。強制性交は、非親告罪になりましたし。被害者も男性を想定されるようになりました」
「……では、告訴、するつもりだったのか? しかし……それなら、被害者である僕のDNAが検出されたことを隠す必要がない」
「降谷さんのDNAを隠蔽しようとしたのは一応の保険です。……非親告罪になるにしても。被害者感情の配慮はしますよ。勝手に、事件化するつもりは無いです。ただ……」

降谷がの右手が、風見の内ももをなでた。

「ただ?」
「あなたが、告訴の意思を持った時。立件できるだけの十分な証拠は保存しておきたかった」
「は? そんなこと……あるわけがないのに、か?」
「ええ。そんなこと、あるわけがないのに……です」

降谷は、風見の耳元に口をよせて耳打ちをした。

「なあ、僕と寝るか?」

風見の体が、びくりと震える。
降谷が、いたずらっぽい顔をして、風見の顔をみつめる。

「……それは、口封じ? ですか?」
「いや? なんだろう。わからないけど。君としてみたいと思った」

風見は眼鏡を取り、一つため息をついて言った。

「じゃあ……降谷さん……俺のこと、捕まえてよ」
「え?」
「俺、覚せい剤所持してます」
「ああ、それは1157用の餌だろ?」
「ええ。でも、俺は薬を持ってるし。あなたは、強制性交されたんですよ」
「じゃあ、君こそ、僕を逮捕しろ」
「罪状は? 家宅侵入罪?」

風見は両の腕を降谷の体にまわした。

「捕まえた」

降谷は、眼を見開いた。

「ほら、あなたも、捕まえて?」

風見に言われて、降谷も、風見の体にしがみついた。

「あは……捕まっちゃっいました」

風見が、力なく笑う。

「なんだこれ?」
「さあ? なんでしょう?」

そう言いながら、風見は降谷をベッドに押し倒した。

「ねえ、降谷さん。どんないい男に気を取られてたのか知らないですけど。6人にまわされるなんて、ぬかりすぎです」
「うん、自分でもそう思うよ」

降谷が、風見の頭をなでた。

「あの女も、あんたのこと心配してましたよ」
「ああ……」
「じゃあ、抱きますけど。……準備はいい?」

風見の問いに降谷はニコリと笑ってみせた。

「いいけど……”君、この前、手荒らだったからな”」

降谷の答えに風見も応じる。

「ええ……。しかし、あの日”俺を誘ったのはあなただし。縛られていたとはいえ、抵抗せずに、俺の手荒な行為を受け入れたんですけどね”」

 

【あとがきなど】

当社比で、暗め?
ビター?
な、かざふるです。
本当は、もっと……風見さんが苛烈な感じなる予定だったんですけど。
原作の風見さん見ちゃうとね。
そこまで、苛烈にはならないだろうなと思って。
こんな感じになりました。
伝わりにくいと思うんですけど。風降はこういう労わり愛しててほしいなって……
(ただれてるとか、言わないで・笑!)

↓さらに追加で語った

あとがき というか 追補 というか(君が、僕を捕まえて)

 

 

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