はちみつ味の飴

初出:2020/8/10(ぷらいべったー)

〇風降
〇ぬるめの性描写あり
〇降谷さんが自慰をする
〇風見裕也フェチな降谷さんの話(fetish 4 U )に、入れようと思ったけど、さすがに度が過ぎてるかなと思ってやめた没ネタのリサイクル品です


 

風見との初めてのキスは、はちみつの味がした。
それは、風見が直前まで舐めていた、はちみつ飴の名残で、風見の口の中が甘いとかそういうわけではなかった。

「どうです? 俺の口の中も、好ましかったですか?」
「うん……はちみつみたいな味がした」
「あー、それは、ここに来る前、はちみつ飴を舐めてたからですね」

理屈ではわかる。人の口腔内が、はちみつ味であるわけがないって。

「そうか……」
「もしかして、この味…気に入りました? よろしければ、ひとつどうです?」

風見はにっこりほほ笑みながら、ポケットからはちみつの飴を取り出した。

「すまんな」

僕は、それを、受けとり、びりりと封を切ると、飴玉を取り出し、風見の唇に押し付けた。
風見が、体をのけぞらして、飴玉を回避する。

「ん? 降谷さん……ご自分で舐めないんですか?」
「うん……君が、舐めて」

ぐにぐにと、黄色く透き通った塊を風見の唇に押し当てる。ふいに、風見が僕の手首を握りしめた。
そして、風見の口がぱくりと開き、僕の指ごと飴玉を口に含んだ。

「……っ!!」

そうやって、三十秒ほどは、風見に指を舐められていたと思う。風見が、僕の手を解放する。

「さ、降谷さん、そろそろ出かけないと」

僕は、風見に舐められた指をぺろりと舐めた。
それは、当たり前だけれど、はちみつの味がした。

 

 

それから、一週間、風見に会えなかった。
キスをして、なんとなく付き合うことになって、でも、僕らはとても忙しかったから、それっきりだった。あの日のキスは、夢だったのではないか? そんなことを思った。

そんな折、駅の売店に立ち寄った僕は、見覚えのあるものを見つけた。
それは、あの日、風見が舐めていた、はちみつ飴だった。体が熱くなる。平日の昼間。人の行き交う駅のホームで、僕は自分の欲を自覚した。
販売員に、缶コーヒーとはちみつ飴をさし出す。僕は、何食わぬ顔で、それを購入した。でも、内心、そわそわが止まらなかった。これだったら、有害図書を買う方が、平常心でいられる。

ICカードで支払いを済ませ、商品を受け取り、売店から立ち去った。

メッセンジャーバッグに飴をしまう。今日の僕は、ちょっと、おかしくて。電車に乗る間も、仕事をこなしている間も、変な気持ちを消し去ることができなかった。

家に帰る。
ハロが僕を出迎える。
僕は、ハロの食事の準備をし「ちょっとだけ一人にさせてくれないか?」という申し入れをした。
ハロは首をかしげていたけれど、今日の夕飯がお気に入りの缶詰だということに気がつくと、そのあとは、もう、食事に夢中だった。

和室のふすまを閉める。カーテンがきっちり締まっていることを確認する。
そして、僕は、バッグからはちみつ飴を取り出し、口の中にひとつ放り込んだ。

口の中に広がる、風見裕也とのキスの味。当たり前だけれども、その味は、この前の何倍も濃くて、僕の体を熱くさせた。

ベッドに横になり、ズボンの前をくつろげる。そして、僕は自分の人差し指と親指を舐めた。

(風見はどんなふうに、僕の指を舐めたっけ?)

風見の舌の温かさを思い出しながら、左手を自分の性器に這わせる。風見が僕の手首を握りしめた、あの感触を思い出した。
いずれ、風見の手掌が僕のここを包み込む日が来るのだろうか。

そんなことを思いながら、僕は、風見裕也をおかずにして、自分の体を慰めるのだった。

 

【あとがきなど】

これを書いている時に。
この降谷さん、絶対にはちみつ飴を舐めながら、オナニーする……!
という確信めいたひらめきがあったのですが。
さすがに、それをいれると、度が過ぎるなと思い、没ネタにしました。
ただ、この没ネタについて、肯定的ご意見をくださった方がおり。

「そっか! ありか! ありなら書くぜ!」と思ってしたためたのが、これです。

私も、書きながら、ありだなって思いました。
ちなみに、冒頭で、降谷さんが風見さんに飴を食べさせようとしたのは

①風見が飴を舐める
②やっぱり僕も舐めたいと言う
③二人でキスをしながら飴玉をシェア……!

という一連の流れを、もくろんだためです。
でも、風見裕也が、指舐めというエロ行為を始めたので、気が動転した降谷さんは、キスを申し出ることができませんでした……(という裏設定)

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