パセリ

ごご←あむ? な 風→降?
※毛利先生の食べたサンドイッチの皿に残されたパセリで押し花を作るおとめちっく安室透


 

【パセリ】

たいていの成人男性がそうであるように、風見裕也は花よりラーメンに心惹かれる。
もちろん、桜が咲けばきれいだと思うし、花屋の店先でカーネーションを見かければ母の日を連想する。
だが、しょせんはその程度の関心だ。一人暮らしの部屋に花瓶はないし、もらった花をすぐに枯らす。

「……押し花、か? ……パセリ?」

仕事で立ち寄った上司の部屋。ペットフードの準備をしながら、その存在に気付く。
ダイニングテーブルの上には数枚の紙ナプキン。その上に、ペタンコになったパセリがひと房。
風見はスマホを取り出しパセリの花言葉を調べた。「花言葉を調べる」のは習慣のようなものだ。クロスワードパズルを解く際に花言葉の知識が必要なことがある。

「祝祭、お祭り気分、役に立つ……死の前兆」

紙ナプキンにそっと触れてみる。
パセリを押し花にする理由。皆目見当がつかない。
そもそもとして、降谷零は秘密の多い人間だ。風見もまた、不用意に人の秘密を知ろうとするタイプの人間ではない。

「……アン!」
「ああ、すまんすまん」

食事の催促。風見は、慌ててペットフードを皿にあけた。

数日後、平日の昼時。弁当や軽食を食べる人たちでにぎわう都市公園。指定のベンチに向かえば、降谷が本を読んでいた。
記憶媒体の受け渡し。わずかな時間。風見は降谷の本にパセリのしおりが挟まれていることに気がついた。

「パセリ」

口が滑った。
降谷はなにも言わなかった。だが、心なしか、ほおが火照っているように見えた。

その晩、風見が部屋でスマホゲームをしていると降谷から電話がかかってきた。慌てて通話に応じる。
風見が挨拶する間もなく、降谷が切り出す

『パセリのことなんだが……』
「……はい」

パセリの花言葉。
祝祭、お祭り気分、役に立つ。よい言葉の方が多かったはずなのに。「死の前兆」その言葉がどうしても頭から離れない。風見は、少しだけ体をこわばらせた。

『あれは……おまもりみたいなものなんだ』
「おまもり、ですか……? ああ。パセリの花言葉」

祝祭、お祭り気分、役に立つ。

『花言葉、というより、あれは……』
「あれは?」
『毛利先生が、おいしいと言って食べてくれたサンドイッチのお皿の上に残されていたパセリなんだ』
「……もうり、こごろうの……?」
『だから、こう……弟子としての愛情表現の一環というか……僕、というか……安室透にとってあれはおまもりなんだ』

全身から力が抜けるのを感じた。

「了解しました」

それから、二人は仕事の話をして通話を終えた。

風見にとって、死は身近だ。そして、降谷零は、もっと死に近い場所で生きている。私立探偵兼喫茶店アルバイトの顔をして、穏やかな日常を送っているように見せかけながら。

「なんだ……」

深読みし過ぎた自分を恥じる。
風見はベランダに出て、久々にタバコを吸った。夜空を横切る航空機の点滅を眺めながら「おまもり」という言葉を思い出す。火照った横顔。押し花のしおり。

敗北感。
いったい何に負けたのか。
心の中のもやもやを吐き出すように、タバコの煙を夜空に放つ。

 

【あとがきなど】

なにか軽めの話を書こうと思った結果……
毛利小五郎がサンドイッチを食べた後の皿に残されたパセリで押し花を作る安室透のSSを書きました。
こご←あむ? 風→降?

な、お話です。
降谷さんが顔を赤らめた理由ですが

仮説①単純に押し花のしおりを見られて恥ずかしかった
仮説②風見……そんな細かいことに気がついて切れるんだ……好き♡ ※実は風←降
仮説③……僕が毛利先生のこと好きってばれてしまったのでは?! ※こご←あむ

以上三つの仮説が考えられます。
いずれの仮説を取るにしても、私の脳内の降谷さんは乙女チック公安ボーイであることは揺らぎません。

 

 

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