君は僕を何と呼ぶ?

〇すごく短いお話
〇割り切った関係だった風降が、お互いの関係性をはっきりさせる話
〇ぎゃくです☆


 

風見裕也と宅飲みをした。
ハロは部屋を気ままに動き回って、なんだかご機嫌だった。風見は、三本目の缶ビールのプルタブを引いた。テレビでは、女子中高生に人気の学園ドラマをやっていた。

『先輩は、私のことをどう呼びたいんですか? 元幼馴染? 同じ部活の後輩? 趣味が合う女友達? それとも……』

先輩が何かを言うおとするところで、ドラマの主題歌が流れ始めた。明日、ポアロを訪れた女子高生たちは、この話で盛り上がることだろう。
隣の男をちらりと見る。僕と風見裕也の関係は、ただの上司と部下と呼ぶのには、少し、事情が込み入っていた。ただ、僕たちは、ドラマの登場人物ではないので、お互いの関係性をはっきりさせる必要がない。
けれど、僕は、風見裕也をからかってみたいという衝動にかられた。

「なあ、風見。君は、僕のことをどう呼びたい?」
(上司? 飲み友達? 同志? いけすかない年下? 割り切った関係? それとも……)

僕は、風見の表情をうかがった。風見は、困ったような顔をしながら、僕にたずねた。

「それは、本音を言ってもいいんですか?」
「ああ、構わない。本音を言っても、言わなくても、君の自由だ」

風見の口角が少しだけ上がったような気がした。

「では……れいちゃん…でいいですか?」

それは、予想外の言葉だった。風見も先ほどのドラマのセリフを聞いていた。だから、僕の言葉の意図を理解しているはずだ。風見裕也は、缶ビール3本で酔うような男ではない。

「いや、そういう意味じゃないだろ。真面目に答えろ……」
「えー……じゃあ、れいれいで、どうです?」
「そうじゃない」
「れいぴょんも、だめですか?」
「ぴょんって……君な」
「では、れいにゃん」
「にゃん…って」
「それでは、れれたん…とかどうでしょうか?」

風見の悪ふざけに、僕は、少し腹を立てた。これでは、まるで、僕がからかわれているみたいじゃないか。

「君……さっきから、ばかっぷるみたいな呼び方ばかり言うけど……僕が問うているのは、関係性の話だ。さっきのヒロインのセリフ、君も聞いていたろ?」
「ええ、ですから……」
「なんだよ、まだ、悪ふざけを続ける気か?」
「いいえ。俺は最初からいたってまじめに、関係性の話をしていたつもりですよ」
「え……?」

風見が僕を抱き寄せた。そして、僕の耳元で

「れいちゃん、俺と、ばかっぷるをやりましょうよ」

と、妙に色っぽい声で言った。

「では、れいれい……逆に聞きますが。あなたは、俺を何と呼びたいですか?」
「えっと……じゃあ、ゆー君……? とか?」

僕の答えに満足したのか、風見は僕の耳に、ちゅっと音を立てながらキスをした。

おわり

 

【あとがきなど】

書きながら、ばかっぷるって、死語っぽいなと思ったけど。それに代わる言葉が思いつかなかったから、ばかっぷるで押し通します。
風見さん、REIちゃんへの反応を見る限り。好きな人に対しては、すっごいでれるような気がしております。
なんだろうな、うまく言えないんですけど、私は、どちらかというと降谷さんの方に、ばかっぷるの才能があるような気がしています。風見さんは、そこに合わせていく感じ……

 

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