初出:Pixiv(2020.10.27)
〇降谷さんが淫乱体質
〇風見さんが降谷さんにTバッグを履かせる
〇ふぇちふぇちしている
僕だって、人間だから。気持ちのいいことは好きだ。
まして、恋人とのセックスとなれば、無我夢中で取り組みたくもなる。
だが、夢中になればなっただけ、その後が大変だ。成り行き上、受け入れる側を担っている僕は、行為の翌日、それなりのものを引きずる。
風見も、そのあたりを理解している。だから、彼は僕の勤務予定を把握した上で、性行為の内容を調整する(本当に、よくできた部下だ)。
挿入は、翌日が休み、もしくはオフィスでの仕事が予定されている時のみ。
交際を始めた当初は、このやり方で、問題なかった。
しかし、関係をもつようになって半年以上が経過した今、少しずつ支障が生じてきた。
休日前夜から当日にかけての行為。これは、まあいい。お互いの気が済むまで行為に取り組めるし、欲が冷え切るまで、切り替えの時間を持つことができる。
挿入のない日の行為も、大きな問題はない。精液を出すことを目的にした、お手軽なふれあい。指で中をいたずらされる事もあるが、今のところ、執拗にかき回されるようなことはなく。あー気持ちいいな、くらいで済んでいる。
問題は、オフィスワーク前日の行為だ。
風見は、翌日の起床時間から逆算し、就寝時間を決め、制限時間付きで行為に励む。そして、持ち時間に合わせ、臨機応変にメニューを組み合わせ、お互いがちょうどいいタイミングで絶頂を迎えるよう調節する。
就寝予定時間の三十分前に、てっぺんがきて。そこから、十分ぐらい触れ合って、十五分で身を清めて、残り五分で軽めのキスをして眠る。
つき合い始めの頃は、満足感でぐっすり眠れていたし、翌日、多少の違和感は残るものの、問題なく出勤できた。
しかし、度重なる行為が思わぬ作用をもたらした。
半年をかけて、風見は僕の気持ちいいところを覚えた。さらに、「開発」というやつだろうか? 努力家の恋人は、僕の体のそこかしこを、気持ちいい場所に変えてしまった。
最近の僕は、風見の指が手の甲をなぞるだけで頭がくらくらするし、耳の軟骨に軽いキスをもらうだけで、だめだし、風見の顔を見ながら自分の内腿をこすり合わせるだけで自慰行為をしているような気分になる。
体表面ですら、そうなのだから。
体の内側は、もっと、大変なことになっている。排泄器官に過ぎなかった僕の管は、見事に別の役割も兼任するようになった。
風見裕也の性器は、奥の奥まで届くくらいの長さがあって、僕は、射精とはリンクしない体の芯から全身に広がっていくような快感の波というものを知った。
気持ちよくて、脳がしびれて、体がびくびくして止まらなくなって、そのふるえさえも、おなかに響いてとろけてしまう。
休日前夜にするセックスは、真夜中の海水浴だ。
素っ裸で夜の海を泳ぐ。僕は、風見裕也にしがみつきながら。寄せては引く波の中で、酸素を求めて、呼吸を荒くする。風見の首筋を舐めれば、しょっぱくて、寝具は、いつのまにかべちゃべちゃだ。
”暫定的な措置”として下になることを引き受けたはずの僕が、そのまま、風見を受け入れ続けている理由が、それだ。
情けないことに、僕は、この快感を手放すことができない。
そして、登庁前日の行為に支障をきたすようになった原因も、実は、ここにある。
登庁前日の制限時間付きのセックス。
風見裕也は、適切なタイミングで、僕を絶頂に導く。しかし、その絶頂の後、僕の体はどうしようもなく、寂しさを感じた。だって、僕はその先を知っているのだ。けれど、僕一人ではその先にたどり着くことがでいない。僕をその先に連れていくことができる人間は、今のところ彼しかいないのだ。
ゴムの液だまりには、信じられないくらいの精液。風見のアフターフォローはいつも完ぺきだ。濡れタオルで体を拭かれるのも、おでこに落とされるキスも大好きだ。でも。だからこそ、僕は、自分の物足りなさを伝えることができなかった。
たまったものを吐き出してすっきりしたのだろう。健やかな寝息を立てて眠る風見の横で、僕は、夜な夜な寝返りを打つ。就寝時間に合わせて行為を切り上げたはずなのに、睡眠負債が積み上がっていく。
翌日、登庁した僕は、いつもよりさえない表情で仕事をする。
風見は、僕の表情の変化に気づいており、それが前夜の性行為に原因があることも見抜いていたらしい。だが、その推理は僕の認識と食い違っていた。
ポアロでの仕事を終え、アパートに戻った僕は、すぐさまハロと散歩に出かけた。いつもより早足で散歩を終え、速やかに風呂に入る。
時刻は午後七時半を少し回ったところ。
明日、僕は久々の登庁日。午前十時からの会議に参加予定だ。風見は本日の九時ごろ僕の家に来ると言っていた。
だから、まあ、そういうことになるだろう。
僕の体は、そこまで都合よくできていないので、風見のものを受け入れるためには、入念な準備が必要になる。当然、スムーズな性行為遂行のためには、事前準備をせねばならない。
休みの前日であれば、準備から風見に身をゆだねるが、今日はそこまでのゆとりはないだろう。
九時に滑り込みで、風見がインターフォンを鳴らした。
走ってきたんだろう、息を弾ませる姿が、微笑ましかった。
ゆっくりでいいというのに、風見は、風呂を烏の行水で済ませ、かきこむように夕飯を食べた。がつがつと、けれど、美味しいと言ってにこにこしながら、僕の作ったご飯をたいらげていく。
僕は、その姿を観察しながら、ダイニングテーブルの下で、内腿をすり合わせた。
風見が食事を終える。
使用済みの食器を洗おうと席を立つと、風見が
「俺が明日洗うので、水につけておいてください」
と、言った。
寝仕度を済ませて、ベッドに向かう。
部屋のふすまをぴしゃりと閉める。
すると、ベッド前にたどり着くなり、風見が正座をした。そして、ベッドに座るよう、僕を促す。僕は、困惑しながらも、ベッドに腰かけて腕組みをした。
「降谷さん……登庁日前日の性行為について、ご相談とご提案があるのですが、よろしいですか?」
「……ああ。とりあえず、話を聞こう」
風見が、あんまりにも緊張しているものだから、ついつい上司の口調で返してしまった。
「あの……正直に答えていただきたいのですが。登庁前日の本番行為に、降谷さん、苦痛を覚えてらっしゃいますよね?」
苦痛、という言葉に困惑する。
だって、僕は行為そのものに苦痛を感じているわけではない。満たされない体を持て余して寝不足になっているだけだ。
しかし、これは、大変、繊細な問題である。下手をすれば、風見裕也の男の沽券に関わる。僕が欲求不満を抱えて眠れないことを知って、風見は男としての自信を失うかもしれない。
風見が、真剣な目で僕を見た。
もちろん「あれだけじゃものたりない」と答えるわけにはいかないし。「困っていることは何もない」と答えたとしても、風見は僕の言葉を信じないだろう。
ちらりと、時計を見る。時刻は十時半を過ぎていて、こうしている間にも、行為に取り組める時間は減っていく。だから、仕方なく。
「苦痛、というか。……まあ、少し、寝不足になってしまう時がある」
と、煮え切れない返事をした。
風見は、うんうんと首を縦にふり、それから、眉をハの字にし、畳に手をついて頭を下げた。
「俺が、気持ちよくなりたいばかりにすみませんでした」
僕の困惑はますます深まる。
「風見、頭をあげてくれ」
その言葉に、風見はゆっくりと、頭をあげた。僕はぎょっとした。
だって、風見は、仕事で失敗した時のように、非常に険しい顔をしていたのだから。
「風見……?」
「俺は、降谷さんの中で、すごく気持ちよくなって……それで、すっきりして終わりますけど……。降谷さんは、中をひっかきまわされて、それで痛みや違和感が残らないわけがないですもんね」
いや、残ってしまうのは、痛みや違和感ではなく、体の疼きなののだが、それを言い出せる雰囲気ではない。
風見は僕の部下であるが、一つ年上の立派な成人男性だ。そういう男が、恋人の体を慮って、自分の行動を悔い、土下座をした。その状況で「痛みや違和感には困っていないが、もっと欲しくてなってしまって、寝不足になっている」などと、言い出せるだろうか?
そういうわけで、オブラートに包んで答えた
「いや、まあ。その……確かに。持ち越してしまうものはあるな」
本心を隠しているが、嘘を言っているわけではない。
解釈の余地を残した言葉で、相手の反応を見る。これは、交渉時のテクニックの一つだ。まさかこんな場面で、仕事の技術を使用するなんて思ってもみなかったが……。
「ですよね……。どおりで、デスクワークの際、顔色が、さえないなと思ってました」
「そうか?」
「ええ。ですから……」
(ああ、今日は、挿入はないんだろうな)
そう思ったら、少しさみしかった。しかし、我慢を強いられるのは、僕だけではないのだ。
僕の中に入っている時の風見は、手でしている時の、何倍も、何十倍も気持ちよさそうな顔をする。声もこらえきれなくなるらしくて、とてもかわいらしい、うめき声をあげる。
風見だって気持ちいことを我慢するし、僕も我慢する。それで、五分五分だ。
(……そうだな。手で、さくっと出して、それから、眠くなるまでおしゃべりをするのもいいかもしれない)
そんな風に切り替えようとしていた僕に、風見が言った。
「挿れはしないんですけど、降谷さんのお尻を貸してください」
……。
さて、僕の恋人は、何を言っているんだろうか?
しかし、真剣な表情を前にして、僕は、こくんとうなずいてしまった。
「まずは、こちらの下着を履いてください」
そう言って渡された下着は男性用のTバッグ。色は白だった。ドン引きしながら、それを受け取る。
上のTシャツは、脱がないまま、スウェットをボクサーパンツと一緒くたに脱ぎ去る。
風見は、僕の着替えをまじまじと観察した。
おそるおそる、布面積の少ないパンツを履く。フロント部分はしっかりと隠れたが、お尻の裂け目にひも状の布が食い込んで、とても変な感じがする。
僕のペニスはすでに大きくなり始めており、風見が何か言いたげな顔で、そこを見ている。そして、照明を落とそうと腕を伸ばした瞬間、風見が僕をベッドに押し倒た。
仰向けになった僕に、風見が覆いかぶさる。
「降谷さんの、お尻……視覚でも堪能したいので……今日は、明るいままでお願いします」
答えを言う前に、キスで、唇をふさがれた。風見の眼鏡がぶつかる。僕は、仕方なく目をつむり身をゆだねた。
尻を揉みしだかれる。それだけでも、だいぶ、気持ちがいい。しかし、気持ちいいのは、それだけで終わらない。風見が、パンツのウェスト部分をグイッと、ひっぱった。ひもみたいになっているところが、ちょうど袋のくぼみに食い込んだ。そういう刺激を与えられたのは初めてだったけれど、結構よかった。
僕は、キスの合間にえっちな声を出して、風見の甲を撫で、パンツでいじめるのを、もっとしてほしいと意思表示した。風見は、僕の意図を受け取り。左手で尻を揉みしだき、時に指先でアナルの入り口をいじりながら、右手で僕のパンツを好き放題ひっぱって、布をぐいぐいさせた。
キスもどんどん深くなっていく。
風見が僕の口の中に唾液を流し込み、それを飲ませようとする。僕は、こくんと音を立てて、それを飲み干した。そのことに満足を覚えたのか、風見の唇が、僕の左耳に移動する。
軟骨へのキス。そして
「降谷さんの、お尻、中だけじゃなくて、外もこんなにエッチなんですね」
という言葉。
低くて、色っぽい声。熱い吐息。それらの音が、内耳から脳神経を伝わり、ダイレクトに頭の中に侵入する。
僕は目を開けて、風見の首筋にキスをした。そして、もぞもぞと、自分のTシャツをまくり、胸元を風見の体に押しつける。
風見は、
「……んー?」
と言いながら、一度、体を起こし、僕の胸元に顔をうずめた。
左右の乳首を交互に舐められる。ひきつづき、お尻はもまれているし、パンツのぎゅうぎゅうも容赦がない。数分もたたないうちに、僕のペニスはがちがちになってしまった。先走りのせいで、フロントの布がぴたりとはりつく。湿ってしまった布は、摩擦係数が大きい。
胸元にある風見の頭をぎゅっと抱きしめる。すると、風見の指がにゅるんと、僕のアナルの中に入って来た。浅いところを、わざと音を立てながら、ちゅぷちゅぷさせている。
「降谷さん」
「んっ……なに?」
「感じすぎて、濡れてきちゃったんですか? 中、とろとろしてますね」
なんて意地悪なことを言うんだろう。
僕が自分で準備したことを知っているくせに。
けれど、風見は、嫌がらせをしたいわけじゃない。彼は、度重なる試行錯誤の中で、僕がこの手の言葉に感じてしまうと知ったから、こういう言葉を用いているだけだ。
僕自身も知らなかった僕の性癖。
「ちが……今日…挿れると思ったから……っ」
「そっか、俺も挿れたかったけど、降谷さんも挿れてほしかったんですね」
多分なんだけれど。僕は、自分のいやらしいところを風見に指摘されるのが、たまらなく好きなんだと思う。
体の奥底に閉じ込めてきた欲求を、風見の眼前に晒し、受け止めてもらう。無論、すべての欲を包み隠さずにさらけ出す勇気はなかったが、それでも、乳首への愛撫を欲しがったり、パンツを食い込ませてほしいとねだるくらいは、できるようになった。
「かざ、みぃ……ね、やっぱ、普通に……」
「うん。でも。明日は、登庁日です。普段の仕事よりは安全かもしれませんが、大事な会議がありますし。体調を整えるのは”最低限の仕事”……ですよね?」
挿入をねだったら、正論で突っぱねられた。
「だから、挿れなくても、気持ちよくなるトレーニングをしないと……?」
そう言いながら、風見は、膝立ちになり、自分の、スウェットとパンツをずらして下半身を露出させた。
風見のものも、すでに、大きくなっている。
明るい場所で見る風見のペニスは、赤黒くて、おへそのあたりまで反り返っていて、先っぽはてろてろに光っていた。視線を逸らすことができない。思わず、内腿をこすり合わせてしまう。
「降谷さん、お尻、俺の方に向けて?」
風見に言われて、うつぶせになり、お尻を差し出す。唾液でべちゃべちゃになった乳首がすーすーするし、体を動かすたびにパンツがずれて、甘い声が出る。僕は顔を枕に押し当てて、声が漏れるのを我慢しようと試みた。
すると、お尻のあたりに、何かが違づく気配があった。体のふるえを止めることができない。気持ちいいことを期待してしまう。僕がドキドキしていると、れろり、れろり、と、アナルと陰茎の間を、風見の舌と思しきものが往復していった。
腰が、がくがくしてくる。僕は、首を必死に曲げ、背後の風見に視線を送った。
「風見……、あ…ほし……君の」
僕がペニスを請えば
「うん。今、俺のやつで、ここをこすってあげますね」
という答え。
視界の端で、風見が、僕の腰をガシッと掴むのが見えた。
僕は、後ろ手でパンツの布をずらし、風見にアナルを見せつけた。準備はできているのだし、多少の苦痛は伴うだろうが、入いるはずだ。僕は、括約筋への神経を研ぎ澄ませ、アナルをヒクつかせようと躍起になった。
そこが、どうなっているのか。自分で見ることはできないけれど、中に仕込んでおいたローションが流れ出るような感触があったから、多分、上手にできたと思う。
風見は、流れ出したローションをすくい取りながら
「……えっろ」
と言った。
僕は、腰を、揺らしながら必死のアピールを続けた。だけど、やっぱり挿入はもらえなかった。
「……今度のお休みには、ぐちゃぐちゃにしてあげますからね」
そう言うなり、風見は僕のお尻に性器を押し当て、ゆったりと腰を動かし始めた。それが、すごくもどかしくて、でも、すごく気持ちよかった。風見の先っぽが、アナルを掠めるたびに、挿れてもらえるんじゃないかと思って、ドキドキした。ちょっとでも入りやすくなるようにと思って、僕は左手で、左の尻たぶを、めくってみせた。
風見が、僕の左手を引っぱる。僕はちょっとだけバランスを崩しそうになった。おなかにぎゅっと力が入る。
「あー……今、中、ぎゅっと締まっただろうな」
そう言いながら、風見は、僕のパンツを引き下げて、それから、ぐいっと一気に引っぱりあげた。
「んあああっ」
「ハッ……布に、こすれるの気持ちい…ですね」
風見は、僕の尻と、パンツの布による物理的刺激で、それなりに気持ちよくなっているらしい。
すると、風見の手がフロント部分の布を、脇にずらした。ぽろんと、ペニスがパンツから飛び出してしまう。そして、風見は、そのまま手コキを始めた。
「降谷さん……胸、自分で気持ちよくできます? 乳首も、ちゃんと、気持ちよくしてあげてくださいね」
自分で自分の乳首を慰めるよう促される。僕は、みじめな気持ちになりながら、爪で、自分の乳首をつついた。
そうして、湧き上がってきた感情は、まさかの怒りだった。
あーあ、風見はいいよな。ペニスでイくことしか知らないんだから。僕の尻にこすりつけて、射精して、それで、すっきりするんだろう? けれど、僕の体は、そうはいかない。君のせいで、射精以外の気持ちいことを知ってしまった体は、これだけでは満たされない。
ああ。できることなら、日ごろの訓練の賜物を、こんなことのために、使いたくなかったよ。
「ふるやさ…?! っ……????」
自動的に動いた体。自分でも、どうやったのか覚えていないけれど、おそらく合気道の型を応用したのだろう。
形勢逆転。僕は、風見をベッドの下に突き落とし。そして、馬乗りになっていた。
「……受け身は、取れたか?」
「……ええ。降谷さん俺が倒れる前に、Tシャツを引き上げてくださったので、頭は打たなかったですよ」
風見が苦笑いをする。
「まあ、えりぐりが伸びちゃいましたけどね」
なんてことをしてしまったんだろう。
最悪だ。と思った。せっかくあんなに盛り上がっていたのに。きっと、風見は萎えてしまっただろう。頬に、涙を伝うのが分かった。
風見がもぞもぞと、上体を起こし、それから、僕の体を抱きしめた。
「……ごめんなさい。降谷さんが、あんなに中を欲しがったのに、俺が意地を張って、お尻の外側ばかり、かわいがったからですよね?」
「……うん」
「ごめんなさい……でも、俺、中に入れちゃうと我慢できないし」
風見の手のひらが、僕の後頭部をなでる。
「嘘つけ……我慢してるだろ……?」
「え?」
「いつも……ちゃんと、時間を…考えて……いろいろ調整して。登庁日の前の日の君は、そうやって……我慢してるだろ?」
「いや……でも、しっかり中イキはさせますし。時間が許す限り奥を突いたりもしてますし……。結構、激しくやってるつもりですが?」
「……でも、休みの前の日に比べたら、全然ソフトだ……」
後頭部をなでていた風見の手が、ぴたりと止まる。
「……え? あれで、ソフトですか???」
その言葉に、恥ずかしさがこみあげてくる。けれど、ここまで言ってしまったのだ。すべて打ち明けても、もはや、誤差の範囲だろう。
「僕……正直、登庁日の前の日のセックス……スイッチだけ入れられて放置されている感じがして……。君が眠った後も、その……えっちなのが止まらなくて、難儀してた」
風見の指が、僕のうなじを、優しくなぞる。
「では、寝不足……というのは?」
「……うん。奥の一番気持ちいいところ、君のじゃないと届かないし。気晴らしに、君の寝顔を見ながら……その、自分の体を触ってみても……むなしくなるだけだったから」
風見の左手が、Tシャツの中に入ってきて、僕の下腹をなでた。
「降谷さんの、ここ、俺のチンコが、本当に大好きなんですね」
「……別に」
「うん」
「挿れるのだけじゃなくて……キスとか、指で触られるのとか、舐められるのとかも、好きだよ」
グイっと。
また、パンツをひっぱられる。
「あ……」
「降谷さんって、えっちですよね」
「……うん。僕って、すごくいやらしいんだ」
「そうですか……。じゃあ、ますます、あなたのこと好きになっちゃうな」
「え?」
「俺ね、淫乱なコが大好きなんですよ」
風見に、そうささやかれて、僕は右手を風見のペニスに伸ばした。もしかしたら、一度は萎えたのかもしれないけれど。風見のそこは、ガチガチになっていた。
「かざみ」
少しだけ、舌足らずな言い方になってしまう。
「僕ね、かざみに……僕のやらしいところを見られるの、恥ずかしいけど…でも、すごく好きなんだ」
「うん」
「明日、スーツを着たら、ちゃんとするから」
「うん」
「だから、僕の、えっちなところ……いっぱい見てほしい」
「うん」
風見の指が、ぬぷぬぷと、アナルの中に入ってきた。
「あ……んんぅ」
ちゅうちゅうと、口を吸われた。
僕の手の中で、風見のものが、一回り大きくなる。それを、早く、挿れてほしくて。でも、たっぷり、焦らしても欲しくて。腰をゆらゆらするのを我慢できない。
風見の先っぽを爪でつついてみる。風見の体が、ビクンとなって、僕はうれしくなる。
ちゅっ……
と、名残惜しそうな、音と立てて、風見がキスを中断した。アナルに入った指はぬるぬると、浅いところを出入りし続けている。僕が、ぽやんとした気持ちになっていると
「しよっか」
と、風見が言った。
もちろん、したくないわけがないし、したくてしょうがないけれど。そのストレートな言い方に、すぐに言葉が出てこない。
少し間をおいて、僕が、うなずくと、風見は僕の上体をベッドの上にのせた。僕は、ベッドに伏せながら、風見のしたいことを、なんとなく理解して、股関節を開脚しながら、お尻をぐいっと、つき出した。
どうやら、それで正解だったらしい。風見の呼吸が荒くなるのを、僕は聞き逃さなかった。
両脚の間に、風見の体がおさまる。お尻の割れ目に、硬い棒状のものがあてがわれて、ドキドキしてしまう。
パンツからはみ出した僕の陰茎は、ガチガチになっていて、先走りが流れ出ている。
明るい部屋で、眼鏡をした風見が、僕のお尻を、さわさわと撫でまわす。すぐにでも挿れて欲しい僕は、腰を前後させて、風見を誘う。そしたら、自身の先っぽが、ベッドの端にぶつかってしまい、思わず、そこにこすりつけた。
すると、パンツをぐいっと後ろに、ひっぱられ、軽くお尻を叩かれた。
「降谷さん……オナニーはだめですよ」
「……だって、君が、くれないから……」
「うん。降谷さんは、なにが欲しいんですか?」
そう言いながら、風見は硬いもので、僕のお尻をすりすりと愛撫した。
欲しいものなんて、それに決まっている。それなのに、あえて、それを言わなければならないなんて、とんだ茶番だと思う。
けれども、風見はそれを言わせるのが好きだし、僕も自分の欲望を言語化して、風見に聞いてもらうのが好きだ。だから、正直に申告する。
「風見の……ペニス。それで、僕の中をぐちゃぐちゃにしてほしい……」
「ああ、では、失礼いたします」
そして、ようやくのこと、僕の中に風見が入ってきた。
僕の肉筒を押しひろげながら、風見の熱くて硬いものが、奥を目指して突き進む。
こういう時は、力を抜くといいと教えてもらった通り。呼吸をゆっくり吐きながら、おなかに力を入れないように、体をコントロールする。中を意識してしまうと、きゅうっとなって、風見のものを外へ追いやってしまうから、僕は、自分の手で、乳首を触ったりして気をそらした。
「降谷さん、上手になりましたね」
風見が、そう言いながら、僕の後頭部をなでた。
「はい…ったか?」
「いえ、あと数センチです……このまま、押し込んでしまってよろしいですか?」
「うん……」
僕がうなずくと、風見が、やや強引に最後の一押しをした。
腹の中が、ぎゅにゅんっと、なる。
「ッはあ……」
風見の吐息。僕は、ベッドに伏せながら、達するのを我慢している時の風見の表情を思い浮かべた。
――目をぎゅっとつむって、眉間にしわが寄って、唇をかんで……。
ふり向いて、その顔を確認したかったけれど、今、その余裕はない。
そして、果たして、本日、何度目になるだろうか。風見が、ぎゅーっと僕のパンツを引っぱり、僕の腰を自分の体に引き寄せた。
「ッア……」
「……あー…いい眺め」
風見は、そう言うと、僕のパンツを引っ張りながら腰を振り始めた。
結合部から、じゅぶじゅぶと音がする。風見の右手が、僕の右腕を掴み、後ろに引っ張った。左手で、ベッドのシーツを握りしめる。シーツが、どんどん、しわくちゃになっていく。いつの間にか、風見によって僕のTシャツはまくり上げられていて、胸や腹がこすれるのが気持ちいい。
腰を前にずらして、ベッドの端に性器をこすりつけた。すると、そのたびに、風見がパンツをひっぱり、その行為をとがめた。でも、後ろに引っ張られるときの、食い込んでしまう布の感じがたまらなくて、僕は、何度も何度も腰を前におし進めた。
「降谷さん…これをこうにギューッて引っ張られるのと、先っぽをベッドにこすりつけるのとどっちが好きなんですか?」
風見が、腰の動きを緩めながら、そんな質問をする。今更、取り繕っても無意味だし、取り繕わない方が気持ちよくなれることを僕は知っている。だから、腰を揺らしながら
「ベッドで…こすってんのを……ッ、ぐいって、じゃまされ…ッんのが好き」
正直に答えた。
「っ…降谷さん…上手ですね…」
「……ッ…じょ…うず?」
「うん。……気持ちよくなるの、すごく上手。ベッドの端でオナるのも…それを俺に邪魔されるのも感じるんでしょ?」
確かに言われてみれば、そうかもしれない。でも、上手なのは僕ではない気がする。
「じょうず……なのはッ…んんっ……君、だろ?」
そう。風見が、上手なんだ。風見が上手だから、ついつい、素直な自分が出てしまう。セックスの時も、それ以外の時も、僕は、風見に対して、わがままになってしまうのだ。
「だから、いっぱい、きもちよく……して?」
そう頼めば、もそもそと音がして、僕の目の前に、ポンと何かが飛んできた。
なんだろうと思って確認すれば、それは、風見が着ていたTシャツだった。左手で触れてみると、しっとりとした感触が伝わってくる。
風見が、僕の体をベッドに押しつけるようにして、奥の奥を突いた。僕の先っぽがベッドに触れる。
「あ……ッ」
おなかの奥がぎゅーっとなる。風見が、小刻みに腰を動かす。そして、奥ばかりを刺激した。
その振動で僕のペニスは揺れ、ペタペタと、ベッドの端にぶつかった。それが、とても、気持ちいい。その感触に酔いしれていると、今度はパンツと右腕を引かれて、体を後ろに引き戻された。
そして、布でぎゅうぎゅうと、性器の周りを刺激され、僕はとうとう射精した。
――出てる最中なのに。イったばかりなのに。
風見は、僕の体を責め立てるのをやめてくれない。ガシガシと奥を突かれる。僕が続けざまに、何度かイったあと、風見が、自身のものをほとんど外に出し、それから、勢いよく中にねじ込んだ。
大きな声が出るのをこらえきれなかった。
風見が、僕の尻に下腹を押しつけながら、息を詰まらせ、それからふうーっと、脱力した。ぐいぐいっと奥に先っぽがこすりつけられる。おなかの中がじんわりとあたたかい。
ああ、これでいったん終わりかなと思ったけど、風見は、中をゆっくり行ったり来たりして、外に出る気配がない。僕は、ぐったりした体を奮い立たせて、腰を前後にゆらし、風見にこたえた。
それにしたって君は
「降谷さん、今なら、六時間は眠れますが、どうします?」
なんて無粋な質問をするのだろう。
でも、風見は僕に言わせたいのだろうし、僕も言いたい。
「まだ、終わりたくない」
僕が、答えると、風見は返事をする代わりに、パンツをひっぱった。
そして、僕が、終わりにしてって、泣きながらお願いするまで。風見はパンツをぐいぐいひっぱりながら、僕のおなかの中を行ったり来たりし続けた。
【あとがきなど】
Tバッグ履いてる降谷さんのお尻っていいよなあ……という、そんな100%ピュアな気持ちだけで、このお話を書きました。
私は、エロを書くのが、とても苦手なのですが。
今回は、頭を使わず、好きなように書こうと思って、適当にキーボードをたたいていたら、こういう謎話が仕上がりました。
降谷さんのパンツを最後まで脱がさない……。
なんだろう。とっても、ふぇちふぇちしていますね。