恋愛でなくとも(自分語)

【自分語】
〇どうして、恋愛未満(でもやってる)の風降がすきなのかという話。
〇図書館で摂取できるBL成分を探した結果、文士のどろどろの三角関係にはまった女の末路
〇有名な文学者を腐女子目線で見ていたという話が多いので、ガチな文学者好きさんは、閲覧を控えたほうがいいと思います。
〇最後に風降妄想あるけど、我ながらきもちわるい系の妄想です!


 

恋愛、と、名付けるにしては、すこしあっさりしすぎていて。
恋愛ではないと否定するには、あまりにも近すぎる。

そういう、上司部下以上恋愛未満で、でもやることはやってる風降がとても好みだ。

なんでだろう、と考える。
もしかしたら、腐女子になりたての頃、文士の三角関係というやつに影響を受けたのが原因かもしれない。

などと言うと、高尚な雰囲気が漂うような気がしなくもないが。
動機は単純である。

高校生って、お小遣い少ないし。私の地元はとても田舎だったので、BL本を買うのがとても恥ずかしかったのだ……!
それで、仕方なく、図書館で摂取できるBL成分を探した結果、文士のどろどろの三角関係という、謎のジャンルにたどり着いたのだ。

もちろん、自室のPCで、同人サイト巡りをしていたが。私の部屋は妹と同室であったし、親がいつ襲来してくるか……安全は保障されていない。

たいして、図書館の本はどうだ! 安全だ! 一見すると、ただの文学かぶれの中二病にしか見えない! なんなら通学のバスの中でも読める!!!

そんな不純な動機で、私は、文士の三角関係にはまった。

文学アルバムを、眺めながら、小林秀雄の顔がいいよおお!! と悶えたのはよき思い出だし。
秀雄によって3Pのスーツ萌えに目覚めてしまったのも、よき思い出。
ついでに、講演会のカセットテープで声を聴いて「声たっか! ぜんぜんダンディーじゃねえ!!」と、がっかりしたのもよき思い出……(まじでCV変えてって、思ったよね)

多分、高校時代の友人に、「当時私が好きだった男は誰だ」クイズを出したら。
ほとんどの人が、小林秀雄をあげるだろうというのめりこみ具合だった

さて、私が、小林秀雄にのめりこんだ理由は一つ。
国語教師が授業中に中原中也と小林秀雄は三角関係だったという、エモい話をしたからだ。
親友同士が、同じ女を共有するとか、まじエモくてエロいな!!
と思った16歳の私は、とにかく、BLに対して貪欲だったのだと思う。

そして、放課後、私は、小林秀雄全集を探しに、図書館に走った。
二階建ての図書館の階段を颯爽とかけあがり、小林秀雄が中原中也に特別な感情を抱いていた証を探すために、図書館を動き回った。
そう、あの頃の私は、とにかく、BLに飢えていたのだ……

このような原体験を経て。
私の腐女子としての魂の形は
「三角関係をめっちゃ好む!!」
に、なってしまった気がする。
文士が女を挟んで、三角関係になる理由は、お互いにひかれあっても、生物的に交わり合うためには、同性愛になるか女を共有するかの二択しかないから、女を共有しがちって説がある。すごく好きな説。

ビートルズなんかも、女を共有してたっていうし……
(しかし、ヨーコはその限りでなかったから、ジョンが、おこだった逸話がとても好き)

小林秀雄の三角関係で一番有名なのは中也だけど。
個人的には、小林秀雄と河上徹太郎の関係性がすごく好きだ……!

小林秀雄は
「女房や子供は大事だ。でも彼女のことは忘れられない。けれど、彼女より俺は河上の方が大事なんだ(要約)」
と野々上慶一に宣言し、その三角関係に終止符を打つ男だ(それ、宣言する必要ある~?! って、この話を読むたびに、すっごい萌えてしまう)。

河上が亡くなったとき、小林秀雄は葬儀委員長を務める。
河上は生前、小林について

「ぼくの生涯の友人は小林です。彼のつき合ひは癖があるけど、結局、全的に私を包摂してくれる」(厳島閑談より)

と書いた。
小林は、河上の死後、河上との関係について

「露骨な思想上の一致や生ま生ましい感情上の共鳴を、二人は本能的に嫌ひ、これを努めて避けて来たやうである。そんなものを便りしてゐるやうで、長い間の付き合ひが持続したわけがないのを、互に感じ取つてゐたやうだ。表には顕はれぬ、もっと深いところで、互いに人生観上の通路をもつてゐる事を信じあつて来たやうには思はれる」(河上君の全集)

と、ふりかえっている。

もおおおおお、さあああああ!!

こういうの読んじゃうと、恋愛観と貞操観念おかしくなりませんか?
セックスしなくても(女は共有するけど)、パートナーにはならなくても(女は共有するけど)こんな風にお互いを思い合うことができるってことを、示されちゃうとさ。
もう、心がつながってれば、なんでもいいやってなるよね!!!(女は共有してたけど)

君子の交わりは淡きこと水のごとし……!

淡々としていながら、心の深いところでつながっている……
そして、それは生涯続くのだ……
あ、でも、風降には淡々としていながらも、セックスはしていてほしい!
女を共有しちゃう風降も、嫌いじゃないけど、ちょっと解釈違いなので……
まず、風見がそういうの無理そうだし。降谷さんうぶで潔癖っぽいから、女を共有はちょっと解釈違いなんだ。

だからね。
少女漫画的キュンキュンラブストーリー風降も、エロコメも、ラブコメも、シリアス大河系風降も、全部大好きなんだけど。
私の恋愛観と貞操観念のベースは、小林秀雄によってめちゃくちゃにされているから。
書き手にまわると、おかしなことになる。

くわえて、降谷さんの恋愛観もちょっとおかしいので
(初恋の人を探すために警察官になったり、恋人が国と言い切る男の恋愛観がまともであるはずがない)
さらに、おかしいことになる。

なおかつ、風見の降谷さんへの「大好き!」も、上司への敬愛と呼ぶには、ちょっとばかり逸脱しているので
(上司に女がいるのかどうかを気にして洗面所を探ったり、上司の飼っている犬に芸を教え込もうとするのは、すこしまともでないと思う)
やっぱり、おかしいことになる。

というか、あれだ。
風降って、ゼロ茶の距離感でも、十分セックスできそうだし。
あれで、一生、切れないくらいの関係性を保てそうだなっていう、謎の安心感がありませんか?

恋でなくても、お互いを思いやることはできるのだし。
恋でなくても、相手のために自分を犠牲にすることはできるし。
恋でなくても、セックスすることもできるし。
恋でなくても、自分のことをすべて受け入れてくれる存在に出会うことはできるし。
恋でなくとも、お互いの人生観上の通路を持ち続けることは可能なんだ

って、思うと、恐ろしく萌えるんだけど。
一周回って、これって、恋じゃね? って、思ったりして。
もう、恋って何なの?
私の恋愛観は、風降によって、さらにおかしくなってしまいそう。

ちなみに「恋でなくとも」で、なりたつ風降は、降谷さんの「恋人はこの国」発言との矛盾がないので。個人的にはそこもおいしいと思っている。

なんていうか、降谷さんの

『僕らの間に、生々しい感情はなかったが。
お互いに、なんとなく、通い合うものがあって。
だから、僕は風見を右腕として選んだし、彼も僕についてきたのだと思う。
僕は、この国のためなら命を懸けてもいいと思ったが。
風見は僕のそういう正義の示し方には、あまり共感を示さなかった。

僕らは、時折、体をつなげたが。
僕らの欲望と親交はある程度の相対的独立性を保っていて。
欲望に引っぱられて、生々しい感情が吹き出そうになっても、僕らはそれを見て見ぬふりをしたし、そうやってやり過ごすことができた。

おそらく、風見は、僕の考えていることを理解しなかった。
いや、ある程度は理解したかもしれないが、その真意を暴こうとすることはついになかった。
僕も、風見の話をあまり聞かなかった。だから、僕は彼の正義がどこにあるのかを知ることはなかった。
それでも、僕らの関係は成り立っていたし。
そいう関係だからこそ、僕らはずっとともにあり続けたのだと、僕はそう信じている。
これを、恋と呼ぶのか呼ばないのか。僕にはわからない。

けれども、風見裕也という人は、僕にとって生涯にわたり特別な人でした』

 

という独白で終わるような、風降が好きなのかもしれないと、唐突に思った。
お互いにお互いのことをよくわからんて思っていて、なおかつ、お互いに相手のことを尊重するあまり「ま、わかんないけどいっか……」って、思うくらいの風降が好きなのかもしれない。
(そして、お互いのことよくわかってないけど、体の相性は最高だといいよね)

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